向こうから吹く風
待ち望んだ景色を探して
清んだまま漂う
透明の栞捲って
微かな記憶が膨らむ

明日には世界は暗転して
淡い感傷を覆い隠す
沈みこむ前に加速する
伸びた惰性から逃げるように

見下した情景
昔通りのシナリオ
見果てぬ先に丘は佇み
最奥の青空まで続く
風の音はここには響かない

地平線がスライドする
流れるように意識は歪んで
距離は縮まっていく
脳を刺激する
幾層が織り成す軌跡
ゆっくり浮遊するよう

上空高く吹き乱れ
波間に晒された
山の背を縫うような
繊細な旋律

夏ではない
春でもない
梅雨でもない
夏の手前
夏が動き出す
そんな季節
照る太陽
思わず手をかざす
また夏が来る
前の夏とは何か違う

ベランダがよく似合う
日差しが弱くカーテンに揺れる
その隙間に覗く空


振り返りはしない
ただ思い出す
あの夏
真っ直ぐな季節
しばらくは
思いだし続けるだろう
君越しに見るより
広いはずの青

この短い季節の後には
君と出会った夏が来る



こんな感じだったかな
記憶は曖昧なまま
辿った道を振り返る
直進のみ
真っ直ぐなのは嫌いじゃない

見覚えのある景色
最近はもっと遠くにあるようで
視界はクリアじゃなかった
輪郭すらままならないまま
ぼんやり眺めていた
過ぎていくのは
垂れ流した思考だけで
緩慢な時間に退屈していた

晴れ渡った空
久々の気持ち
懐かしいくて温かい
文句なんてつけようがない
鈍く分厚い雲は消え
全て光って見えた

猫が走っていく
視界はクリアだ