現在、多くの高校の歴史総合や日本史探究、世界史探究の教科書には、「強制連行」という表現が使われている。他にも、「強制的な動員」という表現の例もある。

小学校用の歴史教科書では「強制的に動員され」などとある。中学校用の歴史教科書でも「意思に反して連れてこられ」という表現が存在する。

しかし、「連行」や「動員」「連れてこられ」などの表現は、もともと強制性を含(ふく)んでいる。同じく、「徴税」や「徴用」についても、その前に「強制」などを付けなくとも、強制性を含んでいる。

強制性のある用語の前に、強制性のある用語をつけるなどの日本語表現は「重語」と呼ばれるが、生徒の混乱を招(まね)くおそれもあり、教科書に重語は必要なのだろうか。しかも、「連行」や「動員」「連れてこられ」など、強制性があることが明らかな用語の前に「強制」や「意思に反して」などをつけるのは果たして適切なのだろうか。

なお、中学校歴史教科書の「意思に反して連れてこられ」という表現は、東京書籍のものだが、朝鮮人労働者に関わる表現であり、「連れてこられ」自体にも、2021年4月の閣議決定で否定された「連行」を連想させるなど、別の問題もはらんでいている。

教科書に重語は不要だ。

教育問題を考えるブログ」より。