というわけで後編です。
顔面が引きつっている僕に対して、お客様はニッコリと笑いました。
お客様 「これを貸してあげよう」
僕 「じ、数珠ですか」
客 「修行僧と言えば、コレだろ?」
僕 「うん……そう、ですね…………雰囲気出ますね…………」
客 「で、いつまで服を着てるのかな?」
僕 「ええ……まぁ…………いつかは脱がなきゃいけないですよね……」
ところでこの滝、入っても大丈夫なんでしょうか。
条例的にも、安全性的にも、あと僕の健康的にも。
客 「大丈夫だ! ほら見ろ、修行の舘もあるから! みんなここで修行してるから!」
僕 「……この建物、そういう建物だったんですか」
画像の左側の、木造建築物です。
ぶっちゃけ最初は廃屋かと思いました。
でも看板とかちゃんとあって……本当に使われているっぽくて……。
客 「いいから、はよ入れ」
僕 「……へい」
まず上着を脱ぎます。寒いです。
ズボンも脱ぎます。寒いです。
海パンを装備します。寒いです。
ビーチサンダルと海パン。
まるでサマーボーイな立ち姿。
その手には数珠。
向かう先は海ではなく、滝。
まずは、足先から入水。
僕 「ちべたぁぁぁぁぁぁいい!!!!」
客 「早く行けよ!www」
滝。
ああ滝よ。寒いよ。
間近で見上げるそれは、やはり高くて。
なんか音とか凄くて。
あと雨降ってて、でもそれ以上に飛び散る水滴がもう大変なことになってて。
思いましたね。
ああ、躊躇ったらダメだこれ。勢いで行かないと。
あと本当のこと言うと、ちょっとテンション上がってきたわ。
だって滝やぞ。
人生初だぜ。
これ美味しいわー。
オラ、わくわくしてきたぞ!
僕 「いきまーーす!!」
僕 「あばばばばばばばば!!!」
僕 「あばばばばばばばばばば!!!」
滝に打たれている時の思考。
僕 (なんじゃこりゃ! 痛い! すごく痛い! 水圧が痛い!)
僕 (というか、まともに立つのも難しくね!?)
僕 (サンダル流されたぁぁぁぁぁぁ!!)
僕 (ちょwww耐えきれんwwww)
押し流されるように、僕は滝壺に倒れ込みました。
そりゃもう無様に。滑稽に。
客 「wwwwwwwww」
僕 「へっ…………燃えてきたぜ……!!」
僕 (うおおおおお!! 再突入!!)
僕 (やっぱ耐えきれねぇぇぇぇぇ!! wwww)
僕 (しかし……)
僕 (耐えてみせらぁぁぁぁぁぁ!!)
サンダルが無いので、素足で足下の砂を踏み込みます。
おや? なんだか具合がいい。
僕 (あ、コツが分かった。こうやって踏ん張れば……おお、楽じゃないけど、いける)
ちょっとだけ興奮が薄れて、冷静さが帰ってくる。
僕 (しかし、すごいなこれ。水の暴力だな)
僕 (うーん。両手を広げてみると…………あ、ダメだwww バランス崩れるwww)
僕 (あー。なんか…………水温になれてきたのかなぁ……なんだか、温かくなってきたような…………)
僕 「――――――――。」
僕 (…………………………って、いま、無我の境地を垣間見たような気がするwwwwww)
これが修行か!
そうか、苦行ってこういうものだったのか!
水の暴力。
その状態から脱出するために加速する脳。
しかし、いくら待っても水圧というストレスは取り除かれない。
なので危機への対応として、脳は意識ではなく身体の感覚を増幅させて、やがてマヒさせる。
そして低下したままの意識。
そこにいたのは、じんわりとした外的ストレスを処理するだけの身体。
プチ無我の境地。
僕 「でもやっぱり限界!!」
滝に押し流されて、僕は再び滝壺にドーン!!
客 「どwwうwwwだっwwwたwww」
僕 「楽しいですwwww」
水から上がると、身体が本当に温かくなってました。
芯が温かいのです。不思議です。
これは健康にもよろしいですね。
でもいま冷静に考えると、たんに冷えた肌が内側の温かさを意識しただけなのかなぁ、とか。
まぁでも、その時は本当に「温かい」って思ったんですよね。
僕 「いや、良い経験になりました」
客 「うむ。では帰ろう」
着替えていると、老夫婦が滝の見物に訪れてきて。
僕は 「きゃっ」 みたいな感じになって。
老夫婦は苦笑い。
どうして滝に打たれるなんて修行が考案されたのか、その理由がちょっと分かった一日でした。
皆様も機会が有れば、是非。
でも、そんな機会なんて滅多にないでしょうから……良かったら自ら望んで、行ってみてください。
……ちなみに、夏の話しです!!
今の時期に行ったらブッ倒れるわ!!!
おわり!!!
お客様 「冬にもう一回来ような!!」
僕 「いやああああああああああああああ!!」
おわれ!!



