それでもダメなら、横にずらせ。



それでもダメなら、もういい。壊せ。




隊長 「突入-!!」




隊長の号令により、扉がブチ破られた。


いや、そもそもどうやっても開かないのだから、アレは扉ではなくただの壁だったのだろう。


突入という言葉に相応しい光景が眼前に広がる。


そしてきっと、背後の者から見れば私もその光景の一部なのだろう。


みんなでやっている、というノンキなフレーズを唐突に思い浮かべる。


しかしそんな平和的なフレーズとは裏腹に、この体は、声帯は、熱く叫んでいる。


よく漫画や小説では「うおおおお」とか「わああああ」と表現されるが、


実際に私の口からあふれ出た叫びは濁音のついた「あ」の羅列でしかなかった。



扉のような壁をブチ破って、わずかに十五秒後。


腰を抜かしたターゲットの背中が見えた。私達「光景」の全てがそれを見た。それを包んだ。


誰しもが銃を抱えていて、けれども実際に発砲するのは最前列の者のみ。


後続の者が撃ったら、そりゃ確実にブルー・オン・ブルー(誤射)だ。


ゲームの世界ではフレンドファイアと呼ばれるらしいが、ここではそんな言葉使えるわけがない。


この場に、友達なんて一人もいない。というかそもそも人間がいない。


ここにいるのは役割を演じるロボットだけだ。


兵士とターゲット。撃つ側と撃たれる側。生者と死者。


そんな思考が刹那で処理された。


これはきっと現実逃避なのだろう。広がる砂漠の、一滴の水。


その必要不可欠なはずの、けれどもここにおいては”異物”なそれは一瞬で蒸発する。


突入の際に叫んだ通りだ。私達は冷静ではない。望まぬ熱狂を強いられて、それに酔っているだけ。


――――発砲音。


バラ撒かれる銃弾。一個何セントだろうか。


ただの一発で十分なそれは、確実性を上げるために数百放たれた。


まさに出血大サービス。ターゲットは命乞いをする暇すら与えられず、その全てを終えた。



隊長 「……クリア!」



隊長はそう叫び、すかさず手信号で私達に残りの部屋のクリアリングを命じた。


我に返るよりも先にその言葉に従い、銃口を別方向に向ける。


ターゲットの抹殺は終了した。しかしミッションはまだ終わっていない。


ホームに帰るまでが、ミッションなのだ。


扉の先に腹に爆弾を巻き付けたバカがいるかもしれない。だから緊張感は未だ高まるばかりだ。


目の前の扉を蹴り破ろうと、私は片足を上げた。


踏み抜くように、扉の先をイメージして、それを振り下ろす。


だがバンッ! という派手な音こそ立ったが、扉は強固だった。


木製のように見えるが……まさか、防護壁?



わたし 「隊長! このドアは破壊不能のようです!」


隊長  「壊してダメなら押してみろ! ダメなら引け! それでもダメなら――――!」




隊長は銃を投げ捨て、マイクを握りしめた。



隊長 「晴れ渡る公園で 不意に僕の手を握りかえした」



わたしもそれにならい、銃を下ろした。



隊長 「その小さな手で僕の身の丈を 一瞬で包んでしまう」


隊員A 「君がくれた あふれるほどの幸せと 真っ直ぐな愛を」


隊員B 「与えられてるこの時間のなかで どれだけ――――」


わたし 「返せるだろう~♪」



全隊員 『帰ろうか もう帰ろうよ あかね色に染まる道を 手をつないで帰ろうか 世界に一つだけ』


ターゲット 「マイ・スゥィート・ホーーーム!!」




全ての銃口が、死んだふりをしていたターゲットに向けられた。


――――BANG!






こんかいのてーま。


思い付いた言葉を、意味も無く深いところに持っていって、あらぬ方向にパスをする。




…………また来週!!!