九龍城探訪 | アジア読書

九龍城探訪

著者: グレッグ・ジラード, イアン・ランボット, 吉田 一郎, 尾原 美保
タイトル: 九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 -City of Darkness-
跡地でも売られていた英語版の存在は知っていたが、取り壊し後12年を経て在りし日の九龍城砦の姿を紹介した写真集が日本語版で登場。この本が特に優れて いるのは、生きている廃墟としてその筋のマニアを満足させつつも、あくまでもそこに暮らしている人たちの生活を、非常に興味深いインタビュー記事を以って 紹介する事を中心に据えている点にあるだろう。副題が「魔窟で暮らす人々」だが、その主人公たちはごく普通の香港市民である。かつて香港全体が魔窟である 様に言われた時期もあったが、その意味では九龍城砦は香港の縮図であった。そしてそこに暮らす人々は中国大陸から逃れた難民たち。成功を夢見るヒマもなく 日々生きていくために働く、愛すべき小市民の姿がそこにはあった。日本人では数少ない「魔窟」生活経験者の吉田一郎氏が監修。