ネットワークビジネスとは宗教である!

 

 日本アムウェイに対する6カ月の取引停止命令が出たからかどうか知らないが、僕が2021年2月に書いた「ネットワークビジネスとモルモン教の秘密」という記事を読まれる方が増えている。まぁご興味あるからは参照願いたい。

 この記事は別にマルチ商法の危険性を訴えたわけではなく、アメリカで迫害されたモルモン教徒にとって、店舗を持たない「ネットワークビジネス」という形態が、彼らの布教と教会の拡大にとって非常に適していたという理由と、最終的な目標はモルモン教の正式名称「末日聖徒キリスト教会」に隠されているとした。

 

 

 日本アムウェイに対する6カ月の取引停止命令が出た背景について、改めて見てみる。

 

 日本アムウェイに6カ月の取引停止命令 違法勧誘で消費者庁」(2022.10.14付 読売新聞)
 消費者庁は、連鎖販売取引(マルチ商法)で違法な勧誘をしたなどとして、日本アムウェイ(東京)に対し、特定商取引法違反で6カ月の取引の一部停止を命じ、14日発表した。命令は13日付。同社への行政処分は初めてという。
発表によると、同社の会員男女2人は2021年3月、マッチングアプリを通じて知り合った女性に対して同社の会員登録という目的を告げずに登録をしつこく勧誘。女性は登録をしないと帰してもらえないと考え承諾したが、会員2人は契約を結ぶまで書類を一切交付しなかった。  同庁はこの事例で、氏名などの明示義務違反▽勧誘目的を告げずに誘った人に対する公衆の出入りしない場所での勧誘▽迷惑勧誘▽概要書面の交付義務違反――の四つの違反を認定。さらに、SNSなどを使ったほかの2事例でも違法な勧誘を認定した。 関係者によると、京都府警が昨年摘発した刑事事件が端緒になったという。

 

アムウェイ本社(東京都渋谷区)

 

 要は昔のアムウェイの勧誘と異なり、最近は マッチングアプリを入口にして、あたかも「恋愛」に発展するのかと思いきや、実はアムウェイの勧誘だった、という話だ。この時点で「恋愛詐欺」みたいなものだ(笑)。これがカッコいいお兄ちゃんだったり、セクシーなおネエちゃんだったりしたら、下世話な妄想に負けて「まぁいいか」ということになるのかもしれないが、ブサイクなオッサンが登場したり、ブスな自称おネエさんが登場したりしたら「こりゃダメだ」となって、「だまされた〜」というオチとなる(笑)。まぁ今回のアムウェイの事件は、この「恋愛詐欺」みたいなものだったのだろうと想像できる。

 

 それにしても「ネットワークビジネス」の王道は、知り合いの知り合いをどんどん集めて会員にしてしまうことだが、なにせ労働人口が減少、経済の悪化で収入も減っているから、より簡単な集客方法として無料の「SNS」や「出会い系サイト」を使って集客しようという安易な発想だったに違いない。こういう安直な発想をする人は「ネットワークビジネス」の勝者にはなれない。

 

 「ネットワークビジネス」で大切なのは、豊富な知識と教養に裏打ちされた「人格」と「説得力」である。こう書くと真っ当なビジネスに思えてくるだろう。日本では江戸時代から元祖ネットワークビジネスである「ネズミ講」と呼ばれた詐欺が横行してきたが、「詐欺だ」と思ってしまうか、「素晴らしいビジネスだ」と思えるかの違いは、説明する人を「人格者だ」と思えるか、その説明内容に「納得!」となるかである。要は怪しまれたらその時点で「アウト」なのだ。つまり「信用第一」なのである。

 「なんだ、普通の商売と一緒じゃん」という風に思われるかもしれないが、そこに「落とし穴」がある。なにせビジネスモデルを説明したり、商品を説明したりする人は、別にそれを作ったわけじゃないからだ。要は「いかに人を気持ちよく騙せるか」である。

 

 本物の「詐欺師」という人は「先生」と呼ばれることが多い。聴いている人が思わず尊敬してしまうような豊富な知識や経験を持っていて、まるで「人生の師」というくらい尊敬されてしまう。本当は詐欺師なのだが、誰一人として騙されているとは思っていない。だから死ぬまで「先生」を演じ続けられた人だけが「本物の詐欺師」なのである(笑)。だが、これがすぐに詐欺だとバレてしまうような底が浅い人間だと、「単なる詐欺師」で終わってしまうのである。

 

 「先生」などと呼ばれてしまう時点で、もはや「宗教」である。信者たちがいっぱいお布施を出してくれる。だから、「本物の詐欺師」は過剰に演出された写真や自著の出版が好きだ。だいたいネットワークビジネスである程度の成功を収めると、必ず内容の薄い本を出す輩が多い。まぁユーチューバーが出す有り難くない本みたいなものだ(笑)。そしていかにも人徳がありそうな写真や、内容が薄くて「ユダヤ人大富豪の教え」のような本をパクったものであっても、「本を出している」と権威付けになるのだ。

