パンデミック以来、ホームドクターとの研修はE Visit というビデオチャットで済ませていた。



別に体調に大した異変もなくそれで良かったんだけど、喘息が再開して処方してもらった薬の効きが今ひとつで違う吸入剤にしてもらった時、新しい薬を受け取るついでに採血したらいいよと言われた。



わたしは注射が怖い。
針が苦手。
中学2年から高校3年間、全ての予防接種をテキトーな理由をつけて避けていた。てへぺろ
でもコロナのワクチンができた時に家族からも励まされ(笑)打ちに行ったら思ったほど痛くなかった。注射って5秒もかからないし、まあ副反応はあるし2、3日は腕も痛くて髪の毛が結べなかったりもするけれど、そのおかげで病気にならないと思えば我慢できるようになった。




でも採血は別。
血管が細いのでいっぺんでできないこともあるし、採ったあと身体が寒〜くなる。
腕の内側に針が刺さるのも嫌だし、書いてるだけで足までゾッとする。
時間的にも注射より長いし。




それで子供用のバタフライという細目の針を使ってもらったり、したくないからと断ったりもしてきた。大人げないけど怖いものは仕方ない。




そうしたらかかりつけのお医者さんが「喘息があってコロナやインフルエンザに罹ったら重症化する可能性もある。その時にすぐ適切な治療ができるように、血液検査で他に異常がないか知っておいた方がいい。薬を受け取るついでにラボに行けば予約なしで採血できるよ。」というではないですか。



「あー…。した方がいいんですかね?」ガーン



もうすでに及び腰のわたしにお医者さんはもちろん、と頷いた。
そりゃそうだよね。




それで行ってきましたよ、怖い怖い言ってたら夫が病院のラボの入り口まで着いてきてくれた。



そこは採血専門のラボなんだけど、診察カードと運転免許証を見せて自己負担の$8をカードで支払うと列に並びすぐ採血してくれる。




わたしの前には2組並んでいて、先頭の2歳ぐらいの女の子が受付直後に異変を察して泣き出した。
それがこの世の終わりみたいなものすごい泣き方で、受付の係の人が「あの子はもう何度も採血してるからわかってて泣くんですよ。」となんにも聞いてないわたしに説明するほど。



女の子の順番はすぐに来て、泣き声と叫び声が響く中、部屋中の空気が更に重くなる。
わたしの前の体格のいい女性が部屋に入って行き、わたしも前に進んだ。




部屋の中は2列に椅子と衝立が並んでいる。



「失神したことはありますか?珍しいことではありません。そんな経験したがある方は前もって係にお伝え下さい。」との貼り紙、見てるだけで気が遠くなりそう。




女の子は手前の椅子で全身で泣き叫んでる。
お母さんらしき人がその子をがっしり押さえている。



わたしの前の女性が名前を聞かれてる。



ものすごくナーバスな気分で部屋の入り口に立っていると「次!」と呼ばれた。




「ハーイ、元気?」とアジア人のナースの女の人に聞かれる。



「ものすごくナーバスなんですけど。」と答える。



「すぐだから。拳を作って。」と言われたけど、怖くて力が入らない。




ゴムバンドで肘の下を絞められてる間も腕だけ台に乗せ、身体は針から遠くなるよう座り直す。
もちろん針を見るどころではない。



「行くわよ〜」と言われチクッと針が刺さる。



なるべく頭を空っぽに、何も考えないようにするけれど、片袖だけ脱いでいるのもあり寒くてゾクゾクする。





女の子はまだ絶叫している。
怖いよね。
わたしだって怖い。



ナースが話しかけても構わず叫んで、時々息継ぎみたいにヒューっと息を吸い込んではまた泣いている。




と、ぴたっと泣き声が止んだ。




「グッド・ジョブ!はい、ジュース🥤」
とナースの声がして、女の子はバンドエイドを貼ってもらう時にまた少し泣いたけどそのあとは泣き止んでジュースを飲んでるらしく、部屋は急に静かになった。



ふーっとわたしもため息が出た。



わたしの前の女性も採血が終わり立ち上がっている。



わたしもそろそろかな?と思ったら、まず腕のゴムバンドを緩められちょっとホッとした。



「終わりですよ。」とナースに言われゆっくり立とうとしたら、採血されたてのわたしのA型の血が小さなチューブに4本も採られてる。




こんなに採られたとは…。
「Oh my god..」と思わず言うと、ナースはわたしが具合が悪いと思ったのか「倒れそう?倒れそうなの?」と慌てて聞いてきた。



倒れそうな気分ではあるけど倒れはしない。
「I hope not 」(そんなことにならなきゃいいですけど。)と言ってゆっくり立ち上がり部屋を出た。




採血の後は分厚く重ねられたガーゼがガムテープみたいなサイズのテープでがっちり止められていた。
洋服の袖をそっと下ろし部屋を出ると、廊下の椅子で夫がちゃんと待っていてくれたからホッとした。




「早かったね。」と言われたけど、確かに10分もかかってない。
「あー、怖かったー、行こう行こう。」とわたしは彼の腕を取って外に向かって歩き出した。




あーほんとに怖かった。
その日の夜から少しずつ結果が送られてきた。
血小板、赤血球、白血球、甲状腺などなど。
異常がなかったのはよかった、もう当分しなくていいから。





帰ってから仲良しの男友達にラインした。
彼は定期的に献血している。
偉いよなあー。
ものすごく怖かったと言ってもあんまり伝わらない。
「どのぐらい怖かったって言うと、歩いて入るお化け屋敷にひとりで向かうぐらい。」と説明したけどわかんないって。





恐怖心は人それぞれ。
わたしはバンジージャンプやる方がマシだわ、やれやれ。
















❄︎