なんだ今頃見たのかと言われそうですが、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(2023年)を劇場で鑑賞しました。主として戦中時期の日本を舞台にしています。これをジプリがどう描くのか興味津々でみました。ジプリの雰囲気を保ちながら、さらに精神の深い部分に踏み込んでいる印象を受けました。

 

 

 時代は戦中。劇中でサイパン島守備隊玉砕の話題が出てくることから1948年が物語の起点になっています。

 

 主人公の眞人は空襲で母親を失います。父とともに東京を離れ、「青鷺屋敷」という広大で豪華な屋敷に引っ越します。そこで二人を待っていたのは、亡き母の妹で新しい母となる夏子でした。夏子は非常に気立てのいい女性ですが、亡き母に忘れがたい思いをもつ眞人は何かなじめないものを感じます。転校先の学校でも新しい友達になじめず孤独な毎日を送ります。そんな彼の前に現れたのが不思議なアオサギ。森の中へ消えた夏子を追って森の中へ行くと、アオサギに導かれて不思議な世界に迷い込みます。彼の行方を阻もうとする障害がある一方、彼をより深い世界へ導く不思議な存在が登場。過去から現在に至るいろいろな情景も目の前に現れます。

 

 これは眞人をより高い成長に導く潜在意識や集合無意識への旅だと思いました。眞人はこの不思議な旅を通して、母親の過去の姿や幼き自分の姿を発見することになります。過去を見つめ直して癒やすことで、自分が今、生きていることの意義を見つけます。そして母との別れや叔母が新しい母になったことの意義も認識し、精神的成長を遂げます。

 

 眞人が過去も含めて自己受容し、精神的成長を遂げ、さらに一歩踏み出すための物語だったと思います。人生には楽しいことだけではなく辛いこともあります。でもそれらを全部含めて」、自己成長がある、人生無駄はないと語っている気がします。

 

 あの時代の風俗もよく描けているように思いましたが、暗い時代にもかかわらず、少年が生き方に希望を持てるようになっているのは良かったです。