今回は作家の石田衣良さんへ賞状を贈らせて頂きました。


石田衣良さんと言えば、あのIWGP(池袋ウエストゲートパーク)などの
いくつもの印象深い作品で知られている小説家です。
各メディアにも多く出演し、その知的スマートさで
多くのフォロワーを集めている方です。
そして、特に三大都市圏に住んでいる人間にとって、
もっとも馴染み深い仕事と言えば、リクルートが発行している「R25」という、
若者男子向けの0円情報誌でのエッセイ連載
「空は、今日も、青いか?(以下、空は)」でしょう。
これは、日頃窮屈な立ち位置で生きる事を強いられる
現在の若者男子に向けて石田さんが送るメッセージです。
R25という雑誌は0円雑誌の最高傑作とも言えるほどの
素晴らしい情報誌であり、若者が生きるにおいて外せないトピックを
若者が楽しくラクラク消化しやすいように書いています。
まさに、電車の中でサクサク読み進めるにピッタリな冊子。
そしてその中でピッタリ溶け込みつつ、
ある種異彩を放っているエッセイこそが、
巻末に陣取っている、石田さんの連載「空は」なのです。

いつの時代も若者は順風満帆で生きている
人間ばかりでは無かったとは思いますが、
今の若者もそれは例外ではありません。
ましてや、殆どの分野で大手が支配している状況になり、
あらゆる新規参入がどんどん難しくなっている昨今。
さらに、中国などの新興国の台頭により、
日本を含む先進国の退潮が目立っていると言われる今。
さらに、高齢化社会が行く所まで行きつき、
人口比で劣勢な若者の意見がどんどん通りづらくなっている今。
若者は発言権を失い、そしてその若者同士でもいがみ合い、
日々の生活に疲弊し、若者の自殺率もうなぎ登りになっていると言われる今。
とにかく若者は生きる事に疲れています。
そんな若者にとって、石田さんの「空は」は、
ひと駅の間に読めばホッとする素晴らしいものなのです。
まず石田さんの「空は」には、上から目線がありません。
大人が子どもと話す際、大人がしゃがんで子供の目線になって話す事がありますが、
まさにそのような形で、こちらの立場に立って話を展開して頂いています。
そして「共感」があります。
石田さんによる文中の「辛いよね」「窮屈だろう」という呼びかけは、
思わず「そうです!」と相槌を打ってしまうように的確で、
「わかってくれてありがとうございます…」と
声にならない声でお礼を言いたい程の気持ちになります。
そして、明快に「こうすれば良い」という矢印を最後に示してくれます。
それは、聞いていて疲れるようなものでは無く、
さらに、エンタメ系の人がよく言う「無責任な気休めフレーズ」に終始せず、
「とにかく幸せになろう」という事に帰結しており、
こちらも「幸せになる為なら頑張れる」というモチベーションが
自然と湧いてくるような文章なのです。
そして石田さんの文章を見ていて、一番嬉しいのが
「若者の恋愛」に言及してくれている事です。

今の若者の恋愛は、かなり鬱屈していて、屈折しています。
本当は恋愛したいのに、世間体や社会的な立場もあり、
なかなか踏み切れない。私もそうです。
「恋愛をするヒマが無い」
「不安定な仕事に就いている」
「収入を言ったら、引かれてしまう」
など、「恋愛できない」理由ばかりが頭によぎってしまい、
恋愛への一歩が全く踏み出せません。
周りを見ても、もう恋愛を諦めている者が大勢居ます。
そして、私も含めて「自分は恋愛が好きじゃない。異性が好きじゃないんだ。
元々好きじゃなかったんだ」と自分を騙し、
堅固な現実に生きようとしている者ばかりです。
それに石田さんは真っ向から向き合ってくれています。
今の若者男性が、恋愛からとても離れた生活を送り、
各々が恋愛に興味を無くしたとアンケートに答えている中。
そんな中、こちらの気持ちを見越した発言をしてくれています。
「確かに若い男性は草食化している」という
身近な女性の声も交えた上で、放たれたこのメッセージ。
「それでも、恋愛が、したいんでしょう?」
そして、こうも言ってくれています。
「生きていて、ツラい気持ちばかりなのはよくわかる。
恋愛に興味を失ってしまうのも当たり前だと思う。
ツラいのだから。でも、恋愛して、幸せになろう」
僕らの世代は、恐らく一度も恋愛らしい恋愛をせず
このまま死んでいく人間が大勢居ると思います。
僕もたぶんそうだと思います。
しかし、石田さんの言葉は、僕らの心に深く刺さりました。
そして辛い人生を送る上で、心の中で何度も唱えた
「女なんかいらない!」というフレーズを、
言う事をちょっと止めてみようかな…と思える程なのです。

石田さんの言葉で
「俺も、ちょっと恋愛してみようかな…」
と思い、実際に彼女を作った人も居るのでは無いでしょうか。
そして結婚し、子供を作った人も居ると思います。
そして少子化にほんの少しでも歯止めをかける
一つの原動力にもなっているのでは無いでしょうか。
そして恋愛以外でも、貫かれているメッセージは一つです。
「幸せになろう、幸せに生きよう、
幸せに今すぐなれないのであれば、
せめて幸せに近づこう」
窮屈な中で仕事をしていて、恋愛を諦め、何かを諦め、
窮屈な中で生きており、時に「窮屈だから、いっそ人生をやめてしまおうか…」
とまで思ってしまう僕らに対して、
「そうそう、そうなんだよ!」と思わず手を叩いてしまうような
エッセイを長らく書いて頂いている石田さん。
いつまでも連載が続いてくれる事を願ってやみません。
そんな石田さんへ「若者への希望の一滴賞」を
贈らせて頂きました。
石田さん!石田さんから貰った、
「幸せになっても良い」というメッセージに勇気を貰いました。
僕は幸せになる為に、もっと胸を張って
人生を意気揚々と生きようと思います!