冷たい風が吹きすさぶ、12月のある日のこと…

毎月、行われる定例会議に、妻として帯同していた私は、他国の王子様方とともにノーブル・ミッシェル城の一室で紅茶をいただいていた


エドワード「今回も、無事に終わって良かったですね」


ホッと息をつくエドワード王子に、グレン王子が柔らかな笑みを返す


グレン「はい。次に皆さんとお会いするのは…年が明けてからになりますかね」


彼の言葉に、テーブルを囲んでいた3人がコクリと頷く


ウィル「…ここから先ゆっくりできるのは、クリスマスくらい?」


ジョシュア「まあ、スケジュール的には、そうなるだろうな」


グレン「毎年のこととはいえ…年末年始から春先にかけては堅苦しい仕事ばかりで、終わってからもなかなか疲れが取れないんですよね…」


(そっか。私も彼のスケジュールを見て、大変そうだなとは思ってたけど…)


実感のこもった彼らの表情に、つられて眉を寄せていると…


キース「若いクセに年寄りみたいなことを言うな」


キース王子が、忌々しげに呟いた


キース「俺なんて…唯一、休めそうなクリスマスでさえ、公務を入れられそうになったんだぞ」


エドワード「ええっ?それは大変ですね…」


キース「…ったく、あのバカ執事。なんとかスケジュールを組み直せたから、いいようなものを…」


悪態をつく彼に、みんなが苦笑を浮かべていたとき…


私はふと、ロベルト王子が、一人でじっと窓の外を眺めていることに気づく


(どうしたんだろう?こういうとき、いつもなら真っ先におしゃべりをしてるはずなのに…)


妙に物静かな彼を気遣い、グレン王子が声をかけた


グレン「ロベルト王子、さっきから何を眺めているんですか?」


その質問に、ロベルト王子はクルッとこちらへ顔を向け…


ロベルト「ふっふーん。なんだと思う?」


なぜか、茶目っ気たっぷりの笑顔を浮かべた


グレン「もったいぶらないで、教えてくださいよ」


ロベルト「知りたかったら近くにおいで。楽しいことになってるから」


(楽しいこと…?)


彼の手招きに促され、窓辺に集まる王子様たち


彼らの背中越しに見えたのは…


(わ…すごい…)


お城の中庭に設置された、巨大なクリスマス・イルミネーションだった


エドワード「中央のツリーが、すごく大きいですね」


ウィル「まわりに並んでいるのは…天使の飾り?」


ジョシュア「木々の一つ一つにまで、電飾を施すとは…見事なもんだな」


キース「ああ、さすがはノーブル様だ」


グレン「夜になってライトが点灯されたら、さぞかし美しいでしょうね」


手放しの褒め言葉に、なぜかロベルト王子が得意げに胸をそらす


ロベルト「すごいでしょ?さっきゼンに聞いたんだけど…クリスマスに向けて、ツリーも全部新調したんだってさ。今年は例年以上に気合いが入ってると思わない?」


それを聞いて、エドワード王子が思い出したように説明を加えた


エドワード「確か…今年は子供を呼んで、大きな催し物をするらしいですよ。ノーブル様がサンタになってプレゼントを配ったりもなさるそうです」


(へえ、そうなんだ…さすがノンちゃんだなあ)


私は、素直に感心していたのだが…


キース「いくら子供相手とはいえ…物好きだな」


グレン「ノーブル様がサンタですか。大変でしょうけど…立派なヒゲをたくわえてらっしゃるので、つけヒゲの心配だけはしなくて済みそうですね」


皮肉屋の二人は、それぞれ違う方向にコメントを加えていた


(もう、どうしてそんな言い方を…)


そう思う私に聞こえてきたのは、優しい二人の声


ロベルト「こういうイベントは、参加することに意義があるんじゃない。細かいことは言いっこナシだって」


エドワード「そうですよ。子供たちにとって、いい思い出ができればそれでいいんです」


(うん、うん。二人の言う通りだよ)


