ノートは「不真面目に」書く

 

 「学校の需要のように『ここはテストに出るから勉強しよう』という目的と手段ががっちり固まっている「真面目さ」から逸脱し、その時点ではその意義がはっきりわからなかったり、非合理であると思えてしまうことにも手を出すこと。それが、私たちが獲得した『不真面目にノートを書く』ことの新たな意味です」

 

 倉下忠憲(『すべてはノートからはじまる』)

 

 筆者の倉下氏は、「ノートは自由を象徴するツール」だという。よって型にはまったやり方をする必要は一切ないと説く。要は「逸脱せよ」ということである。もうその時点で素晴らしい。

 

 

 日本人はマニュアル本が大好きだ。「ノート術」「手帳術」「整理術」「文具術」など、「書く」という行為や情報整理に関するありとあらゆるノウハウ本が存在する。世界でも類を見ないほど多くの関連書籍が出版されている。だが、そのほとんどは、内容が非常に「真面目」である。倉下氏のように「不真面目に」とか「逸脱OK」なんて書く人はかなり少ない。

 

 筆者は大の手帳マニアだし、文具王の異名をとるほどの文具好きでもある。片付けマニアでもあるから、こういった書籍やムック本、雑誌などには一通り目を通すようにしている。だが、倉下氏が指摘するように、すぐに「真面目に」という落とし穴に陥りがちとなる(笑)。その点で、この本はまさに自分のために書かれた本だ、という天から啓示が下りてきた感じだった(笑)。だが、逆説的に考えれば、「不真面目に」とか「逸脱OK」というノウハウを伝える本だということでもある。

 

 日本人は基本的には「真面目」な人が多い社会である。だから現実社会での「逸脱」はなかなか難しい。かなり精神的にタフな人でない限り、「世間一般の常識」という罠に陥ってしまう。まぁこうした「常識の罠」というのもTVや新聞、雑誌やネット、そして学校や家庭での「刷り込み=洗脳」の結果である。天才的な子供が育った場合、たいてい親の考え方が「自由」で「逸脱」している場合が多い。世間ではそんな天才に憧れつつ「逸脱」を許さないというパラドックスに陥っている親と子供が圧倒的に多い。

 

 「ノート」の取り方も、日本人の場合、上から下へ、左から右へ、と教わる。だが、こうしたノートの取り方をずっと続けていると、「枠の中」から逸脱する思考法は育まれない。人間の脳の中で生まれる発想は上下左右、斜めと自由自在に動き回る。だが、その発想を書き留める=ノートに書く時に逸脱できない人間は、結局は飛び抜けたアイデアを考えつくことができない。これこそ「ノートを真面目に書く」弊害である。

 

 日本人の勉強法の問題点を象徴するのが、いわゆる「東大式ノート」というものだ。本屋に行くと必ず数種類は置いてある。だが、これが見事にまで面白くないのである(笑)。『東大ノートのつくり方』『東大合格生のノートはかならず美しい』『東大式 合格ノート術』など、「よくぞこんなにくだらない本がいっぱい並んでいるなぁ」と呆れるほどいろんな東大モノがある(笑)。

 


 結局、東大入って、卒業して、どうなの?っていう話だ。最近は東大生といえばクイズのプロになる学生ばかりだ(笑)。必死に勉強してクイズ屋にしかなれないというのが、現在の東大の置かれている状況である。まぁ東大というブランド信仰者が多すぎるというおバカな洗脳状態がずっと続いているということで、それをずっと煽っているのがテレビである。だからこそ「クイズ=頭がいい=東大」という意味不明な解釈で、やたらと東大生をクイズ番組に出す単純な思考にこそ問題があるということにも気づかないのである。

 

 「世界大学ランキング」では、東京大学は世界39位、京都大学が68位で、東北大学は201–250位の中という体たらくである。結局、受験勉強の暗記術ばかりで、柔軟な発想を養う勉強法は「大学受験には不要」と切り捨ててきたことが原因である。暗記力というもの自体はいいことだが、問題は自由な発想ができない思考法を子供の時からの勉強法で育まれてしまうことなのである。

 

 日本という国家のランキングも年々下がっている。国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」(本部・スイス)が発表した2022年調査によると、英語を母語としない112カ国・地域のうち、日本人の英語力は前年の78位からさらに順位を落とし、なんと世界80位にまで落ちている。これが悲しい現実である。東大出ても官僚にもならず、クイズばっかりやっているからだ(笑)。

 

世界の英語力ランキング

 

 英語力というのは、そのまま世界とのビジネスでのコミュニケーション能力のこと。よって、英語力が低下すると、世界における国力も必ず下がる構造にある。もちろん「世界の競争力ランキング2022」の結果も34位にまで落ちている。韓国やマレーシア、タイよりも低いのだ。東大に入ってもK-POPばかり聴いているとこういうことになるのだ(笑)。

 

世界の競争力ランキング2022 


 もう一度、高度経済成長期のような時代は来ない。だが、国としての生き残りを賭けた戦いに敗れると、国民は悲惨なことになる。もはや東大なんか受験するのはやめて、もっと自由に世界に羽ばたけるような選択肢を頭に描ける人間が増えないことには、日本には「死」が急速に近づくことになる。だから「真面目」にノートを使わせようとする甘い誘惑には負けてはいけない!