1947年6月24日。アメリカ、ワシントン州。
実業家ケネス・アーノルドは、レーニア山付近を自家用機で飛行中、時速2,700kmで移動する9つの光る物体を目撃した。彼はそれを「皿が水面を跳ねるような動き」と表現し、メディアはこれを「空飛ぶ円盤」と名付けた。
以来、人類は空を見上げるたびに問い続けている。
あれは何だったのか。
答えは、すでにある。
ただし、それを知る者は限られている。
アーノルド事件の発生は想定内。
しかし、メディアの反応速度は想定を超えた。
プロトコルBへ移行。
UFO――Unidentified Flying Object。未確認飛行物体。天文学者J・アレン・ハイネックは、これを6段階に分類した。夜間発光体、白昼円盤体、レーダー目視、そして接近遭遇の第1種から第4種まで。第4種は、いわゆるアブダクション。誘拐だ。
1961年、ニューハンプシャー州。バーニーとベティのヒル夫妻は、帰宅途中に2時間の記憶空白を経験した。催眠療法によって引き出された記憶には、船内での身体検査の詳細が含まれていた。1967年のアンドレアソン事件も同様だ。催眠下で語られた記憶は、互いに面識のない証言者の間で、奇妙な一致を見せる。
偶然の一致ではない。
これは、統制された記憶だ。
1986年11月17日。日本航空1628便。アンカレッジ上空で、ボーイング747貨物機のクルーは、巨大な光る物体に追尾された。機長・寺内謙寿は、その大きさを「航空母艦2隻分」と証言した。FAA(連邦航空局)は調査記録を公開したが、結論は出されなかった。
2004年11月14日。米海軍の戦闘機パイロット、デイヴィッド・フレイバー中佐は、サンディエゴ沖で白い楕円形の物体を目撃した。通称TicTac。物体は既知のいかなる航空技術をも凌駕する機動を見せた。2020年、米国防総省はこの映像を正式に公開した。日本の防衛省も同年、自衛隊によるUAP(未確認空中現象)対応手順の策定を開始した。
公開されたのは、公開しても問題のないものだけだ。
問題のあるものは、我々が保管している。
宇宙飛行士エドガー・ミッチェルは、月面を歩いた6人目の人間だ。彼は地球帰還後、UFOの存在を公言し続けた。バズ・オルドリンも、アポロ11号の飛行中に不明な光を目撃したと証言している。ゴードン・クーパーは、エドワーズ空軍基地で撮影されたUFO映像の存在を議会で訴えた。カナダの元国防大臣ポール・ヘリヤーは公の場で「少なくとも4種の異星人が地球を訪問している」と発言した。
彼らは狂人か。答えはNoだ。
彼らは、見てしまった者たちだ。
そして、語ることを許された範囲で語った者たちだ。
タイムマシン説、地球外生物説、異次元説。懐疑論者は気象現象や軍の秘密兵器、あるいは集団的な虚偽記憶で説明しようとする。どの説も、ある部分では正しい。だが、どの説も全体を説明できない。
なぜなら、全体を知る者がいないからだ。
全体を知る者は、語らない。
人類は空を見上げて問う。「あれは何だ」と。
我々は空を見上げない。
我々は、空の向こう側にいるからだ。
1942年のロサンゼルス空襲事件。真珠湾攻撃からわずか3ヶ月後、ロサンゼルス上空に未確認の物体が出現し、米陸軍は1,400発以上の対空砲弾を撃ち込んだ。撃墜された機体はゼロ。敵国の航空機という説明は、後に否定された。
何もなかったのか。
いや、あった。
ただし、それは「敵」ではなかった。
未確認飛行物体という呼称そのものが、巧みな設計だ。「未確認」という接頭辞が、永遠に答えを保留させる。確認されたら、それはもうUFOではない。確認されない限り、議論は続く。議論が続く限り、真実は埋もれる。
完璧な隠蔽とは、隠すことではない。
永遠に議論させることだ。