密かに頷いていた…そのとき


ジョシュア「しかし…サンタを演じるには、それなりの演技力が必要なんだぞ。果たしてノーブル様にそれができるのだろうか…」


ジョシュア王子が、真剣な声色で呟いた


(え?どうして演技力の心配なんて…)


ウィル王子はクスッと微笑み、ジョシュア王子に意味深な視線を向ける


ウィル「ジョシュア王子は確か…去年のクリスマス、サンタの格好をして…」


(…あ、そっか)


頬を染めたジョシュア王子は、ウィル王子の口元を慌てて制した


ジョシュア「そっ…!それ以上は、言わなくていい!」


ウィル「そう?じゃあ、黙ってるけど…」


ウィル王子がニッと口角を上げた…次の瞬間


ロベルト「あ…みんな、見て見て!」


ロベルト王子が、突然、窓の外を指さした


(わ…キレイ…)


そこから見えたのは、はらはらと宙を舞う粉雪


ジョシュア「ほう…これはなかなか、見応えがあるな」


ウィル「どおりで、冷えると思った」


エドワード「素敵ですね…生まれたての雪の結晶が、命の喜びを歌うかのように、キラキラと輝いています」


普段なら恥ずかしくなりそうなエドワード王子のセリフも、今だけは、すんなりと耳に入る


ロベルト「ホント、キレイだねー。おかげ様で、いいクリスマスを過ごせそうだよ」


ロベルト王子が、そう言ってみんなに笑顔を向けたとき


キース「話がまとまったところで悪いんですが…ロベルト王子、その手を、どけてくれませんか?」


キース王子が、自分の肩に乗った彼の手を見ながら、迷惑そうに呟いた


ロベルト「あ、ホントだ。手すり代わりにしちゃってたよー。ゴメンゴメン!」


キース「手すり…ったく、笑ってごまかさないでくださいよ」


二人のやりとりを見て、他の王子様たちも笑っている


彼らが離れた隙を見て、そっと窓辺に立った私は…


(…素敵…)


美しい粉雪を、満面の笑みを浮かべながら見上げた


(この雪のように素敵なクリスマスを彼と一緒に過ごせたらいいな…)


そう思った私は…恋人から夫となったばかりのあの人に、そっと視線を送った



A:ウィル王子
B:キース王子
C:ロベルト王子
D:グレン王子
E:ジョシュア王子
F:エドワード王子


~各ルートへ~

キース「…では、これで同盟の締結は完了したってわけだな」


エドワード「そうですね。無事に終わったようで良かったです」


ロベルト「だねー、じゃ、休憩がてらお茶でもする?」


…ここは、シャルル城の王子、エドワードの執務室


そこに3人の王子の明るい声が響いた


本日、このシャルル城で各国の国王や王子の立ち会いのもと行われたのは、リバティ、シャルル、アルタリアの3ヶ国同盟会議だった


もっとも、すでにリバティ王国とアルタリア王国の国王は先に帰城しており、ここにいるのは王子たちと近くに控えている執事たちだけである


キース「そうしたいのは、やまやまなんだが…あいにく今日は時間がない」


キースはそう言ったあと、二人の顔を見る


キース「だが、できれば本日中に、今回の同盟の核ともいえる水晶が発見されたという場所を視察しておきたい…ここから遠いのか?」


エドワード「そうですね。シャルルとアルタリアの狭間にある遺跡ですので…多少は時間が…」


今回、同盟を結ぶことになったのは、そこで発見された大量の水晶を共有するというのが目的だ


ロベルト「いいよ、キーちゃんは忙しいんだろうからさ。俺とエドちんで…」


キース「なっ…さすがにそういうわけにはいかないだろ」


慌てて口を挟んだキースは、怪しむような表情を浮かべた


キース「それとも何か?俺が立ち会うとまずいことでも…?」


ロベルト「まさか。俺たちはキーちゃんが、このあと公務が入ってるって聞いたから…ねえ?」


エドワード「そうですよ。ただ、視察したいというキース王子のお気持ちもわかります…ですが、公務があるなら、また機会を改めてもと思いますし…」


特に怪しむところもない様子の二人だったが、なぜかキースはいぶかしむような表情で携帯を取り出した


キース「いや、リュークに言って、予定を変更させる…少し待っててくれ。おい、リューク…」


そんな彼を見て、二人も何かに気づいたように携帯を手にする


ロベルト「視察に行くんなら、ちょっと俺もメールを入れとかないと…」


エドワード「それでは私も…連絡させていただきますね」


そうして、3人はそれぞれどこかへ連絡をし始めた



その頃、私は…


(今頃…どうしているのかな…)