 

 

◆学生に流行っているマルチビジネス  

 

 ここ数年、学生の間で問題となっているのは、「投資FX」の詐欺だ。「バイナリーオプション」にハマっている学生が多く、学内でのその勧誘が問題になっている。特にコロナ禍でバイトがなくなったり、親からの小遣いが減った子供達が遊ぶ金や洋服を買う金欲しさに気軽に始めてしまうケースが急増している。

 

 「バイナリーオプション」は、為替相場や株価指数などを対象に、あらかじめ決められた時点、期間の騰落を予測し、ある値よりも高いか低いか、一定の範囲に収まっているかなど、二者択一で選ぶ取引である。バイナリーオプションは、取引の仕組みが単純で、騰落を予想するだけの簡単な取引のように見えるのだが、実際は複雑な理論的根拠に基づく金融取引だ。
 比較的少額で購入でき、取引における損失額はオプション料に限定されることから、一見、リスクの低い取引であると誤解を招きやすいうえ、安いオプション料に惹かれペイアウトを受け取る可能性が低い取引を選好し、短時間で損益結果が判明するために、安易に何度も取引をやってしまったり、短期間に繰り返し取引した結果、多額の損失を被ることがある。

 

 金融庁も騙されないように呼びかけをしている。騙されそうな方はよく読んでおいた方がいい。

 

 

 大学内での「バイナリーオプション」の勧誘は学生が入口なのだが、「詳しい説明は…」となると「先輩」なる人物が登場する。アムウェイでいえばSNSや出会い系サイトが学生と同じで、落とす候補が確定したら説明要員とともに現れるという寸法だ。「バイナリーオプション」や「ネットワークビジネス」の勧誘で問題となるのは、「絶対に儲かるから」と言って勧誘すると違法になる。すると警察沙汰となり、窓口は消費者庁や弁護士事務所ではなくなる。要は国会で問題になっている「統一教会」が信者から多額の金を出させる構造と全く同じなのである。

 

 「バイナリーオプション」の勧誘の際、ほぼセットになっているのが「自己啓発セミナー」である。やれ「これをやらないなんて遅れている」と煽るわけだ。レバレッジで負けが込んで100万円とか結構な額の借金ができると、「それはあなたの心が弱いからだ」とか「賭け方に問題があるから負けるのだ」と精神論で攻めてくるのだ。それで「これは心も強くできるから」と、「バイナリーオプション」をさらに勧めてくる。そうこられると理系の学生なんか精神論に弱いから、すぐに陥落されてしまう。そして「知り合いがお金を貸してくれる」と言って消費者金融が登場する。そこから泥沼にどっぷりと浸かっていく。まさに「統一教会商法」である(笑)。「お前の信心が足りない!」「あなた方はエヴァだ、サタンだ」という真のお母様=「本物の詐欺師」という構造なのである。

 

 冷静に考えれば「バイナリーオプション」なんてものは、真っ昼間から飲み屋で「丁半バクチ」をやっているようなものなのだが、バクチの大原則は借金でやったらいけないというバクチの文化も知らない子供達が多いから、つい騙されるのだ。で、一発逆転を狙ってさらなる自己啓発セミナーに通いを続け、そこで「ネットワークビジネス」の人たちと知り合って、それを始めたら上手く行かない。で、別のセミナーや別のネットワークビジネスを始め、別の投資詐欺にも遭って、気づいたら500万とか1000万の借金、という風に堕ちていく。まさに「サタン国」だ(笑)。

 

 こういう「一発逆転」を狙う人たちの特徴は、「今の自分の姿は仮の姿だ」という思いがある。だから大学を変えてみたり、ネットワークビジネスを渡り歩いたりしてしまう。「もっと金持ちで、オシャレな格好して、高価なレストランで食事をし、素敵なタワマンに住んでいる・・」というのが、本当の自分の姿であって、「今の貧しい自分は仮の姿なのだ」という発想である。こういう人たちはホリエモン信仰者に多い(笑)。これも宗教である。

 この思想はネトウヨや青年会議所のメンバーなんかにも多い。やれ「オレが日本を変える」とある日突然言い出して、憂国の志士みたいな変な人になってしまうとか、逆に「あたたも日本を変えられる」と承認欲求をくすぐる餌をまかれてしまうと「そうだ!」なんてことになって、「安部総理は素晴らしい!」とか頓珍漢なことを言い出したりして、「安倍真理教」の信者になってしまうのだ(笑)。

 

 「ネットワークビジネス」を始めようと「バイナリーオプション」を始めようと構わない。やりたい人がやればいい。だが、「ネットワークビジネス」というのは宗教だから、結局は開祖とその一族だけが潤う構造だし、金融賭博というのは「掛け金がデカイ奴が勝つ」と昔から決まっているのだ。そのくらいの知識は最低限もっていないと、きっと「サタン国」に真っ逆さまに堕ちて行くだけなのである。ご注意を。