精神科医の自殺率は一般人の5倍?! | [虹ぷしゅ]nijipushu nijipsych

[虹ぷしゅ]nijipushu nijipsych

「瞳に涙がなければ魂に虹はかからない」ネイティブ・アメリカンの言葉
「ひとり、燈(ともしび)のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とすずぞ、こよなう慰むるわざなる」徒然草

■ 精神科医の自殺率はダントツ?!

医師向けの掲示板に「精神科医の自殺率はダントツに多いらしい?」といったスレが立ち、いままで精神科医の自殺率について考えたこともなくて、へぇ~と思ってしまい、ちょっと検索してみました。

そこで出てきたのは西城有朋精神科医の『精神科医はなぜ心を病むのか』という本
   他にも、以下のような報告も─  
 
 
精神科医の自殺率は一般人の5倍

との米国医師会のデータが紹介されています。

¥1,296

「1967-1972年の5年間、アメリカの医師の死亡者18730人のうち自殺者593人をPittsらが解析したところ*、精神科医は予想数の2倍、自殺していた。

精神科医が他科の医師よりストレスの多い生活を送っているエビデンスはなく、気分障害および続発したアルコール関連障害により生じたと考えられ、さらに、Pittsらの試算によると精神科医の1/3は気分障害に罹患しており、その数は一般人口の3倍であり、気分障害に罹患した医師が精神科を専門にしているのではないかと推論している。」

* Alan G. Craig, Ferris N. Pitts: Suicide by physician. Disease of the nervous system763-771, 1968

* Charles L. Rich, Ferris N. Pitts: Suicide by psychiatrists: A study of medical specialists among 18730 consecutive physician deaths during a five year period, 1967-72. J Clin Psychiatry 41: 261-263, 1980


また、日本の警察の発表では、医師の自殺率が、一般の1.3倍で、その中でも精神科医がとびぬけて高いとの結果があるそうです。

そのような情報を目にしていると、確かに、精神科医は、ほかの職種よりも自殺のリスクにさらされているのかなぁと思えてきました。以下、私なりに思い当たった理由について─


■精神科医の自殺が多い理由1 ─ 自殺されることのダメージ

知人に自殺された経験のある方はわかると思いますが、その衝撃、ダメージはかなり大きく、そして後を引きます。これが40年ほどの就労期間の間に複数回あるわけです。さらに、精神科医の場合はそれに上増して、遺族らからその無念や怒りの矛先を向けられることも少なくありません。それが、裁判まで起こされたり、マスコミに取り上げられた時には、そのストレスはもう計り知れないものがあります(相模原刺殺事件の犯人の精神科主治医の先生のことを思うと祈らずにおれません)。


■精神科医の自殺が多い理由2 ─ 感情の伝染
 
また、人から攻撃を受けたとき、こちらも腹が立って来たり、あるいは別の場面で普段なら怒らないようなことで怒ったりと、怒りの感情が伝染していくように、うつや悲しみの感情もそれにかかわる人たちに影響を与え、伝染していきます。精神科医はそういった感情を抱えた人たちと向き合い、その感情に共感することが仕事なので、その影響を受けずに済むことはありません。


■ 精神科医の自殺が多い理由3 ─ 精神科医の精神疾患との親和性 
 
また、他の科よりも精神疾患に親和性のある人が精神科医になっていることが少なくないということもあるのではないかと思います。個人的には、私の周りを見渡すと、100人に1人の統合失調症、150人に1人の感情障害といった割合よりはるかに多い割合で、精神科医は精神疾患を抱えています(桁1つ多いような‥)。神経症圏まで含めればさらに多くなるでしょう(wounded healer との言葉を拠り所にしている私もその一人‥)。
睡眠薬、安定剤、降圧剤の服用者も多く、アルコール依存者だよねという方もいらっしゃいます。
私の出身大学の初代精神科教授の悲劇はに。
satochan8先生のまわりでは実に5人の精神科医が自殺したそうです。
私の知り合いの精神科医で自殺した人は、幸いまだいません(もしかしたら、1名、自殺だったかも…)。しかし、昔勤めていた職場で、他職種の同僚2名の方が自殺しています。
 
こうして書いてきて、DVや児童虐待の支援をしているスタッフの人たちにも同様のことが起こっていることが想像され、一般に向けてされている自殺防止運動とともに、精神科医やDV支援スタッフら、援助者側の自殺防止対策も急務であると思わされました。


以前も書いたことがあったかと思いますが、私の場合、祈る(念祷)と纏わりついてくるものからすっかり解放されるのですが、この念祷という祈りを持たずに同業者の皆さんはどのようにして日々の疲弊を解消されているのでしょう‥