プリンセス修行中の私は、会議に出ている結婚相手の彼を待ちながら、シャルルの街で買い物をしていた


(確か…3ヶ国同盟会議って言ってたっけ。水晶がどうこうって…)


そう思いながら息をつくと、手にしていた携帯が鳴り響く


(あ…もう終わったのかな…?)


急いで確認すると、ちょうど考えていた相手からのメールが届いていた

だが…


(え…急きょ視察に…?会議が終わったら一緒に過ごそうって約束していたけど…まあ、公務じゃ仕方がないよね)


思わぬメールに少しガッカリしながらも、私は気持ちを切り替えながら返信を打ち始める


(…先にお城に戻っていますね…りょう、と)


そう彼にメールを送ると、私は自分を警護しているSPの人たちを従えてお城に戻ることにした



3ヶ国同盟が結ばれる前日の夜、リバティ王国では…


キース「なんで3ヶ国同盟会議が明日なんだよ」


リューク「そう言われましても…シャルル王国やアルタリア王国との兼ね合いもございますし…」


王子のキースと、その執事のリュークがやりとりをしていた


キース「そりゃ、そうだろうけど…本当なら、明日は久しぶりの休みだったのに…」


彼はそう言ったあと、ため息をつく


リューク「では…延期を申し出ますか?」


キース「はあ?…そんなみっともないことできるわけないだろう。内容はもうさんざん話しているから明日は同盟を結ぶだけだ。さっさと行って、早めに切り上げてくる」


リューク「早めにって…」


キース「公務があるとかなんとか言えばいいだろう?…なんだ、なんか文句でもあるのか?」


ギロリとキースに睨まれたリュークは、慌てて首を横に振った


リューク「いいえ、めっそうもございません。ただ、ここのところ、少々勝手な言動が目立っておられますので…」


キース「なんだと?」


険しい表情のキースを前に、リュークはおずおずと口にする


リューク「あの…これは、私の意見だけではございません。ですから、私はキース様の身を案じて…」


キース「ふん…お前に案じてもらう筋合いはない」


彼の言葉に一瞬、リュークの表情が揺らいだ


そんな曖昧な空気をかき削すように、キースが言葉を続ける


キース「…とにかく、会議のあとは何も入れるなよ。これ以上、アイツとの約束を破るわけにはいかない」


リューク「…かしこまりました」



(…俺もあの時は、ちょっと言い過ぎたかな…昨日はアイツとモメたりしてイライラしてたし…まあできるだけ早く視察を終えて城に戻ろう…)


そんなことを考えている俺に、執事のリュークが声をかけてくる


リューク「キース様、大丈夫ですか?」


ギクリとしながら、俺は曖昧に答えた


キース「ん?ああ…」


すると、エドワード王子が顔を覗き込んでくる


エドワード「どうしたんですか、キース王子。やはり次の公務が気になっているのでは…」


複雑そうなリュークの表情に、俺は慌てて口を開いた


キース「あ、いや、それは大丈夫です。ただ…本当にこんな場所に水晶が…?」


エドワード「ええ…この遺跡の奥に…ルイス、それで合っていたかな?」


彼はそう言って、近くに控えている執事のルイスに問いかける


ルイス「はい。おっしゃる通りでございます」


リュークと違う落ち着いた対応に、俺の中に言い知れない感情がモヤモヤと広がった


ロベルト「そうそう…前に写真を見せてもらった時の印象だと、結構、神秘的な雰囲気だったよね」


エドワード「そうですね。とっても幻想的で…お二人とも気に入ると思いますよ」


(な、なんだよ、二人とも…俺が急に言い出したっていうのに…どうしてこんなに穏やかなんだよ…)


