再雇用制度と就業規則「全員を継続雇用しなければならないの?」 | (有)人事・労務 新潟支社 新潟の就業規則 社会保険労務士

再雇用制度と就業規則「全員を継続雇用しなければならないの?」

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■再雇用の場合は、原則希望者全員だが、基準を定めることも可能


 中小企業における対応で最も多いのが、再雇用制度ですが、この場合注意しなければならないのは、対象の従業員が希望したら再雇用しなければならないことです。つまり、会社の方で任意に再雇用対象者を選ぶことはできません。


 しかし、中小企業においては、能力が著しく劣っていたり、勤務成績が悪い従業員まで再雇用する余裕はない、という会社も多いと思います。


 ただし、法律では、一定の条件に該当した場合に限り、希望した全社員を対象としなくてもよい、としています。それは、社員の過半数代表者と労使協定を結んだ場合です。また、ある条件に該当した場合は就業規則に定めた場合でもかまいません。


 詳しく説明いたしますと、「労使の協定による書面をもって継続雇用制度の対象となる高年齢者に関する基準を定め、当該基準に基づく制度を導入した場合」は、法で定めた継続雇用措置を講じたものとみなされることになっています。


 また、労使の協議が調わないときは、施行日(平成18年4月1日)より当面の間(大企業3年間、中小企業(300人以下)5年間)は、就業規則等において基準を定め、当該基準に基づく制度を導入することも可能とされています。ただし、対象者の基準を就業規則で定める場合でも、その前に過半数代表者又は過半数労働組合と労使協定を締結するべく努力する必要がありますので、直ちに就業規則で継続雇用措置を定めることができるわけではありません。


 さて、ここで問題になるのが、「再雇用制度対象者の基準」をどのように定めればよいか、ということです。
例えば、「特に会社が必要と認めた者は再雇用する場合がある」という表現では、事実上基準がないに等しいので、無効となる可能性が高く、トラブルの元になるので避けた方がよいでしょう。


 要は企業や上司等の主観的な選択ではなく、労働者自ら基準に適合するか否かを、定年を迎える前にある程度予見できる基準、例えば、資格・技術、勤務成績、健康状態などといった具体的、客観的な内容であり、該当するかどうかについてトラブルを招くことがないよう配慮された基準が好ましいとされています。
具体的には、次のようなものです。


●好ましい基準の例
 ・過去3年間に減給以上の懲戒処分を受けている従業員を対象外とする。
 ・過去2年間の出勤率が8割未満の従業員を対象外とする。


●好ましくない基準の例
 ・会社が必要と認めた従業員のみ対象とする。
 ・上司が推薦した従業員のみを対象とする。


 労使協定で定める再雇用対象者の基準は、労使間で委員会などを作り、話し合いながら決めていく方法が望ましいと言えます。


 また、「継続雇用の3つのやり方」のところでも説明したとおり、法律では雇用の継続措置を講じる義務を会社に課しただけであり、定年前と同一の賃金や同一労働をさせることまでを義務付けたものではありません。


 つまり、雇用は継続するけれども、その時の会社の実情に応じ、再雇用後はフルタイムではなく、週3日のパートタイムにする、などの対応は可能です。


 ところが、従業員からしてみると、この当り前と思われる細かいところまで法律を熟知している人は少ないと思われます。ですから、きちんと周知していないと「当然、再雇用前と同じ賃金、同じ仕事で再雇用されるもの」と思い込んでしまう可能性があります。したがって、トラブルを避ける意味でも「雇用の継続はあるが、労働条件は変更できる」ことを就業規則にきちんと規定し、従業員に周知しておくようにしましょう。

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