友人と飲んでいた。
隣のテーブルに老年のご婦人と息子夫婦、そして、男性よりもすこし年若のご婦人、そんな組み合わせだった。あまり、関係のない方々、年齢層だと思ったが、話し言葉が気に掛かる。お店の方に「私らは、宇和島から来た」と話されているので、話しかけてみた。
 ボクは学生時代愛媛にいましたが、どちらからですか。
 宇和島の南の方 と おばあさんが答えた。
 ボクは、御荘町には良く行きました。室手海岸というところです。
 「え~}
 
 そこら辺から、びっくりしたのだ。
 なんと、そのおばあさんは室手海岸でお世話になった。民宿「はま」の女将さんの同級生。そして、国道沿いのレストラン「ビーチ」のご主人とも同級生という方だった。

 まあ、これが、松山の飲み屋あたりなら、それは、奇遇な、ぐらいの話なのだが、その場所は、奄美大島の「かずみ」という店でのこと。

 その方もびっくりしたが、ボクはもっとびっくりした。
その民宿の女将さんは1昨年なくなって、その娘さんも昨年亡くなっていた。お世話になっていた方々なので、近いうちにお墓参りに行かなければと思っていたところだった。
 その話をすると、おばあさんは「ちーちゃんにそう言っとくから…」という。

民宿のおばさんの愛称が「ちーちゃん」というのは初めて知った。おばあさんと「ちーちゃん」は仲が良かったそうで、卒業後も時々訪ねていく学生のことをとても楽しそうに話していたという。

 近いうちに、墓参りにと思っていますと話した。おばあさんは城辺にお住まいという。城辺のダイビングショップには良く通っていた。

「富平(ダイビングショップ)にはよくいきましたよ」ボクがそういったら。
家族全体が、びっくりした。
 ご自宅が富平から3軒ほどの並びだという。ボクにも、あの辺りのお宅かと思い当たる場所がある。

 イヤー。びっくりした。

 ところで、息子さんが奄美でお仕事というので、どちらにと切り出したが、かずみの和美ネエが「わたしの主治医」という。奄美の中央病院の院長さんだった。
 なるほど。
 狭いもので、その病院にも知り合いがいる。ボクが二十年来、通っている住用村新村(しんむら)という場所にある旅館の娘婿どのが勤務しているはずだ。当たり前だが、院長さんはよく知っていた。そのOさんにこの話をしたら、Oさんもびっくりするだろうな。

 そんなわけで、ご家族の団らんに乱入してしまったが、思ったことがある。

「はま」のおばちゃんが呼んでいるのかなぁ!
 すこし、背筋の辺りが、ゾクッとした。

処理しなくてはいけない作業もあるし、気に掛かっている。
宇和海には近いうちに行かなければならないなあ。