8月の上旬 長良川漁協として長良川河口堰管理事務所にこんな提案をした。

 ひとつは、アユの降下時期に、昼間に水を流すのを減少させて、夜間多くの水を流して欲しい。

 ふたつめ、サツキマスの放流をするときに、左岸側ロック式の魚道に一旦放流して、サツキマスに川の記憶(記名)をさせ、その後に放流したらどうか。
ということだ。

 この提案は、今年のアユとサツキマスの記録的な不漁を受けて、現状ですぐに出来る対策案としてボクが考えたものだ。 
 急に思いついたというわけではない。長良川河口堰の最大の問題点、生き物の流下を妨げるダム湖の湛水域(溜まり部分)の解消策について、ボク自身の電波発信器を使用した実験、他の河川での調査事例を参考に暖めていたアイデアだ。

 ひとつめの提案についての説明は次回に述べるとして、サツキマス(スモルト;銀毛という)の放流をロック式魚道から行うというアイデアは、

 長良川の水をサツキマス十分に記憶させる。
 サツキマスを確実に汽水域、海域に送り出す。
 という点ではその効果が期待できる。

 ロック式魚道は両側にあるのに、どうして左岸側かというと、右岸側には揖斐川があり、揖斐川と長良川は長良川河口堰のすぐ下流に水路があって、つながっているからだ。
 始末の悪いことに、揖斐川の水はそのつなぎ目から長良川に流れ込み下流に下っている。つまり、右岸側からサツキマスを放すと、長良川の水から一旦、揖斐川の水の中に入り、それから海に下るということになる。

 長良川河口堰の完成後、揖斐川に迷入するサツキマスが増えてきたのは、公団の資料にもあり、ボク自身揖斐川の漁師さんに同行して確認しているが、河口堰による障害とともに、最後に揖斐川の水を記憶してしまうこと、それも迷入の原因となるのではと考えている。

 そして、なぜ、河口から放流するかといえば、それは、河口堰から上流30km余にわたる湛水域を減耗することなく下らせるためである。

 この湛水域はまさしく河口のダム湖でブラックバス釣りのメッカになっている。国交省の魚類調査でもバスは確実に生息範囲を広げている。(その意味ではバス釣り人は長良川河口堰に感謝したほうがいい。)

 映像を見て欲しい、ロック式魚道は二基の水門からなっていて、いってみれば可動式の生け簀のような構造をしている。その「生け簀」を利用して安全に降下させる。そんなアイデアだ。
 急に海水に放して影響はないかと心配することは無い。河口堰の下には汽水部分があるし、水面は河川水が流れている。
 以前、アマゴを直接海水に放り込む実験をしたこともあるが、スモルト(銀毛)になったアマゴ(サツキマス)は全く丈夫で、実験終了まで海水中で半年生きた。

 長良川河口堰が出来る前、放流したサツキマスは10%余が帰ってきた。この方法で確実に海に放してやれば、5000尾の放流の相当部分、が帰ってくるのではと思った。 
 
 漁協の事務所には、長良川河口堰管理所から副所長以下の各部門の責任者が訪れた。
そして、この二点の提案したとき、その時点はその程度なら問題なくできるとの回答を頂いた。あまりにあっけないので、正直、拍子抜けし、逆に不安になった。

 もし、これで、アユとサツキマスの遡上が元に戻ったら、長良川河口堰を開放する理由が無くなってしまう。と。

 ニイムラ

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