「グローバル化するとは、日本が欧米化していくことではないのです。日本の良さを保ちながら、むしろそれを世界に広げていくこともグローバル化です。・・・・その意味で、グローバルな人材になるには、まず日本の特質をしっかり理解するように努めなかればならないと思います」  北尾吉孝(SBIホールディングス代表取締役執行役員社長)

 

よく外資系にお勤めの方で、、やたらとカタカナを連発する方がいらしゃるが、生活様式も思考様式も全て欧米化していて、日本の本質や日本の文化を理解されていない方が多い。海外で生活をした方は痛感すると思うが、海外に行くと決まってこう聞かれる。

 

「日本ではこの問題をどういう風に考えますか?」「日本の文化で最も海外に誇れるものは何?」

 

日本人としてのアイデンティティを問われるのだが、突然こうした質問をされると答えに窮する方が多い。

これは自分の生まれ育った日本という国を理解していないということだ。自分の国の文化やそのベースとなっている宗教、思考や行動の様式を理解していないと、海外では見下される。「こいつ自分の国のことも理解していないんだ」と。

 

特にフランス人やアメリカ人に顕著だ。大の日本の文化好きが多く、茶道や華道といった伝統文化にはじまり、近代の小説家の作品を読んでいる人も多い。日仏会館で働く人などは、川端康成や三島由紀夫の好きな作品名などを聞いてくるが、そこで答えに困ると、突然、心の中で見下される。「お前、バカじゃないの」と。

 

最近では「JAPAN EXPO」に代表される、マンガ、アニメ、ゲームとアキバ系のオタクカルチャー好きが世界中に何億といるが、こういう人たちは増えることはいいことだ。日本のファンが増えれば増えるほど、日本を想定の「敵」とはみなさないからだ。

 

一時期、新大久保で「反韓流」のヘイトスピーチをよくやっていた。今も中国大使館やロシア大使館前には、定期的に右翼が街宣車に乗ってデモをする。むかしから都内のデモを見ていた僕は、決まって「うるさい、意味不明、スピーチが下手」と感じていた。が、これは今も変わらない。彼らは、本質を理解せず、表面上のことを取り上げて、海外を貶める発言をするから、「確かにそうだ」と納得させるようなスピーチができないのだが、先日の国会前のデモをやっていた人たちも一緒だ。

 

最近は本屋で、中国や韓国がいかにひどい国かということが書かれた書籍が平積みになっている。僕も一通り目を通すが、こうした書物ばかり読んでいると、差別心が育まれ、ヘイトスピーチにつながっていくから注意だ。この手の作者も、表の事象ばかりに気をとられているか、中韓との仲を悪くしようという意図で書いているケースも多いので要注意だ。

 

孫正義が自分の右腕にするため、野村証券から将来のエースといわれた人材を引っ張ってきたその人がSBIの北尾さんだ。この人は、ソフトバンクの取締役会で、孫正義の提案にとてもロジカルに「No!」を突き続けた人だが、この二人はとても仲が良く、いつも中国の古典である「論語」を語り合っていたらしい。

 

北尾さんの言いたいことは、相手を貶めるのではなく、日本のいいところをもっと海外に発信することがグローバル化で、そのためにはまず、「自分が誰で、自分の国がどんな国なんだ」、ということを理解せよということだ。それを知らずに何がグローバルだ、そんなものは中身のないグローバルな洋服着てるだけだ、そういいたいのである。

 

楽天やユニクロが社内公用語を英語に変えたが、会議は英語でできるがコミュニケーションはできない、そんな人材が増えているらしいが、まぁ徐々に日本を理解する人たちも増えて行くことだろう、と期待したい。

 

2015年10月16日記述