棚から1冊:「加速力」で成功をつかめ!

 

 「努力なくして成功なし」よくいわれる。その一方で「成功は時の運」という言い方もする。およそ成功の条件として挙げられるのは、この「努力」ないしは「運」だろう。<中略>では、運を引き寄せる努力というものがあるとすれば、それは何か。運と努力の間を結びつけるものは存在しないのか。そのポイントとなるのが、加速度感覚であると私は気づいたのである。 


 齋藤孝(「加速力」で成功をつかめ!)

 

 



 「加速度感覚」とは、文字どおり加速している感覚のことである。車やバイクでアクセルを全開にしたとき、身体が後部にグッと押し付けられるような、あの身体感覚のことだ。まぁ遊園地のジェットコースターでも良いかもしれない。頂点にまで昇り、一気にドーンと落ちる感覚は等加速運動である。日常生活では味わうことの少ない急激な加速感覚を求めて我々はジェットコースターに乗る。

 

 実は、この誰でも知っている当たり前の感覚にこそ重要なポイントがあると齋藤先生は指摘する。

 

 「加速度感覚は人間にとって快感である」

 

ということなのである。ジェットコースターの場合、まずは頂点までゆっくりと昇っていく間に、誰もが脳内で「加速」への予感、期待を抱くものだ。この予感や期待は、緊張感と恍惚感をともないつつ、足元から何かゾクゾクする感覚だ。これは少々の恐怖を感じつつ、だがその恐怖を期待してしまうという脳内物質の分泌が引き起こす現象である。「カ・イ・カ・ン」というやつだ。

 

 人間の「快感」への期待は、恐怖を克服できる。だからこそ人間は「加速度」が好きなのである。まぁ浅草の「花やしき」のジェットコースターは大丈夫だが、富士急ハイランドの「フジヤマ」は無理だという人もいるかも知れないので、だれもがジェットコースターを好きな訳ではないだろう。よって、誰もが「加速度感覚」に対する快感度が高い訳ではないと思うが、見えない何かに惹きつけられるような不思議な魅力や、気持ちがゾクゾクとさせられるという点では、あらゆる人に共通する感覚のはずだと思う。

 

 僕なんぞあと2年で60歳を迎える。ある意味、人生の区切りとなる。それは新しいステージを迎えることとなる。人間は新たなステージに切り替えるには「加速力」が必要となる。言い換えるなら「チャレンジする力」である。チャレンジするには、その下地となる知識や技能を身につけてかねばならない。全くの一からのチャレンジなどというものは成功しない。よって「加速」とは、何か新しいことにチャレンジし、それを身につけていくプロセスなのである。但し、大切なのは「身体感覚」である。

 

 あたまデッカチになってはダメだ。体に新しいことを覚えさせないといけない。自分は「加速できる」という感覚を身につけた人間とそうでない人間とでは、成功の度合いが異なる。まぁ目標の達成とも言い換えられるかもしれないが、目標を達成しようというエネルギーの蓄え方と放出の仕方ということなのだ。

 

 2023年は人類史の転換点となる年となる。なにせ大量の人類が姿を消すからである。たとえそんな時であっても人間は前に進まなければならない。そしてこれまでの生き方ではやっていけない時代を迎える。ある意味で、日本人の殆どが新しい生き方のための「加速力」を身にたうけなければ生き残ることができない厳しい時代となる。これまでの生き方、やり方は通用しなくなる。だからこそ「加速力」を身につけておきたいと願っている。