本日の名言:「ファスト・セックス」は美味しくない

 

 「実はセックスというのはお互いを汚し合うことなんです。だから、本当にキミが彼女のことを好きなら、彼女と一緒に汚れる性を体験しなければ本当の性は完結しないんだ」 

 

 武田鉄矢

 

 ”金八先生”こと俳優の武田鉄矢が『週刊プレイボーイ』の誌上で行った人生相談で語った言葉である。なんで突然、武田鉄矢なのかと言えば、本日の昼に知り合いと高倉健の『幸福の黄色いハンカチ』の話題が出て、その際にNHKの番組で武田鉄矢が語っていた言葉と、映画初出演だった武田鉄矢が桃井かおりを無理やり口説こうとして高倉健に叱られるシーンを思い出したからだ。

 

『幸福の黄色いハンカチ』

 

 武田鉄矢氏のファンではないが、武田鉄矢という方はいい人だ。自分という人間の大きさをちゃんと把握して奢らない。そして、それが言葉と雰囲気に滲み出ている。武田鉄矢の恩師であり、筆者の恩師でもあった故・細川健氏が亡くなられた際に、渋谷公会堂で行われた「送る会」での武田鉄矢氏の言葉は胸に滲みた。「海援隊」というフォークグループでデビューを目指して東京に上京しつつも仕事がない武田氏に、なんと細川氏は映画の仕事を持ってきた。それが『幸福の黄色いハンカチ』だった。

 

 これに出演していなけらば「金八先生」の仕事にも繋がらず、「贈る言葉」の大ヒットもなく、現在まで俳優として、また海援隊としての活動もできなかったと、深い感謝の念を捧げていたのだが、この時の武田氏の語った平易な言葉が本当に素晴らしかったのである。だからこの人の言葉は信用できると思えた。

 

 

 武田鉄矢氏が『週刊プレイボーイ』誌上で語った言葉には続きがある。

 

 「そしてまたセックスっていうのは、お互いを汚し合い、お互いを洗い合うところに本質があるんだな。(中略)今のあなたは彼女とのセックスを汚さないように、散らかさないように、後片付けがしやすいようにやっていると思うんだ。でもさ、若いんだったらふたりで片付けないと片付けきれないぐらい汚したりしていんじゃないかな。キミはもっと獣性や野性を出して彼女を汚すべきなんだ。そして、その汚れをふたりできれいに片付ける。そんなところに、本当の愛につながる性の道、セックスの道というのがあると思うんです」

 

 「セックスとは汚し合うこと」なんて言葉は初めて聞いたが、大切なのは「キレイなセックス」ではなく、一緒に汚し合って一緒に洗い合うことだと言っている。まぁラブホテルの従業員が聞いたら「汚すのはやめてくれ」と言いそうだが(笑)。愛し合うことを表現するのに「狂おしく」という言葉があるが、まさにお互いが狂ったように、まるで獣(けだもの)のように愛し合うことだが、現代社会の若い男女のセックスはとてもクールだ。時間も短いし、淡白になっている。これは男女ともにである。

 

 セックスは「ファストフード」のように手軽で、すぐに片付けられるようなこぎれいに済ませるものではない。セックスは「はやい・安い・うまい」ものではない。吉野家の牛丼ではない。こういう風に考える男は、たいがい食事をファストフードで済ませてしまう男である。食事の習慣とセックスの習慣は似ている。だから、デートの時に「今夜の食事、何にする?」と聞いた時に、「なんでもいいんじゃない」とか「適当でいいよ」とか「近場で済ませよう」とかいう男は注意だ(笑)。特にファストフードで済ませてしまおうとする男を選んではダメだ。それは「はやく・やすく・自分だけがうまい」セックスをしたいだけの男だからである。

 

 

 ファストフードのように手軽で済ませるセックスばかりでは、やはりファストフードのようにすぐに飽きてしまう。結局、本当に「美味しい」セックスを知らないまま年取ってしまうこととなる。愛し合うことをしないまま、結婚して、子供できて、年取って終わりという人生である。そんな味気のない人生を送るのはやめておいた方がいいと思う。人生はファストフードでもコンビニでもない。人生もセックスも「ファスト」で過ごしていると、老後に自分の人生を振り返った時に、「何も思い出せないようなファストライフ」になってしまうのではないだろうか。