いままで数多くの小説を読みましたが、これだ! という 一行はあまりありません。
瞬間的に出せるのは、やっぱり森博嗣先生の小説から。
『西之園萌絵は、両手を顔の横で広げてみせた。人類は十進法を採用しました、というジェスチャではない』
森博嗣 : まどろみ消去 「誰もいなくなった」 より抜粋。
客観的に見ると「 ? 」 ってなりそうな一行ですが、僕はこのジョークがいたく気に入りました。
ツッコミどころが満載なのに、キャラクターがとっているポーズが簡単に想像出来る。
いや「両手を顔の横で広げてみせた」という描写だけでも十分なのだけど、その直後にくるジョークが前文を強烈に彩っている。
一瞬「え?」ってなって、想像して「なるほど」となり、そして最後には
僕 「すげぇwww なんでこんなの書けるんだwww」
笑いが込み上げてきます。
ただのポーズに、十進法なんて単語を絡めるその発想力。
たぶん直感的に、流れるように書いたんだと思われますが(こんなの狙って書ける人類、僕はいないと思う)
上手すぎる。
模倣は無理だし、目標にするには遠すぎるし高すぎる。
僕は別ルートで攻めるしかないけど、憧れは止まらない。
その直前のページにもこんなジョークが。
ロケーションは、アップダウンの激しい山道……を想像してください。
フカシが弱々しく言う。「もう、なんだか息苦しくなってきた」
牧野ヨーコは、突然フカシの左手を握った。「大丈夫ですよ、私に任せて下さい」
いったい、何を任せるというのか。
自分の生命活動を肩代わりしてくれるとでもいうのだろうか
なんと切れ味のあるツッコミでしょうか……。
日本で一番有名な「小説の冒頭」といえば
国境の長いトンネルを抜けると、そこは 雪国であった。
でしょう。 川端康成:雪国 です。
これまた上手い。
この一文にはとても豊富なイメージ要素が込められているように見受けられます。
長旅だったのかな。移動手段はバスかな。いきなり雪が出てきたんだな。季節はまだ秋か初冬かな。
いくつかは真実ではないにせよ、読者にイメージを呼び起こさせるという意味では大成功です。
そして映像的にも簡単に情景が思い起こせます。
いきなり、雪。
その感動というか、ちょっとしたイリュージョンめいた光景。
素晴らしい。
肝心の「雪国」読んだことないけど。(色々とごめんなさい)
この記事を通して僕が何を言いたいのかと言うと
僕はそういう一文を書けるだろうか? というちょっとした疑問です。
さて、自分で書いた小説は無数にありますが……心に残ってる一文って、あるかな?
まっさきに浮かんだのは 「パンツ見せろ 」 でした。
ああ、うん。そうね。でもこれ小説じゃなくて「ブログ記事」だね。
しかも僕のアイディアじゃないね。 くたばったほうがいいね。
あとは……
「生きてるんじゃなくて、現在進行形で死んでるだけ」
うっわ、暗…………。
それと……
「物事の本質はいつだってシンプルだ。 だから愛を語る上で重要なのは、それをどう飾るか」
恋愛なんて何年もしてない僕が語っちゃってますよーーー!!! 誰か助けてーー!!
なんか恥ずかしくなってきたんで、この辺にしておきます。
っていうか、なんだこのプチ自画自賛。しかも自賛として成立してねぇ。
心に残る小説。
心に残る一文。
いつかあなたの心に届きますように、なんて考えてるわけじゃないけれど。
そういう文章が書きたいと思うのは、本当のこと。
そろそろ十月で年末に向けて忙しくなったり寒くなったりするけれど。
いつか見た夢は、今もなおその時から変わってないので、引き続き頑張ります。
頑張るだけでいい。
言葉にすると、なんて簡単なことでしょう。
ファイトだ。