「私がね、女子大生だった時に友達から聞いた
話なんだけど。。。」
そう話すのは30代後半の女性、Yさん。
大学の頃、友人のHさんから聞いた話なのだが、
そのHさんもサークルの先輩から聞いた話しなので、
Yさんが体験した話しではない。
Hさんは大学のオカルトサークルに所属していて、
毎年夏休みになると合宿に行くのが恒例になっていた。
みんなで集まってはバーベキューをして楽しむのだが、
他のサークルと違うのは、行く場所が!
心霊スポットと言われているところなのだそうだ。
春に入ったばかりのHさんは、
「今年の夏の合宿は取りやめになったんだよ」
と先輩から聞いた。
その理由に驚愕した。
去年の夏のこと。。
ある湖畔に幽霊が出ると地元の学生達が騒いでいたのを
聞きつけた先輩達。
なんでも、夜中に湖に行くと、何人もの幽霊が湖から現れて、
生きている人間を引きずり込んで行くのだと言う。
数年前に発生した水難事故の被害者なのではないか、
というのが専らの噂だったが、
その幽霊が、兵隊さんだったり。。。
落ち武者だったりと、話によって変わっていた。
ならば、自分達(オカルトサークル)が
その幽霊の正体を暴きに行こう!
という事で、
その夏の合宿は、その湖畔周辺の民宿に決まった。
車から3時間ほどの場所にあったという。
参加人数は男女合わせて6人、男子学生4人
女子学生2人だった。
(女子学生をAさんとBさんとしておく。)
夕方には湖畔について、明るい内に下見をしてから
夜になって湖に行く予定だったが、
大学でいろいろやっているうちに湖畔に到着したのが
夜の8時を回ってしまった。
下見もなしに湖に出かけるのは危ないので
今夜は大人しく民宿に直行する事にした。
しかし、少しだけ湖畔を(遠くから)見てみたいと
思った6人は、車から降りて湖に向かった。
湖までは距離があったが、遠くからでも気味の悪さが伝わって来た。
「うわぁぁぁ、なんだか吸い込まれそうだねぇぇ」
生温かい風が湖から吹いて来る。
湖というよりは漆黒の暗闇で、どす黒い穴にでも
落ちて行くような雰囲気だった。
怖気づいた一行は、行くのをやめ、
民宿で遅めの夕飯をとった。
「ちょっと、あの湖、今までのとは格が違わない?」
「怖いなっ。俺、無理かも。。。」
日頃、最強のオカルトサークルと言っている割には
大した事がない。
解散後、AさんとBさんは部屋に着くとシャワーを浴びて
早々に眠ってしまった。
どれだけ経ったか、
ねぇねぇ
ねぇねぇ
Aさんは身体を揺すられた。
「何ぃぃぃ」
鈍い返事をしながら目を開けると、
BさんがAさんの顔をギョロ~っと除きこんでいた。
「ねぇ、やっぱり湖に行ってみない?」Bさんは真剣だ。
「何言ってるの??」
部屋の時計を見ると夜中の1時を少し回っていた。
「霊は、これくらいの時間じゃないと
活動しないんだよ。
霊の姿をカメラに撮って、皆をぎゃふんと言わせようよ」
Bさんはこの日の為にバイト代をはたいて
高性能の高価なカメラを購入していたという。
どうやらBさんは、筋金入りの心霊マニアのようだった。
「でも、危ないし。。。二人だけじゃ怖いよぉぉぉ」
「じゃあ良いよ、一人で行くから」
Bさんは唇を尖らせながらそう言うと、そそくさと
部屋を出て行ってしまった。
Aさんは、慌てて支度をして
Bさんの後を追った。
どうせ、何も出やしないだろう。。
そんな風に思ったという。
Bさんに強引に誘われてオカルトサークルに入っていたが、
Aさんには霊感は特になく、
今までに一度も幽霊など見た事はなかった。
「ちょっと待ってよぉぉ、一人じゃ危ないよ」と、
AさんはBさんに声を掛けた。
Aさんの懐中電灯はBさんの背中と
鬱蒼と茂る林の中の小道を照らすだけだった。
その時、ジーンズの後ろポケットに入れたAさんの携帯が
ブーン ブーンと鳴った。
Aさん、立ち止まって携帯の画面を開くと、
Bさんからの通話だった。
えっ
前を行くBさんは電話などしていない。
とりあえず出てみた。
「ちょっとぉぉぉぉ、Aちゃん、どこに行ったのよぉぉ」
慌てているBさんの声だった。
どういう事?
