久しぶりに、泣いて、笑えて、生きていることの素晴らしさを実感させてくれる映画を見ました。『あまろっく』(中村和宏監督 2024年)。

 

 

 

 

 舞台は兵庫県尼崎市。尼崎市は兵庫県南東隅にある市で、大阪湾の北縁に位置するいわゆるゼロメートル地帯。古来、高潮による浸水被害などが多い地域で、浸水被害をふせぐために設けられた防潮用閘門が「あまろっく」。船が通過できる大きな施設で、映画の中に象徴のように登場します。

 

 自分は我が家のあまろっくだといいながら、いつも能天気な父と対照的に、がむしゃらにエリート街道をひた走る娘。でも彼女は39歳で理不尽なリストラに遭い、実家でニートのような暮らしをしています。
 

 ある日、65歳の父が再婚相手を連れてきますがその相手はなんと20歳でした!

 配役は39歳の娘優子に江口のりこ、父の再婚相手を中条あやみが、あまろっくのように家族を見守る父を笑福亭鶴瓶が演じています。

 

 40歳以上も年下の女性との父の再婚という事態で、娘は反発し、家族関係は揺らぎます。そんな中、それぞれの人物が背負ってきた意外に思い過去も明らかに。そして対立と反発を経ながら、3人は絆を深めます。

 

 ともかく良い人生だと思えるかどうかは、前向きに生きるかどうだと気付かせてくれます。親父の「人生に起こることは何でも楽しまな」「食うて寝たらたいがいのことはなんとかなる」という台詞は印象的です。一見お気楽に聞こえますが、映画でも描かれているように、阪神・淡路大震災の修羅場をくぐり抜けた彼の言葉だと思うと重みが違います。鶴瓶が演じる父は町工場の社長でもあります。一日ぼうっとしているように見えますが、人をつなぐ安心感は抜群。周囲を安心させられる存在であることは重要ですね。

 

 映画では中小企業の経営の難しさや人材難、女性の生きづらさや孤独なども描いています。まるで山田洋次監督の映画のように笑いと涙に奥深さを感じさせる味わいの映画です。

 

 その他の俳優陣も豪華です。若き日の父を松尾諭、早くに亡くなった優子の母を中村ゆり、町工場の職人を佐川満男が演じるなど関西出身の俳優陣で固め、関西弁全開のパワーで圧倒してくれます。