「結局アキラメですよ。お釈迦さんなんかも言っているように。たいていの人生論は、このアキラメを何かのコトバに挟んで、いろいろ言ってるだけです。成功を欲しがるのは、無能なヒトなんですよ。優秀なヒトなら、放っておいても成功しますよ」
水木しげる 『人生をいじくり回してはいけない』
先日、水木しげるが他界した。調布市民の僕としては大変残念である。
本日も調布の本屋の一角にある水木しげるコーナーで、「目玉おやじ」のメモ帳をつい買ってしまった。憎めないキャラだからだ。
「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ、水木しげるは妖怪ものがメインの漫画家だった。幼少の頃に読んだ「墓場の鬼太郎」(後の「ゲゲゲの鬼太郎」)は、とても怖かった。特に目玉おやじが生まれるエピソードの漫画は、6歳の子供にはかなりグロかった。
だが、ねずみ男も砂かけババア、子泣きじじいなど、水木しげるが創り出すキャラは、妖怪なんだけどどこか憎めない、どこか人間の悲哀を感じてしまうようなキャラクターが多かったため、大人にも子供にも人気が高く、天才「手塚治虫」は終生、水木しげるをライバル視していた。
本日の言葉は水木流の幸福論。「アキラメ」、そして「成功を求めない」という姿勢をいかがなものかと言う人は多い。だが、太平洋戦争中にラバウルに出征し、敵の攻撃で所属する部隊は全滅。一人生き残るも、結局、片手を奪われることになる。そんな壮絶な生き方をしているからこそ言える言葉だと思う。
明日死ぬかもという状況の中でも、水木しげるは必ず「生き残る」と決めていたから死なずに済んだと述回している。
水木しげるは漫画家として大成功を収めた人だ。本人は「成功」とはいわず、「生き延びてこれた」と表現している。まさに、戦争でも生き延び、生き馬の目を抜く漫画界でも生き延びた。生き延びること自体が大変な世界で、ずっと人気を維持してきたこと、それが結果として成功したにつながったのだ。
大きな成功を望まずに、淡々とやりたいことを続け、自分の仕事の業界で「生き延びる」。それが水木流の成功哲学だ。
合掌
2015年12月7日記述