「ジャングルを怖がるだけで、実際に身を投じなければ、いつまで経ってもジャングルの掟を学ぶことはできず、生存能力も身につきません。それは、失敗を恐れて思い切ったことにチャレンジする勇気が持てないからです」
大前研一 (『ザ・プロフェッショナル 21世紀をいかに生き抜くか』)
もう15年前の本であるが、「本当のプロフェッショナルとはどうあるべきか」を問う時代を超えた名著である。
どんな領域の仕事であっても、そもそも頭で考えるだけで、身につくことなどない。
サラリーマンの頃は会社の方針に従って仕事を進めることを求められるが、経営者や個人事業主になると全て自分の頭で考え、仮説を立て、自らチャレンジしてみて結果を出さなければならない。
大企業ならばある程度の失敗も許されるかもしれないが、零細企業では1回の失敗が命取りになる場合もある。
失敗を恐れていては何もできないし、何も変わらない。
うまくいくかどうかは「時の運」もある。
だが、やみくもにチャレンジするだけでは、結果を出すことは難しい。
会社勤めをやめて起業した瞬間から、全ての責任は自分が負わなければならない。
もう毎月の資金繰りやら営業やら企画の立案やら、やらなければならないことが山積みになるが時間は足りない。
そんなことを繰り返している間にすぐに1年が過ぎ、3年が経ち、気付くと倒産!なんてこともままある。
ベンチャー企業の生存率を示すデータがある。
創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%。 20年後はなんと0.3%。
生き残るだけでも凄いことなのだと改めて感じさせる数字だが、日本国内の生存競争を勝ち抜くだけでは生き残れないというのが21世紀の企業の掟である。
日本の中で生き残るだけでも必死なのに、「世界と戦う」ということは、弱肉強食のジャングルで喰うか喰われるかという戦争を続けるということだ!
海外と仕事をしているとそれは如実に感じる。
日本人的な曖昧な表現や回答は許されないし、「話せば分かる」なんていう甘ったれた思いは通じない。
欧米は異なる文化や言語の人たちと仕事をすることになる「話が通じない社会」だからこそ、全ては「契約」がベースとなる。
契約書にない項目は履行されないのが当たり前だから、日本人的な「お願い」は通用しない。
逆に中国人と仕事をしていると、契約書を交わしたにも関わらず平然と契約内容を履行しないなんてざらである(笑)。
ジャングルで仕事をしていると本当に疲れる(笑)。
「もう辞めたい」なんて思うことはざらで、会話をしていてもブチ切れそうになることも多い。大人だしビジネスだから会話も戦争であるが、本当に切れてはいけない。切れたら「負け」なのだ。
でも「抑える」のも体力がいる。だから「疲れる」のである。
ジャングルで戦うには「開拓者精神」こそが最強の武器になる。
だか、年々変化が速くなる世界というジャングルでは、ただやみくもに歩き回っているだけでは「喰われて終わり!」となってしまう。
そんな中で生き残るにはどうすればいいのか?
大前氏は言う。
「ジャングルへの一歩を踏み出す時、想定した仮説を軸足に、しつこく試行錯誤する姿勢、言い換えれば、たとえ失敗しても『必ず次は成功する』という、周囲を圧倒するほどの執着力が一つの護身術となります」
21世紀に入って以降、20世紀の常識はもはや通じなくなった。
巨大な企業もいつ海外から喰われるか分からないし、小さなネズミに巨象が倒されたりする。
未踏のジャングルに足を踏み入れ、数多の失敗や逆境を乗り越えた人間だけが、自らの手で道を切り拓き、手垢のついていない答えを見つけることが可能なのだ。