優しい父子
カケが坊主になってから、可愛さ100倍。街の見知らぬ人が微笑みかけてくる。実はカケは性格もいい。こんなに素直で優しい人間は、私が知る限り2人しかいない。カケと私の実弟のみ。弟も優しいやつなんだよなぁ。
ひょっとするとこれは遺伝で、実は私もものすごく優しい人かもしれない。私の育ての母が、本当にあなたは優しいね、って言ってたからな、真剣に。極悪非道の私の親父でさえも、「お前はすごいやつだ」と私の優しさに心打たれたことがあるらしい。
と肉親から言われても、私自身は自分がそんなに優しい人間だとは思っていない。電車なんかで、じいさん、ばあさんが私の席の前に立つと仕方なく席は譲るが、心の中では「じじい、タクシー使えっ」て毒づいている。
だが、好きな人には確かに優しいと思う。例えば、昔付き合っていた彼女に「にかぽって、いつも道路側を歩いてくれているんだね」と言われた。なるほど、私は彼女が好きだったので、意識してそう歩くようにしていた。ほう、これが優しさってやつですかい。こっぱずかしいのぉ。
これが大好きな相手になってしまうと、私は優しさの権化になるらしく、無意識のうちに優しい行動をするようになり、優しさ無尽蔵状態になる。実はこうなると厄介な問題に発展する。無意識な行動はあまり覚えていないため、後から彼女にお礼を言われても、覚えていないことがあったりするのだ。
え?私があんなに感激したことをあなたは忘れちゃったの?私に興味がないのねっ。
てことになるのだ。「あなたは優しすぎるのよ」って言われて、フラれちゃったこと数知れず。大好きになるとメロメロになって、優しさだけの男に成り果ててしまう。カケもそうなりそうな雰囲気なんだよなぁ。