日本銀行は令和6年3月18日、19日に金融政策決定会合を開き、

2007年以降17年ぶりとなる、マイナス金利の解除、10年物長期国債金利への

市場介入(イールドカーブコントロール、この名前はどうでもいいです。ミクロ経済学

の理論的に正当性がない市場介入です)、株式市場への介入(ETF)、

不動産市場への介入(REIT)の終了などの金融正常化への「とりあえずの道筋」を

決めました。

その結果、今後の金融政策は短期金利の利子率コントロールをメインの政策手段

にすることが確定しました。

この点は、当然ながら歓迎すべき結果です。ここまでなら。

しかし、植田総裁や内田副総裁は、この会合への地ならしとして

マーケットへおかしなメッセージを事前に送りました。

いわゆる、

「当面、緩和的な環境が継続する」

というものです。

このメッセージによって、マーケットにどのような影響を与えたでしょうか。

 

株式市場           金融正常化後も史上最高値を記録

外国為替市場(ドル円)  円安方向へ

 

えっ!?何でそれ言うの?

 

ちょっと何言ってるかよくわからない(©サンドウィッチマン)

すなわち、植田総裁と内田副総裁はそうなることがわかってて、わざと

金融正常化前にそのようにマーケットへシグナルを送ったことになります。

何やってるんですか。

だって、物価上昇率が持続的に2%を上回る状況を見通せることができたため、

金融正常化したわけですよね。

でも、さらなる物価上昇を招く円安を加速させるような発言をしたのは

なぜなのでしょう。

ひとつは、17年ぶりに時計を逆回転させるわけですから、ショックを和らげたい

という思惑もあったと思います。

しかし、インフレは怖いものです。もし、止まらなくなったら

アルゼンチン、ジンバブエ、そして第1次世界大戦後のドイツルートへまっしぐらです。

したがってインフレの亢進を抑制するためにこの先の利上げはマストな金融政策です。

そして、短期金利の引き上げによるインフレ対策を行うことになります。

すると、短プラや変動金利の上昇による借入主体への大きなショックは不可避です。

すなわち、将来的に、やわらげたいほどのショックが日本を襲う可能性があるのです。

だからこそ、そのショックをやわらげる必要性を感じた植田総裁の

「当面緩和的な環境を継続」発言に繋がったとみるべきです。

 

アベノミクス10年間の日銀による大規模な質的量的異次元緩和策は、

マネーを大量に一般ピーポーや中小企業に低利で供給しました。

個人が借りたマネーは、固定金利による借り入れではなく、短期金利で

目いっぱい金融機関から低利により膨張させた借入可能額を引くという

極めてリスクの高い不動産購入を増やしてしまいました。そのマネーは

都心のタワマンその他の不動産市場に流れたため、東京都の新築マンション

平均価格が1億超という資産インフレをもたらしています。

これは、何も日本の一部が豊かになったた結果ではなく、日銀から

多くの、本来そのようなマネーを借りてはいけない層が、大量のマネーを

主に銀行から引いたために起きている現象です。

不動産を買ったというのは名ばかりで、変動金利での借入可能額を

引けた人が多かったために起きた経済現象であり、バブルそのものです。

この変動金利を政策目標のメインにする以上は、植田総裁が言うように

当面は緩和的な状況が続くのであれば、短期金利の指標である

金融機関の優良貸出先への最優遇貸出金利(短期プライムレート、短プラ)

が上昇することは「当面」ないでしょう。

その結果、短プラと連動している住宅ローンの変動金利の上昇も

借りている人にとっては安心できる状況が「当面」は継続することになります。

しかし、この「当面」は、猶予を与えられたと考えて、貴重な時間を

有効に使う必要があるのです。

すなわち、もし3年後、5年後になっても10年~20年以上の住宅ローン残高を

変動金利で背負っている人は、短プラが上がり、変動金利が上昇した際に

自分は返済できるのかということです。その際、5年ルールや、25パーセントルール

があるからと言って誤った判断をしないようにして下さい。

もし、ローンを返済できなくなる(ローン破綻)自分の財政事情が見通せたのであれば、

植田さんや内田さんが与えてくれている猶予期間の「当面」のうちに

不動産を売却して身軽になる必要があります

 

「当面」という日本語は、奥行きが深い言葉であり、いつまでという言質を

与えません。ということは、いつになったら利上げが始まってしまうかが

わからないという意味も含んでいます。。常識的な日本語では、

年内の利上げはないでしょう。

しかし、来年以降は射程範囲に入ります。再来年ならその確度は一層

高くなり、令和10年までには短プラ、住宅ローンの変動金利が上昇することは

視野に入れなければなりません。いくらなんでも、それは、令和6年3月から見て

「当面」ではありません。

その時、何が起こるのでしょうか。企業の設備資金であれば返済のリスケジュール

(返済計画の見直し、リスケ)、家計の変動金利住宅ローンであれば、毎月の

返済額がそれほど変わらないため(5年ルール、25%ルール)、未払利息が

増加していくことを意味します。そのため、ローンの完済期限日になっても

完済できず、未払利息の一括返済が必要になります。しかし、多くの人は完済時

には働いていないと思われますので、物件を手放して返済することになります。

ここまでの景色が見えている方な、「当面」という奥ゆかしい日本語を楽しめるでしょう。

もし、はっきりとその景色を見たい方は、お時間がある時にコーヒーでも飲みながら

 

でもお楽しみください。

 

P.S. X(旧ツイッター)で、変動金利の住宅ローンを組んでいる方の甘えた投稿

   を拝見しました。変動金利は上がらないとか、日銀保有国債への政府利払いが

   増えるから、変動金利は上がらないとか、まーいろいろいいんですが、

   世の中、甘えは禁物です。もしその見通し通りにならなかった場合でも

     ご家族を路頭に迷わせない自信がおありなら素晴らしいです。

   でも、例え植田総裁でも、この先の見通しは不透明だと思いますよ。。。

   つまり、「当面」が過ぎたら、金融緩和的な環境は終了し、金融引き締めに

   移行すると、植田総裁がヒントをくれた訳ですから、甘い考えを捨てて、

     変動金利での借入残高が、果たして身の丈に合ったものかを

    「当面」が終わるまでに、お考えになって行動なさることをおすすめ致します。

 

 

niederhoffer