こんにちは。結城蜜柑です。
「ドラゴンクエスト5」の二次創作小説です。
妻はデボラで、主人公の名前はエシィズ、息子はセシィズ、娘はセアラです。
お父さんとやっと会えた。
わたしはサンチョおじさんに言われて、みんなを連れてルーラでグランバニアまで戻った。
国民のみんながお父さんの帰還をよろこんでくれて、ちょっと泣きそうになってしまった。
そして一晩、お父さんに休んで貰った。本当はもっと休んで貰わないといけないのかな。八年間も石になっていたんだもん。
それなのに、セシィズが朝早く、お父さんに会いに行こうって言うから、わたしは戸惑ってしまった。
「お父さん、休ませてあげたほうがいいんじゃないかな」
「休みたいなら休みたいっていうでしょ。ちょっと顔見るくらいなら大丈夫だよ。行こう、セアラ」
「う、うん……」
手を引っぱられてついていく。セシィズはすごく元気。わたしも元気がないわけじゃないけど、セシィズみたいに活発じゃない。
「お父さーん。おはよう!」
ノックもぜすにセシィズはお父さんの寝室に飛び込んだ。
「お、お父さん?」
そして驚いたような声をあげたけど、それはわたしも同じで、体をかたまらせてしまった。
お父さんはまだ寝ていたんだけど、なぜか寝台の下の床に横になっていたのだ。
「落ちちゃったんだね……お父さんって僕と同じなんだ!」
寝相の悪いセシィズがうれしそうに言う。そっか……お父さんって、寝相が悪いんだ。
二人で側に行って、肩をゆする。
「お父さん、そんなところで寝てると、休まらないよ」
「んー……ん?」
お父さんは寝ぼけまなこでわたしとセシィズを見る。
「んー……久しぶりに床で寝たから、よく休めたなー……ふあああ」
わたしもセシィズもお父さんが何を言っているのかよく分からなかった。お父さんは起き上がって、わたしとセシィズに微笑みかけてくれた。
「おはよう。二人とも早起きなんだね。僕、デボラさんに言われても、寝坊が直らなくて、よく朝から怒られてたっけ……」
「おはよう、お父さん。あの……久しぶりに床で寝たって、何?」
セシィズが珍しく遠慮がちに言う。
「うん。八年間もよそ様の家の庭で雨ざらしだったから。やっぱり自分の家の床はいいよね」
「お父さんって……いつも床で寝てたの?」
「うん」
お父さんは微笑んだまま当たり前のようにうなずく。
「な、なんで!?」
「デボラさんが寝台が狭くなるから、エシィズは床で寝てねって言って……どうかしたの?」
わたしはなんといっていいか分からず、セシィズと顔を見合わせた。
「お父さんってお母さんに苛められてたの?」
「ううん。いつも優しくして貰ってたよ。エシィズって小魚みたいって言ってくれて」
「小魚……?」
「そう。デボラさんって、体にいいから小魚が好きなんだって。好きな小魚に似ている僕のことも好きってことだよね」
お父さんは幸せそうににこにこと笑う。起き上がったとはいっても、お父さんは床に座り込んでいる。毎日掃除して貰っているけれど、できれば寝台にあがってくれないかな。
「二人とも、デボラさんに似て可愛いよね。僕にも少し似てるのかな……はあ、デボラさんに会いたい」
お父さんが涙ぐんだので、わたしとセシィズは仰天してしまった。
「あ、あの、お父さん、泣かないで……お母さん、絶対に見つかるよ。お父さんとわたし、セシィズで力を合わせれば……ね、お父さん」
「うん……ありがとう、セアラ。僕、すぐに泣いちゃう弱虫だけど、頑張るね」
お父さんって、こういう人だったんだ……。わたしの想像では、すごく頼り甲斐があって、凛々しくて、堂々とした人だと思ってたんだけど……。
「二人とも、ご飯食べた?」
「ううん。まだだよ。お父さんとセアラ、三人で食べたかったから」
「そっか。じゃあ、食堂に行こうか」
三人で朝食を摂って、食後、テラスでお茶を飲むことになった。
「ここにデボラさんもいたら最高だったのに……」
またお父さんはめそめそしている。
「大丈夫だよ、お父さん。これから旅して、お母さん見つけよう」
「うん。セシィズは元気なんだね。僕、デボラさんがいないと力が抜けちゃって……」
わたしはお父さんに聞いてみた。
「お父さん、お母さんのこと大好きなんだね」
「うん。デボラさん、僕のことをね、今まではべらせていたしもべの中で一番って言ってくれて……僕、デボラさんの一番のしもべなんだよ。すごいでしょ」
何がすごいのかよく分からない……夫婦なのに、お父さんはお母さんのしもべなの?
