
トキの飛翔行動に関連して、面白い記事があった。
産経ニュース 放鳥トキ 3羽目が本州に
この記事の中で以下の部分
「放鳥トキの観察を続けている日本野鳥の会佐渡支部の土屋正起副支部長は「快晴時は佐渡から本土が近く見える。今の季節は北西の風が吹いており、トキは風に乗って時速50キロぐらいで簡単に県北部に渡ってしまう」とみる。佐渡島の漁師から、海を渡ろうとしてまた戻ってくるトキの目撃情報も寄せられているという。」
今回 飛翔したトキかどうかはわからないが、いったん本土へ向ながら引き返した個体が観察されているらしい。
この野鳥の会の方は、北西の風に乗って時速50キロで飛べばと話されているのだが、ボクはこの点には疑問を持っている。
一つはトキが渡った日の風向だ。
○最初に本州に渡ったトキ 3番は10月27日に胎内で確認されている。
10月の両津の風向風速はこうだ。

トキ3番がいつ佐渡からいなくなったのが、よく判らないのだが、確認された以前の風向風速をみると、あまり強風は吹いていないことがわかる。26日は風が強かったのだが、その時の風は北西ではなく南西の風。佐渡から本土向かう風ではない。
○二番手は トキ7番。 2月26日まで佐渡で確認されていていなくなり、3月3日に胎内で確認されている。
2月と3月の風向風速を見てみよう。


トキがいつ日本海を渡ったのかはわからないが、確認されていない期間は比較的風の弱い穏やか期間だったといえるのではないだろうか。そして、風向きは北西ではない。
○三番目のトキ 13番は 3月7日まで確認されていて8日には村上まで渡っていた。
これはとても判りやすいと思う。7日は西からの強風が吹いていて、その風が止んだ次の日に移動している。
トキが移動した秋から冬の季節、強く吹くのは北西の季節風で、風が弱いときには南西よりの風となるからトキにとっては順風と言うよりも横風となる。
それでも、トキは本土を目指して飛翔して、やや東に流されながら胎内から村上付近に着いたのではないかな。ボクはそう思う。
トキは本土へ渡るという意志をもって、風の穏やかな日を選んで移動しているというのが、ボクの考えです。
☆テキスト版
放鳥トキ、3羽目が本州に 新潟・村上で確認
2009.3.10 18:40
新潟県村上市で確認された雌のトキ=10日午前11時ごろ(宮越一俊さん撮影)
環境省は10日、新潟県佐渡市で昨年9月に放鳥したトキ10羽のうち、雌1羽を同県村上市で発見したと発表した。これで雌ばかり3羽が本州に渡り、島内に残る雌は1羽だけとなった。その1羽も現在のところ単独行動を続けており、今春の繁殖は厳しい情勢となった。トキの野生復帰をめざす環境省は対応に頭を抱えている。
10日午前11時ごろ、村上市北部の田で、環境省委託モニターが餌を探しているトキを発見、足環の色から個体番号13番の1歳の雌と確認した。このトキは、今月7日まで佐渡市金井地区で2歳の雄とペアで行動しており、「繁殖は間違いない」(佐渡トキ保護センターの金子良則獣医)と期待を膨らませていただけに、関係者の落胆は大きい。
昨年11月8日には、3歳の雌が関川村で見つかり、今月3日には2歳の雌を胎内市で確認。今回も含めていずれも県北部に渡っている。放鳥された雄雌各5羽のうち1歳の雌はすでに死んでおり、島内にいる雌は3歳の1羽だけとなった。
放鳥トキの観察を続けている日本野鳥の会佐渡支部の土屋正起副支部長は「快晴時は佐渡から本土が近く見える。今の季節は北西の風が吹いており、トキは風に乗って時速50キロぐらいで簡単に県北部に渡ってしまう」とみる。佐渡島の漁師から、海を渡ろうとしてまた戻ってくるトキの目撃情報も寄せられているという。
この日、新潟市内で開かれたシンポジウムに出席した環境省トキ野生復帰専門家会合の座長、山岸哲・山階鳥類研究所長は「繁殖は難しくなるが、1度目の放鳥で繁殖しなくても失敗とは言えない」と話し、捕獲して佐渡に戻すことについては「捕獲のショックで死ぬかもしれない」と消極的な考えを示した。今後の放鳥については「雌を多めに放鳥するなどの方法を検討する必要がある」と話した。