日本銀行は、13日、長期国債の買い入れ額を月額500億円縮小することを発表しました。

これは、現在の脚注である6兆円に比べて0.83%に過ぎません。しかしながら、

長期国債の買い入れ幅を縮小するテーパリングであることは間違いないことから、

債券市場におけるリスクアバーター(危険回避者)にとっては債券価格の下落及び

債券利回り(長期金利)の上昇を招くものです。

いよいよ日銀も数年前にFEDが歩んだ道に歩を合わせることになります。

FEDも数年前の量的緩和からの金融政策変更の際は、まず財務省証券(国債)の

買い入れ幅を縮小させることからはじめました。これをゴルフのグリップ部分の

テーパーのように、徐々に(買い入れ額が)細くなっていくため「テーパリング」と呼びます。

 

日銀が夏の喫茶店のように「かき氷、始めました」と張り紙することはありません。

すなわち「テーパリング、始めました」とアナウンスはしません。

債券市場はすべて、プロの集まりです。意味が分からないひとはいません。

参加者は皆、「そろそろ茶店に行けば、かき氷頼めるかな」ということは判断できます。

しかし、日本のマスコミは素人の集まりですから、本質が見えずに報道します。

 

テーパリングは進めば、長期国債の需要が低下していきますので、必ず価格が下落します。

満期償還時までの表面利率は一定ですので、価格が下落すれば、必ず、満期前に

債券市場で売買される長期国債の市場利回りが上昇します。その結果、

テーパリングにより、この先、長期金利が上昇していくことになります。

 

少しだけ我慢してお読みください。

 

いま、固定利回りが1%の10年物国債を仮定します。

単純化のために

年1%(税引き後は無視します)

応募者利回りも1%とします。

募集価格    額面金額100円につき99円50銭

債券市場では、満期まで保有されない国債が取引されています。
テーパリングが進むと、国債需要が減少するため国債の成約価格が下落します。
しかし、満期まで保有した場合の償還金額は額面100円あたり1円上乗せの
101円です。
そのため、例えば国債の市場価格がテーパリングにより99円に下落すると、
 
99円に対する1%は額面100円に対しての金利(X)は

99:1=100:X

で求められることになります。
すると、
99X=100
X=1.01 >1
これは、国債金利が上昇したことを示しています。
すなわち、国債価格が下落すると、国債利回り(金利)が上昇します。
このシンプルなことをムニャムニャ誤魔化している「エコノミスト」として
テレビに登場する方が多いのでご注意下さい。
上の式は、

債券市場では価格が上昇すると金利は下落し、
価格が下落すると金利が上昇する

という事実を意味しています。難しいことではありませんよね!
 
 

日銀がテーパリングを始めると、買い手が減少しますので、

債券市場の板でより低い価格で国債取引が成立していきます。

 

すると、短期金利(中央銀行がコントロールします)と長期金利の差が拡大していきます。

これは、短期で調達して、長期国債を債券市場で売買すれば、年利は稼げなくても

スプレッド(利ざや)を獲得できることを意味しますから、その手の取引が増加します。

このスプレッドは、アービトラージ(裁定取引)により、そのような利ざやを稼げなくなるまで

続きます。こうして、短期金利も上昇していくことになります。

 

これは、わが国の数年後の短期プライムレートが数%台に上昇する可能性を意味しており、

短期プライムレートに連動する変動金利で長期の借り入れをおこなっている債務者に対して

「わかるひとにはわかる」将来の金利上昇を示唆するものと思われます。

日本のマスコミはとんちんかんな報道をすると思いますが、この意味を見誤らないで下さい。

 

niederhoffer