第四番 如意山 了徳院

 

 福島の飲食街を抜けた先に、聖天さんは静かに待っていました

 大阪環状線・福島駅で降りました。ここ数年で一気に注目を集めた福島の飲食街は、昼間でも活気があります。こだわりの店が軒を連ねる路地を抜けていくと、やがて街の雰囲気がすっと変わります。飲食店が途切れ、静かな住宅街に入ります。第三番・和光寺の元禄の町並みとはまた異なる、生活の匂いが漂う一角です。了徳院は、そんな住宅街の中にありました。

 

聖天さんとは何か

 了徳院は「福島聖天」の名で地域に親しまれてきたお寺です。

 

 聖天とは、歓喜天のこと。象頭人身の姿で表されるこの尊格は、インド由来の神が仏教に取り込まれたものです。財運・縁結び・除災などに霊験あらたかとされ、古来より篤い信仰を集めてきました。聖天を本尊とする寺は全国に存在しますが、その数は多くありません。

 

 聖天信仰には独特の作法があります。供物として「大根と巾着」を供えるのが習わしで、大根は煩悩を清める意味、巾着は財宝を表すとされています。境内にこの紋様を見つけたとき、聖天信仰の世界に少し踏み込めた気がしました。

 

 

境内にて

 住宅街の一角にこれほど落ち着いた空間があるとは、外からは想像がつきません。

 

 了徳院の境内は、こぢんまりとしながらも手入れが行き届いていました。地域の人々に「福島聖天」として長く慕われてきたお寺の、静かな矜持のようなものを感じました。巡礼者よりも、近所の方が手を合わせに来る場所。そういうお寺が、摂津霊場には多いのです。

 

 了徳院の境内には歓喜天をまつった本堂を中心に、不動明王、弘法大師、地蔵、観音などをまつった仏堂があり、弁財天をまつった池も印象的です。

 

 

 第一番から四番まで歩いて、ひとつのことに気づき始めていました。摂津国八十八カ所の大阪市内エリアは、観光寺院の巡礼ではありません。街の歴史に寄り添い、地域の人々の日常信仰に根ざしたお寺をたどる旅です。その実感が、福島の住宅街でいっそう強くなりました。

 

 

【ひとことアドバイス】

  • 福島駅から飲食街を抜けて住宅街へ。道標はほとんどありませんので、地図アプリを頼りに進むのが確実です。

  • 聖天を祀るお寺には独自の参拝作法がある場合も多いです。境内の案内をよく確認してから参拝しましょう。

  • 福島エリアは近年飲食店の開拓が著しいエリアです。参拝後に一軒立ち寄るのも、現代の巡礼の楽しみ方のひとつです。