その時、ルイスが心配そうに俺に声をかけてくる


ルイス「大丈夫ですか、キース様」


キース「あ、いや…平気だよ」


(コイツ、リュークと違って、気遣いがすごいな…)


ロベルト「ん?どうしたの、キーちゃん。なんだか落ち着かない様子だね…公務って言ってたけど…もしかして、このあとの約束って、実はデートだったりして…?」


ロベルト王子の言葉に俺はグッと言葉を詰まらせる


キース「バ、バカッ…!」


ロベルト「うっわ、真っ赤っか…まさか図星?」


その言葉に、彼の近くに控えていた執事のアルベルトの口元がかすかに緩んだ


キース「ち、違うって…!」


エドワード「まあまあ、二人とも…それより、もう少しですよ。足元、気をつけてくださいね」


(ったく…さっさと終わらせて帰らないと、ロクなことにならなそうだな)


そうこうしているうちに、遺跡の奥が輝いていることに気づく


(わっ…な、なんだ…?)


近づくごとに周囲をおおう水晶の輝きがハッキリとわかった


その奥に、ひときわ美しく輝く鉱石


(もしかしてこれが…?)


俺の言葉に反応したように、リュークが声をあげる


リューク「あの奥にあるのが水晶でしょうか?」


キース「…のようだな」


すると、近くにいたロベルト王子が微笑んだ


ロベルト「そうそう、あれあれ。すっごい神秘的だよねー」


(…確かに)


俺はあまりの美しさに、目がくらみそうになる


その時、黙ったまま近くに控えていたアルベルトが、感心したように声を漏らした


アルベルト「…見事なものですね。純度はどれくらいになるのでしょうか?」


ロベルト「それは、これから各国で研究していくんだってば」


アルベルト「それはもちろんそうでしょうが…」


エドワード「同盟を結ぶまではと…ここに人が立ち入ることも、何かを持ち出すこともままなりませんでしたからね。これから、いろいろとわかっていくと思いますよ」


微笑む彼の言葉に、俺は思わず聞き返す


キース「ふうん。ということは、今なら持ち出してかまわない…そういうことか?」


エドワード「まあ、限度にもよりますが…いくつかカケラを持ち帰る程度でしたら…どうでしょう、ロベルト王子」


ロベルト「いいんじゃない?研究者たちも楽しみに待ち構えているだろうし…俺、ちょっとあっち見てくる」


彼はそう言って遺跡のさらに奥へと入っていってしまった


アルベルト「あ、ロベルト様。お一人では危ないですよ…!」


執事のアルベルトも彼のあとに続いて行ってしまう


(なんだなんだ、ガキじゃあるまいし…あとから、いくらでも見られるだろうに…)


