王家衛的恋愛  | アジア読書

王家衛的恋愛 

北小路 隆志
王家衛(ウォン・カーウァイ)的恋愛
読んでいて「映画は理屈じゃねえんだよ」と叫びたくなった。この映画批評ってヤツはかつて私も大学で専攻したことがあるシロモノなのだが、当時から感じていた微妙な違和感は、トシをとるにつれ何やらアレルギーと化してしまった。その学校の講義には某監督が来ていたのだが、議論を呼んだその監督作品の某シーンについて「あれはなーんにも考えずに撮ったの。たぶん、どの監督も批評家みたいな難しいこと考えて撮ったりはしないよ」とか言ってたのが印象に残っている。まあ批評は一分野として作品と切り離して考えればそれで成立するのだが、映画で知りたいのはツマランかオモシロイかってことなのに、監督でもない人間の哲学なんか読まされるのも辛いところだ。そんな訳で私は映画批評も苦手だし、王家衛作品で好きなのは『花様年華』だけだし、恋愛批評はもっと苦手なので、もうグダグダ言ってくれるなという感じ。もっとも香港で暮らしていた時、『恋する惑星』に女の子を誘ったら一発で断られたというトラウマも確かにあるのだが、自分の名誉の為に言わせてもらうと、この人の映画は香港人にはさっぱり人気がない。まあ日本でも、小津とか黒沢なんかの今日の評価は当時の評価とはまた違うだろう。そのうち重慶マンションも九龍城砦みたいに取り壊されるだろうから、そしたら香港人も彼の作品の価値に気が付くことになるのではないか。その日は2046年まで待たないと来ないかもしれないが。