「ねえセアラ、しもべって何?」
「えっ……」
無邪気なセシィズの言葉に、わたしは返答に迷った。すると、お父さんがあっさりと答えてしまう。
「しもべっていうのは、手下とか家来とか、そんな意味だよ。デボラさんはね、僕のご主人様なの。すごく素敵なご主人様を持てて、僕とっても幸せなんだよ。……だからこそ、ここでデボラさんに、肩をもみなさいとか、お茶のお代わりを用意しなさいとか、言われたいのに……」
落ち込んでいるようすのお父さんを見て、セシィズは疑問符を頭のまわりに飛ばしていた。
「ご主人様って、お父さんじゃないの?」
そして当然の問いをお父さんに投げかける。
「僕が主人? まさか。そんな、僕が主人なんて威張ったら、デボラさんに嫌われちゃう……」
「そうなの? おばさんとか、うちの主人がって言ってるの聞くけど……」
「他の人は知らないけど、うちではデボラさんがご主人様で、僕がしもべだよ」
お父さんはにこにこ笑顔で言って、お茶を飲む。
「おいしいね」
「うん。おいしいね……」
意味が分からないという顔をしながら、セシィズが答えた。
「セアラもおいしい?」
「う、うん。小鳥さんのおしゃべりも聞こえるし……」
お父さんは魔物さんと仲良しで、動物も好きだったってサンチョおじさんが言ってた。わたしってお父さんに似てるのかな……。そう想像してたから、思いきって言ってみた。すると、お父さんはテラスのほうへ張り出している木の枝にとまっている鳥を見やった。
「鳥、可愛いよね。セアラがいつもお話してくれてうれしいって言ってる」
「お父さん、小鳥さんの言ってること分かるの?」
「うん」
当たり前のように言うお父さんの言葉がうれしかった。そっか、わたしだけじゃないんだ。動物さんの言葉が分かるのって変じゃないかなって思ってたから、安心した。
「いいなー、お父さんってセアラと一緒なんだ。僕は動物の言葉、分からない……」
つまらなさそうにセシィズが言う。するとお父さんはにこにこしたまま言った。
「きっと、セシィズには他の力があるよ。人は一人一人、違う能力を持って生まれるものでしょ」
「そうかな」
「うん」
お父さんはずっと笑っている。ときどき哀しそうに涙ぐむけど、起こしたときからずっと、柔和な笑顔のままでいるような気がした。穏やかで、優しい、包み込むような笑み。
「なんか……」
「何?」
「お父さんって、想像してたのと違うけど……」
呟いて、セシィズはわたしを見た。セシィズが何を考えているのか分かる。同じことを感じたんだ。だから二人、同時に言う。
「笑顔が素敵だね」
お父さんは一瞬不思議そうにしてから、照れたように笑った。
「ありがとう」
言われて、セシィズが身を乗り出す。
「お母さんに、その素敵な笑顔、もう一度見せてあげようね」
「うん」
わたしも言った。
「わたし、今まで一生懸命勉強したの。みんなからわたしには呪文の才能があるって言われてて……自分じゃ分からないけど、お父さんの力になるね」
セシィズも、昔からの希望をお父さんに伝えた。
「僕はお父さんに似て剣術の才能があるって。お父さんにいろいろ教わりたいんだ」
「うん。二人ともありがとう。デボラさんを探す旅に、ついてきてくれるんだね」
お父さんは微笑んだ。
「たいへんなことがいっぱいだと思うけど、三人で頑張ろうね。僕のお母さん……おばあちゃんも絶対助け出したいし。家族四人揃えばきっとなんでもできるよ」
「うん!」
「うん!」
うれしい。想像していたのより、お父さんはうんと素敵だった。
「まだ体が本調子じゃないから、もう少し休んで……そしたら、みんなで旅に出で、デボラさんとおばあちゃん、一緒に見つけようね」
「任せて!」
「頑張ります」
お父さんは変わらず微笑んでいた。
お父さんが月のように微笑む人なら、お母さんは太陽のように笑う人なんじゃないかな。
なんとなく、そう思った。
いかがでしたでしょうか。
久しぶりに「ドラゴンクエスト5」で二次創作をしました。楽しかったです。
最後まで読んでくださって、どうもありがとうございました。
結城蜜柑