同じ釜の飯 | アジア読書

同じ釜の飯

中野 嘉子, 王 向華
同じ釜の飯 ナショナル炊飯器は人口680万の香港でなぜ800万台売れたか
こ れもチェックしていた本だったのだが、タイトルを間違って(なぜか『日常の茶飯』と記憶していた)覚えていた為ようやく読めた。香港で松下の代理店を長年 務めてきた信興グループの蒙民偉を主人公に、香港における日本製家電製品の浸透の歩みを描いたもので、元々研究書であった様だが、物語形式に書き直されて いるので、一般の人も非常に面白く読めるのではないかと思う。特にまだまだ貧しかった頃の香港の話は大変興味深く、戦後間もない時期に日本製品を受け入れ た経験が、その後の香港人の対日感情にも影響しているという観点には感ずるものがある。戦後生まれの世代に限って言えば、香港人が家電やテレビ番組など日 本人と「同じ釜の飯」で育った同一体験が、韓国や大陸の様な日本人を得体の知れない他者とする単純な反日感情とは異なる日本像を彼等に与えたのかもしれな い。また、重慶大厦に松下がショールームを開いたとか、70年代後期の大陸里帰り解禁でのお土産持ち込みの苦労なども興味深い。その関連で松下は香港と中 国のシステムがツマミ一つで変換できるテレビを作ったというのは私もせっせと大陸に「お土産」を運んでいた時代に、こんな便利なものがあったのかと驚いた 記憶があるので懐かしい。ついでに共著の片割れである王向華という人も90年代に香港通信を購読していた者には懐かしい名前だ。香港人男性の例にに漏れず 日本人女性オタクとして有名な人だったが、「相棒」とか言っている共著の人と結婚したのだろうか。