キース「…それじゃあ、無事に視察も終わったことだし、俺はそろそろ帰らせてもらう」

エドワード「はい、それではお車の用意を…」


キース「いや、いい。リュークに手配させる…いいな?」


俺の言葉にリュークはピッと背筋を正して携帯を取り出した


3ヶ国同盟が結ばれる前日、シャルル王国では…


ルイス「いよいよ明日でございますね」


紅茶をいれながら、そう声をかけてくるルイスに、エドワードは優しく微笑んだ


エドワード「そうだね。これで少し落ち着くことができそうで良かったよ」


ルイス「はい。アルタリア王国との同盟だったはずが、キース様のリバティ王国が絡んできた時は、どうなることかと思いました」


その言葉にエドワードは思わずクスッと笑みを漏らす


エドワード「ずいぶんと大げさだね。あとでキース王子に怒られてしまうんじゃないかな?」


ルイス「あ…いえ、そんなつもりで言ったわけでは…ただ…」


言いよどむルイスを前に、エドワードは笑顔を浮かべたまま頷いた


エドワード「わかっているよ。今回のことは、もともとアルタリアとの間で進めていたことだからね。しかし、僕たちの動きがよくわかったものだ…感心するよ」


ルイス「…確かにそうですね。しかし、リバティは6ヶ国の中でも最大の軍事力を備えておりますから、こういった情報を仕入れるのは造作もないことでしょう」


彼の言葉はエドワードの心を揺らしていく


エドワード「まあ…そうだね。しかし、それを考えるなら、なおのことリバティも同盟入りしておいてもらって良かったんじゃないだろうか」


ルイス「それはまあ…でもエドワード様…」


エドワード「ん?」


ルイスは伏し目がちなまま、そっと言葉を吐き出した


ルイス「もう少し他国に対して警戒心を抱いても良いのかもしれませんね」


エドワード「警戒心を…?」



(ルイスがあんなことを言うなんて、珍しい…あれは、一体どういう意味だったのかな…)


ぼんやりそう考える僕の耳に、元気な声が響いた


??「おい、リューク…ボヤッとしてないで、さっさと行くぞ!」


??「は、はい!」


ハッと我に返り、キース王子と彼の執事のリュークの背中を見送る


(確かに…ああいった形で、きちんと執事を従えているというのが、本来あるべき姿なのだろうな…もしかして、ルイスもそれを望んでいるのだろうか…)


その時…


??「エドワード様?どうかされましたか?」


ハッと見ると、ルイスが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた


(あ…)


エドワード「いや…このまばゆさに目がくらんで…」


そう言いながら僕は、そっと水晶に手を伸ばす


(僕は…このままでいいんだろうか…)


自分の中に初めて芽生えた迷い


(もしかして彼女も…キース王子のようにハッキリした物言いや…ロベルト王子のように明るくて楽しい雰囲気を…)


持ち上げたカケラは、指先で魅惑的に輝いた


…まるで、僕の心を見透かすかのように、キラキラと


ルイス「あの…そちらをお持ち帰りになりますか?」


僕は慌てて笑顔を浮かべる


エドワード「…そうだね。研究者たちも楽しみにしているだろうから、いくつか持ち帰ろうか」



3ヶ国同盟が結ばれる前日、アルタリア王国では…


ロベルト「えー、アルも一緒に来るの?」


王子のロベルトが、自分の執事であるアルベルトに、不満げな声を漏らしていた


アルベルト「当たり前じゃないですか。3ヶ国同盟が締結される大事な時に、正執事がお供せずにどうしますか。国王様もご一緒なわけですし」


ロベルト「それはそうかもしれないけど…ね、それなら彼女も一緒に連れていっていい?」

アルベルト「は…?彼女って…」


彼はそう言いかけたあと、コホンと咳払いする


アルベルト「それと、私がお供するのと、一体なんの関係があるんですか?」


すると、ロベルトは甘えた子供みたいに上目遣いでアルベルトを見た


ロベルト「関係ないけどさー…ここのところ忙しかったし、一緒にシャルルの街を歩けたらなあ…なんて」


…しばらく沈黙が流れる中、ロベルトは少しわざとらしくため息をつく


ロベルト「あーあ、ここんとこ、頑張ったつもりだったんだけどなあ…」


すると、アルベルトは渋々といった表情で口を開いた

アルベルト「…わかりました。このあと調整してみます」


ロベルト「ホントに?」


パッと顔を明るくさせたロベルトに、間髪入れず…


アルベルト「その代わり、私も同行いたしますので」


アルベルトはニッコリ笑う


ロベルト「ちぇっ…わかったよー。でも、調整はよろしくね」


アルベルト「…かしこまりました」



(…なーんて、せっかくアルに調整してもらったのに、デートはお預けになっちゃうし…もうお城に帰っちゃってる頃かなあ…)


そんなことを思いながら、俺が遺跡の奥へと進んでいくと


??「お待ちください、ロベルト様ー」


後ろから耳慣れた声が追いかけてくる


(ん…?)


