最近、思うことがあります。人というのはひとりで生きているものではない。人とのご縁によって、良くも悪くもなる。どう人とつながるかが大事。ご縁をいただくだけではなく、自らどう人を生かすかが人の生きる道だと。

 

 そんなことを考えさせる映画を見ました。『うさぎのおやこ』。映画『ひとくず』(2020年)で児童虐待を主題にしながら、人と人のつながりが人を生かすことを説いた上西雄大監督。

 

 

 その後も、『西成ゴローの四億円』『ヌーのコインロッカーは使用禁止』など、社会で日の当たらない存在に焦点を当てた注目作が続きます。最新作『うさぎのおやこ』は、「ミラノ国際映画祭2023」で、外国語長編映画最優秀作品賞、外国語長編映画主演女優賞(徳竹未夏・清水裕芽)を受賞したかなりの作品です。

 

 社会の中で忘れられたようになっている存在に知的障害や発達障害、精神疾患者などがあります。誰でも幸せに生きることができるのが本当の社会だと思いますが、残念ながら日本はまだそうはなっていません。社会的弱者の思い、それを取り巻く闇や不良勢力がある一方、彼らを守り救おうとする善意の存在もあります。そして人と人との心の交流が人を救うことを示しています。

 

 軽度の知的障害があり、年齢以上に小柄な娘と、夫を亡くし、娘を向き合おうとしたが精神障害者になった母。母子共に障害者という悲しい状況で、孤立して荒れた生活を送るなか、良き人との出逢いによって光が差し始めます。

 

 主演は、『ひとくず』で主人公カネマサの母を演じるなど10ANTS(テンアンツ)作品の看板女優の徳竹未夏、そしてテンアンツで大抜擢の清水裕芽のW主演です。共演として、上西監督は勿論、『ひとくず』で娘を虐待する母親役の演技で注目された古川藍や、華村あすか、青木玄徳、そして萩野崇らが重要な役割を務めています。

 

 この映画を見て、困った隣人に手を差し伸べることの重要性とともに、自分もいろいろな方のご縁で生かされてきたことを思い出しました。自分の能力や思いで周囲も明るく楽しくして、今まで生きてきたことのご恩返しをしたいですね。