阿古屋(歌舞伎)
猿若祭二月大歌舞伎(2025年2月歌舞伎座)の夜の部の第一幕、阿古屋。
玉三郎さんの歌舞伎を見るのはこれで3度目。と言っても、2024年4月の『神田祭』、『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』を一幕見席で見ただけです。
今回も一幕見席で、とチャレンジしたのですが、チケットは12時販売開始で、出遅れた私は週末のチケットゲットできず。。12時5分頃には完売でした。思い切って、わずかに残っていた一階席の花道左側の席を当日購入しました。
猿若祭二月大歌舞伎(歌舞伎座)
2025年2月2日(日)~25日(火)
夜の部 16:30~20:39
一、壇ノ浦兜軍記~阿古屋
初演: 享保17年(1732年) 大阪竹本座 人形浄瑠璃
作者: 文耕堂、長谷川千四
近松門左衛門「出世景清」を踏まえた作。
二、江島生島
初演: 大正2年(1913年)
作: 長谷川時雨
三、人情噺文七元結
初演: 明治35年(1902年)
作: 三遊亭円朝(落語家)の桜井文七の人情噺
■公式サイト
壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)~阿古屋
■あらすじ
平家滅亡後。平家の武将悪七兵衛景清の行方詮議のために引き出されたのは、景清の愛人、遊君阿古屋。景清の所在を知らないという阿古屋に対し、岩永左衛門は拷問にかけようとしますが、詮議の指揮を執る秩父庄司重忠が用意させたのは、琴、三味線、胡弓。言葉に偽りがあれば音色が乱れるはずだと、3曲の演奏を命じる。
3曲を弾き分けながら、傾城の気品と色気、心情を細やかに表現する阿古屋は、女方屈指の大役の1つ。豪華な義太夫狂言の名作。
■歌舞伎初心者の感想
人形振り
まず、「人形振り」の岩永左衛門にびっくり。
人形浄瑠璃の演目が元で、それが歌舞伎で演じられていたためとイヤホンガイドの解説で知りましたが、もしイヤホンガイドを借りていなかったら、何でこの人は人形みたいなへんな動きをするのだろう?と不思議に思ったかもしれません。
黒子が眉毛を動かしたり、セリフは全部義太夫が語ったり、こんな演出が江戸時代からあったのですね。途中で飛び上がったり、動くさまは本当に人形のようでしたが、演者は大変だろうと思います。
人形振りの解説はこちら:
阿古屋登場
玉三郎さんが花道から登場。
衣装は平家ゆかりの蝶を使い、更に孔雀もあしらったもので、装いも江戸と上方の遊女は少し違うそうです。イヤホンガイドでももう少し詳しい解説をされていたのですが、阿古屋のあまりの美しさに見とれてしまい、解説が頭に入りませんでした。
花道横の席で、本当に良かったと思いました。
でも、圧巻だったのはここから。
実際に阿古屋の琴、三味線、胡弓の演奏が始まります。
圧巻の阿古屋の琴、三味線、胡弓
1.琴
琴の名曲「蕗組」
「かげというも月の縁、清しというも月の縁、かげ清き名のみにて うつせど袖に宿らず」
と、蕗組の唱歌の歌詞を景清と自分に例え、景清の行方は知らないとうたいます。
琴の音と三味線の伴奏も息があっていて、聞いていて心地よい感じでした。
そして景清とのなれそめを語る阿古屋。少し恥じらいながら語っているようにも見えるところがまたなんとも美しい。
2.三味線
前漢の成帝の寵愛を失った中国の官女の故事に由来する謡曲『班女』。
三味線は伴奏が加わり、5人のセッションになりますが、アイコンタクトもせずに合わせるのはどんなに大変だろうと思います。阿古屋を演じる玉三郎さんはもちろん、伴奏の皆様方もすごいと思います。
3. 胡弓
「吉野龍田の花紅葉、更科、越路の月雪も夢と冷めてはあともなし」と阿古屋は景清との恋の終わりをうたいます。心を澄ませ耳を傾けた重忠は詮議をやめさせ、阿古屋の心に偽りはないと判断を下します。
胡弓の途中の高音の響きがなんとも言えず、悲しさを表しているようにも聞こえました。
胡弓は三味線を小型にしたような形で、日本の伝統楽器では唯一の、弓で弦をこすって演奏する楽器で、中国の二胡とは違うものだとイヤホンガイドの解説で初めて知りました。
俎板帯(まないたおび)というそうですが、あの帯をしたまま、実際に琴、三味線、胡弓を演奏するだけでなく、その時の阿古屋の心情も表現する大変難しい役で、玉三郎さんしかできないと言われているのも納得です(時蔵さん、児太郎さんに引き継がれているようですが)。
玉三郎さんの阿古屋、あと何回見られるかわかりませんが、機会があればぜひまた見てみたいと思います。