足を止めて振り返ると、アルベルトが足場の悪い中を懸命に追ってくるのが見えた


(ああ…)


ロベルト「急がなくていい」


アルベルトはホッとした様子で、ゆっくりと近づいてくる


アルベルト「どちらまで行かれるのですか?」


ロベルト「どちらまでって…いや、以前、奥の水晶の方がキレイだって聞いたから…どうせ持ち帰るのなら、そっちのカケラの方がいいだろう?」


アルベルト「研究者たちのために持ち帰るのでしたら別に…」


彼はそう言いかけて、俺の心を読んだかのように頷いた


アルベルト「…なるほど、彼女のために…ですか?」


(う…バレバレって感じか…)


アルベルト「そういえば、キース様は、そのまま帰られるようですね」


ロベルト「え?…そうなの?」


アルベルト「はい、もともと何かご予定があったようですし…キース様はロベルト様のように浮ついておりませんから」


その言葉に俺はグッと胸を突かれる


ロベルト「な、なんだよ…日頃はエドちんみたいに、落ち着いて大人の行動を取れって言うクセに」


アルベルト「そうですね、エドワード様のように大人の対応をしてくださると、私としても大変助かります」


(…ったく…)


プイッと顔をそらして歩き出すと、それを追うようにしながらアルベルトが言った

アルベルト「別にウィル様のような圧倒的なカリスマ性や、ジョシュア様のような威厳がある感じでもいいんですけどねえ…」


ロベルト「悪かったな、チャラチャラしてて」


(そりゃ、俺だって、キーちゃんみたいにガンガン命令したり、エドちんみたいに穏やかーな感じにしたりしたいけどさ…あ…)


その時、ひときわ美しく輝く水晶のカケラが視界に飛び込んできて…


俺は思わず、それに手を伸ばした



水晶が発掘された遺跡から、エドワードたちが立ち去ってから数時間後


キース「…ったく、さっきいくつか持ち帰っていれば、戻ってこなくても良かったのに…」


俺は執事のリュークを従えて、すっかり暗くなった遺跡を再び訪れていた


入口には24時間体制の見張りがいたが、同盟国の王子は自由に出入りできるらしく、すんなり入ることができた


リューク「ですから、車に乗る前に申し上げたではありませんか。それなのに…あ、キース様、足元にお気をつけください」


頼りなげな声を背に、俺はグングンと遺跡の奥へと向かっていく


キース「そんなことを言われなくてもわかってる…!あの時は、あとからでもいいと思ったんだ。それを、アイツが見たら喜ぶんじゃないか、なんて言い出すから…」


大きくため息をついた瞬間


リューク「そんな言い方…申し訳ありませんでした…」


小さな呟きが耳元をかすめ、チラリと罪悪感が芽生える


(まあ、別に…リュークのせいでもないけどな…)


そう思いつつ、俺は目の前で輝く水晶に手を伸ばした


キース「…まあいい、さっさともらって帰るぞ」


(ロベルト王子やエドワード王子なら、もうちょっとうまい言い方するんだろうが…)



リバティ、シャルル、アルタリアの3ヶ国が同盟を結んだ日の深夜


私は真っ暗な闇の中、ふと目を覚ました


(ん…)


目をこらせば、うっすらと見える愛しい彼の寝顔


(あ…そっか、いつの間にか帰ってきていたんだ…)


いつになく安らかな寝息にホッと口元を緩めた途端


彼の握られた手の中から、キラキラと何かが輝いていることに気づく


(あれ…これ、なんだろう…?)


ちょんと突つくものの、しっかりと握られていて、それがなんだかわからない


(まあ…明日、聞いてみればいいか…)


私は再び彼の温もりを求めるように寄り添い、まどろんでいった



…翌朝


朝の光にまぶたを開くと…


私の目の前に、思いも寄らない人物の顔が飛び込んできた


(えっ…!?な、なんで…)


りょう「あなたが…どうしてここに…」


私はとっさに身体を起こし、そう叫ぶ


なぜなら、そこにいたのは、一緒に眠っていた…



A:キース王子ではなかった
B:エドワード王子ではなかった
C:ロベルト王子ではなかった




~各ルートへ~