「その場にいる方たちが避けていそうな話題を持ち出して『こういうアイデアもいいかもしれませんね』と言ってみるなど、気を読まずにあえて『地雷』を踏むと、胸のつかえが下りたように皆さんがいろいろな話を聞かせてくださったりするのです」  

 

佐藤オオキ 『佐藤オオキのスピード仕事術』

 

佐藤オオキは建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど多岐にわたるデザインを手掛ける、多分、いま日本で最も忙しいデザイナーである。なにせ400のプロジェクトを同時に進める人だ(笑)。

 

400ものプロジェクトを同時に進める人とはいったいどんな脳の構造をしているのか、興味が湧いてこの本を買って読んでみた。ただモノではない。但し、狂ってはいない。いたって全うな人だが、脳の使い方=意識と行動の習慣が普通ではありえないスピードなのだ。

 

本のはじめに「仕事の質は、スピードで決まる」とあったが、「まぁよくありそうなフレーズだわ」などと思ったのだが、

「スピードを上げる→仕事の質が高まる→仕事が早く仕上がる→依頼がどんどん集まる→400ものプロジェクトを楽しみながら進められる」というものだった。

 

同じような話を、以前、作詞家の松井五郎氏が言っていた。

僕はたずねた「松井さんはなんでそんなに詞を量産できるんですか?その秘訣は?」という問いかけに対し、松井氏はこう答えた。

 

仕事は常に前倒しで仕上げます。1曲の作詞に3時間以上はかけません」と。

 

常に仕事の依頼がいっぱいくる人気クリエーターの秘訣、それは「スピード」、そして「完璧を目指さない」ということだ。佐藤氏も松井氏もいうのは、最終的に自分たちの作品を評価するのはあくまでユーザーであって、クライアントではないということなのだ。いくら発注者が喜んでも、それを届けた人たちが評価してくれなければ「お金」にならないのだ。

いくら自分で「完璧だ」と思っても、ユーザーが評価してくれなければ単なる自己満足に終わるのだ。だから1つの完璧な作品を作るよりも、大量に作品を届けることを優先するのだ。

 

大量の仕事をこなせるようになると、それまでには見えなかったものが見えてくる。もっと高いところを目指すならば、「超高速で仕事をこなせ」、この本はそう教えてくれる。

 

2016年3月4日記述