母親と久しぶりに会った。
その時母に言われたのが「近所の○○さん知ってるでしょ? ○○さんね、宝くじ当たったのよ」と言われた。さすが田舎だ、そういう情報も筒抜けになってしまうのか……。そう思って「いくらくらい当たったの? 一千万とか?」と聞いたら。
「何言ってるの、億よ、億!」と言い始めた。
億ゥ!?
びっくりである。そもそも日本において億の当選者ってこのネット社会でも不思議と名乗りでないのである。(一人くらい匿名だし名乗り出てもいいはずなのだが……)当選者を明確に公表する海外とは違って日本では本当に当たっているのかマジで謎なのだ。
なので個人的には宝くじの億当選者は、都市伝説みたいなもんだと思っている。
しかし、そんな億の当選者が俺の地元にいるというのだ。そんなことがありえるのだろうか。
俺「じゃあ、億当たったって○○さんに聞いたの?」
母「何言ってるの! いきなり家が建ったのよ!」
……ん?
なんだか雲行きが怪しいぞ、と思ったがとりあえず続きを聞くことにした。
「○○さん、急に大きな家建てたのよ! これはもう、宝くじが当たったに違いないのよ!」
本気である。
俺の田舎だったらうん千万あればそこそこデカい家が建てられるはずなので、別に多少デカい家が建っても不思議ではないのだ。でも母は本気で○○さんが宝くじを、しかも億をあてたと思い込んでいたのだ。
「これからの世は宝くじね……今後は、宝くじなのよ」
こうして俺は帰路についた。
なんかこれ既視感あるなーと思ってずーっと帰りの電車で考えていたのだがそこで理解した、このやり取りはもう、あたしンちなのだ。いつの間にか俺の母はあたしンちの母みたいなことを言うようになっていたのだ。