列車事故 | 不思議サロン

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怪談奇譚不思議のブログです。

私が仕事から帰宅すると、

 

同居しているお義母さんが可愛らしく

 

1階のリビングからひょっこり顔を出して、

 

「○○ちゃん(私の名前)、コーヒー飲まない?」

 

と声を掛けて来た。

 

こんな事は滅多にない。

 

仲が悪いわけではないが、

私が忙しくているので

 

ゆっくりおしゃべりする時間がないのだ。

その日も忙しかったのだが、

 

たまには義母孝行をしなくては、と思い

 

コーヒーを頂く事にした。

 

テーブルに座るや否や、

 

「この間さぁ、ちょっと不思議な話を聞いたのよ」

懐疑派の旦那さんの母上なだけに

彼女はそれを上を行く懐疑派なのだ。

 

懐疑派中の懐疑派。モストオブ懐疑派である。

 

幽霊の類は全く信じていない人である。

 

そんな人種から不思議な話と聞いて、

 

笑みがこぼれるのを必死でガマンする。

クールな目つきで

聞いてあげてもよくてよ、(←これは言っていない)


興味ないふりを装う。

話しはこうである。

 

先日、義母は何十年ぶりかに会う友人達と

 

ランチに出かけたそうだ。

その時、Y子さんから不思議な話を聞いた。

18年前の出来事だという。

朝、家のチャイムが鳴った。

 

ピーーーンポーーン

Y子さんは当時会社勤めをしていたので

朝の身支度で忙しかった。

「こんな時間に誰?」

 

時計を見ると、朝の7時30分過ぎ。

 

少しイラついた気持ちで出てみると、

 

スーツを着た男性が1人、

玄関の前に立っていた。

見覚えのない男性だったので、

 

こんな時間にセールスに来たのかしら?

と思ったそうだ。

「何か御用ですか?」Y子さんが言うと

その男性は何か言っているみたいなのだが

 

音声が聞き取れない。

 

口をパクパクしているだけに見えた。

 

怖い怖い怖い、気持ち悪い、

そう思って「すみません、今忙しいので失礼します」

言いながらドアを閉めた。

 

ヘンな人だなぁぁ、

台所に行き何気に時計を見ると10時を過ぎていた。

えっ???

チャイムが鳴ったのは7時30分過ぎ、

1分も経っていないはずなのに、

何故2時間以上も過ぎているのだろうか?

何これ、会社に完全に遅刻だわ。

この時計がおかしくなったに違いない、そう思って

携帯を見てみるがやはり10時を過ぎていた。

慌てて会社に電話を入れる事にした、

7時過ぎだと思っていたら10時過ぎだったんです、

とはさすがに言えないので、

急に体調が悪くなったので今日はお休みさせて頂きます、

 

と伝えた。

「でもね、そのおかげで私は命拾いをしたのよ。

ほら、2005年に兵庫県尼崎市で起きた列車の大事故覚えているでしょ。

私ね、事故のあった時間帯の列車で通勤していたのよ。

しかも乗る時はいつも前の方の車両だったから、

 

あの朝、いつものように会社に行っていたら

 

どうなっていたか。。。

そんな風に考えると怖くてねぇぇぇ」

義母はすかさず、

 

「その訪ねて来た男の人って誰だったの?」

「それがね。。。。」

信じて貰えないかもしれないけど、と前置きをして

Y子さんは話を続けた。

列車事故の翌月だった、

娘が1枚の絵を持って来たという。

 

きちんと額縁に収められている

 

A4サイズの鉛筆画だった。

 

こちらを向いてにっこり笑っている男性。

 

モノクロの濃淡で表現されているせいか

 

どこか寂し気に見えた。

Y子さんはハっとした。

 

あっ この顔。。。

その絵の顔は先月の朝、

 

家を訪ねて来たあのサラリーマン風の

男性だったのだ!

「こ、この人誰なの??」Y子さんは娘に言うと

笑顔で「お兄ちゃんだよ」

お兄ちゃん?

Y子さんには5歳で亡くなった男の子がいた。

病気で亡くなったそうだ。

「しんちゃん?」

「そうだよ」

どういう事かと娘に聞いたら

故人が年を重ねたように描いてくれる画家さんがいて

頼んでいたのだと言った。

我が子とは言え、5歳の息子が成人した顔は

想像できなかった、というか想像していなかった。

Y子さんの中ではずっと5歳のままだった。

これで先月の出来事が、全て理解できた。

「あの子が私を助けに来てくれたのよ」

 

 




「ね、不思議な話でしょ。

良い話なんだけど、

 

亡くなってしまっても歳を取るのね」

義母は言った。

私も同感だった。

2つ、不可思議な点がある。

1つは、7時30分から10時過ぎまで、

 

時間が飛んでいる事。

もう一つは、亡くなられた年齢ではなかった事。

考えてみると、もしサラリーマン風でなく

 

5歳のままのしんちゃんだったら、

 

違う意味で同様してしまうかもしれない。

 

それを気遣って、息子さんは姿を変えたのだろうか。

 

時間が飛んだのは、

 

多分その間、Y子さんは眠っていたのではないだろうか。

 

正確に言えば眠らされていた。

 

あれは、Y子さんの脳内で起こった現象だった。

 

だから音声が聞き取れなかった。

 

私もそうだが、夢を見ている時は、

 

聞こえている感覚はない。

 

3次元では起こせない奇跡も、

 

別次元(夢)なら容易に起こせるのではないだろうか。

 

怪談話の最後に「気づいたら寝ていた」

 

「朝だった」「気を失っていた」という結末をよく聞くので

 

こんな風に思ってしまった。

 

いつも読んでくれて、ありがとうございます。

 

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