ついこのあいだまで
お気に入りの車にテニスシューズを積み
通い慣れた体育館へ向かい
よく知っているようで
実はよくわからない仲間たちと
ボールを追いかけラケットを振り
とりとめのない話に笑い
日々を楽しんでいた母
突然
何も話すことができなくなってしまった
足取りもおぼつかず
唇をきゅっと結んで
両の眼から静かに涙を落として
車椅子に乗せられて
一度も振り返ることなく
病室へと姿を消した
何が良かったのか
これが最善なのか
他に何ができるのか
希望なのか 悲しいことなのか
新たな始まりなのか 何もわからない
けれど
今できる私たちにとっての
最良だと願いたい