Bさんは前を歩いていて、電話などしていない。
Aさん、背中がゾクゾクっとしてきた。
「ねぇ Bちゃんっ 待って!」
Aさんは目の前を歩くBさんに声を掛けた。
BさんはAさんの声が聞こえていないのか、
振り向きもせず、どんどん湖に近づいて行く。
「Aちゃん、
誰かといるの?」
電話の向こうでBさんが心配そうに話しかけて来る。
「誰って、
Bちゃんといるんだけど。。。」
「は?何言ってんの。
私は部屋にいるわよ。」
もう何がなんだか分からなくなったAさん。
「Aちゃん、
行っちゃっダメだよっ!!!」
電話の向こうでBさんがそう声を掛けて来た。
どうしたら、良いんだろう。。。
戸惑いながらも、Aさんが
民宿に戻ろうと踵を返した時、
パシっ
Aさんの細い手首をBさんに捕まれた。
そしてBさんは、ボソっとこうつぶやいた。
「行こっ」
ヒッ
思わずAさんは身を引いた。
手の主の顔は、Bさんではなく、
全く知ら無い女の顔だった。
その手を振り切ってAさんは渾身の力を込めて走った。
来た道をとにかく走った。
前方の方に無数の光が見えた。
「Aちゃん?」
一つの強い光がAさんの顔を照らした。
Bさんだった。
そして他のメンバーも心配そうに探しに来てくれていた。
Bさんの顔を見たら、Aさん腰が抜けてしまって
その場に座り込んでしまった。
Bさんは「大丈夫?」と優しく声を変えてくれていた。
「いる。。。。いる。。。。女が。。。」
Aさんは、一生懸命声を絞り出そうとするが
これが精一杯だった。
「K君、一緒に湖畔に行ってみよっ」
BちゃんはK君を連れて湖畔の方に走って行った。
残ったH君が、「大丈夫だったか?」とAさんを抱きかかえようと
した時、Aちゃんは最後の力を振り絞るかのように
「だから、いるってっ、
Bちゃん、
行っちゃ ダメーーーーーーー」
BさんとK君を見たのは、それが最後になってしまった。
2人は行方不明になってしまった。
Aさんはその後、大学を辞めて入退院を繰り返す生活に
なってしまったそうだ。
後日、Aさんから聞いた話を推測すると、
部屋で最初にAさんを誘ったのは実際のBさんではなく、
湖の霊がBさんの姿になり、Aさんを外に連れ出した。
Aさんを引きずり込むのを失敗した女の幽霊は
民宿で待っていたBさんに憑依して、
K君を連れだし湖に引きづリ込んだのではないか。
AさんがBさんに向かって
「いる。。。。いる。。。。女が。。。」と言ったのは
女の霊がBさんの背後にべったりとくっついていたのが
Aさんには見えてしまい、
その女の存在をBさんに知らせようとしたそうだが、
声がもう出なかったという。
自分がもっとしっかり伝えていれば。。。
BちゃんもK君も行方不明になる事はなかったのに、と
自責の念にかられていたそうだ。
ホントの話かどうかは不明だが、
怖い話である。
なんかこの話し、映像にするとめちゃくちゃ怖そうだと
思ってしまった。
いつも読んでくれて、ありがとうございます(*^^*)