　新年度が始まりましたね。社会がまた慌ただしく動き若い人達が社会人としての生活が始まりました。蛹はこの桜が咲く季節の前後になりますと、風に舞いながら散っていく花びらに命の儚さをつい重ねてしまいます。

　どんな命もこの世界をそれぞれの知覚で受け止め、与えられた場所で生きるという体験をし役割を終えると再び自然界へと回帰していきます。

　実は、小さい頃から死を恐れて来ました。自分が無くなるというのは恐怖そのものでしたし、なぜこのような目に合わなければいけないのか自問自答し続け、本が読めるぐらい成長すると先人達が残した言葉に答えを見つけようとしてきました。例えば仏陀が四苦とした生病老死という言葉にも出会いました。

　この衝動的でコントロールすることができない死の恐怖は、ある出会いや体験を通して緩和されていきました。

　その体験とは肉親の死であったり、大変親しくお付き合いした人のあまりにも短い人生でした。

　現世ではもう会うことができないという苦しみは時間と共に、自分もこの世を去れば、あの人たちに再会できるというような想念もでてきましたし、かつてその人を構成していた物質、例えば水分子が川を海を巡り空へと帰り、再び雨となって私達の元にくる。なみだという言葉の漢字は、水を意味するさんずいに戻るとして涙となりますから、古代の人は水の循環の中に物事のあわれや悲しさを感じていたのかもしませんね。そんな想像をするなら、遠くに行ってしまったと思った人達がなんだかいつも一緒にいるような考えさえ抱くようにもなりました。

　それから歳月が過ぎ

　二年前、京都で弥勒菩薩像と対話した時、蛹の心の中に今でもこの世を去っていった大切な人達がかたときも離れずに一緒にいてくれていることを身体感覚として受け止めることができました。理屈や理論ではなく身体で理解できたことは、蛹にとって大変衝撃的で深い感動を呼び起こしました。

　死があるからこそ、私達は生きることに意味や価値を見出せれるのかもしれない。死から逃れられない命を生きるとは、大変素晴らしい体験ではないでしょうか。もし命に終わりがないとしたら、永遠にこの生の苦しみを受け続けざる得ません。それはもしかしたら死が無を意味するよりも救いのない無限地獄とかわらないかもしれない。

　そして、もし命を与えられなかったら味わうことも知ることも触れることすらもできないこの世界のあらゆることに接しられる可能性に開かれているという事実。この事実の不思議さ、奇妙さ、あり得なさを感じることができるのなら、日常生活でおきる様々な心を乱す出来事でさえも尊く感じるかもしれません。

　死という終わりがあるからこそ、私達はこれまでの人類が築いてきた文化を理解し受け継いでいけるのでしょうか。その意味で、FFXIという21世紀初頭に誕生した電子空間でコミュニケーションをする遊びもまた、人類が蓄積してきた神話や伝承を再構築して体験し文化を伝承する行為と言えるかもしれません。私達は大きく想像もできないほど長い時間が経過している地球という星で刻まれ続けてきた人類史という大河に流れる一粒の水なのでしょうね。その一粒の水は、生まれる前の世界から来て、この世を去りそして再び涙のように戻ってくるのでしょうか。

　ヴァナディールという「体験」は、私達に何かをもたらして来たのでしょう。そして私達はそこから何かを理解し、この人生と死を受け入れることをどこかで手助けしてくれているのかもしれません。

　答えはきっとプレイヤーの数だけ無数に存在するのでしょうね。このような人生と死がもたらす様々な問いを自分がいかようにでも自由に答えを決めることができる。これもまた今日蛹が見つけたヴァナディールという「体験」がもたらすメタ的な答えの一つなのかもしれません。

「咲き誇れ　桜のように」

追記

・タイトル変更。（2024年4月1日）

・加筆と訂正。（2024年4月1日、2日、3日、9日）

随想「人生に終わりがあるからこそ」。