アトピーとの戦い⑪医師の言葉
”今までどんなに探しても見つからなかったのになぜかその日に限って出会った”縁というのは不思議なもので理屈では説明できないものです。アトピーの治療ができる病院は皮膚科・小児科問わずこれまで何度も何度も嫌になるくらい調べてきました。その日初めて目に留まった小児科。通院できる距離にありアトピーの治療にも力を入れている小児のアレルギー専門医がいる病院でした。友人が教えてくれた病院も検討していましたが、通院しやすい距離だったというのも決め手でした。運転を頼む必要があったのと診察に同席してほしかったこともあり、夫が休みの日に受診しました。今度こそ何としてもアトピーの原因を突き止めてステロイドを使わない治療法を見つけたい。アレルギーの専門医ならきっとそれが可能なはず。病院で診察の順番を待つ間はまだそう思っていました。名前を呼ばれて診察室に入ると私が説明するまでもなく医師は状況を察したようでした。鼠径部のリンパが腫れ、全身がむくみ、そして微熱も続いていたことからすぐに血液検査へ。アトピーについては別の病院でステロイドを服用したこと、そしてステロイド軟膏は塗っていないことを伝えました。医師からは、ステロイドは服用する必要がないこと。アトピーの治療にはステロイド軟膏を塗布することが唯一であり最善の治療であることを伝えられました。「正直これまで皮膚科で出されてきたような量では足りません。もっと多量のステロイドをしっかり塗っていきます。プロアクティブ療法と言って症状が治まっても塗り続けます。そして徐々に減らしていきます。」ステロイド・・・結局ステロイドなのか・・・あろうことかもっと多い量のステロイドを・・・・その瞬間私は頭を殴られたような衝撃を感じ絶望的な気持ちになりました。全身の状態が悪化している子どもを前にしながら、力が抜けてぼーっとしている私を見て先生も危機感を持ったと思います。「この治療方法を採用している医師はまだ数が少ないのです。特にこの地域にはいません。東京から引っ越して来た人がこの辺りの皮膚科に通っても薬の量が少なくて治らないと言っていました。」ちょっと待って。この先生は何を言っているのだろう。私がなぜステロイドを使いたくないと言っているのか分かってくれているのだろうか。あくまでもステロイド治療の必要性を説く医師に対して私は少し意地悪な質問をしてみたくなりました。きっと自分の子どもには多量のステロイドを塗りたくるような残酷な治療はしないと思っていたからです。「先生は自分のお子さんにも同じ治療をしますか?」きっと歯切れの悪い返事が返ってくるに違いない。私は大方の答えを予想していました。「もちろんです。間違いなく同じ治療をします」そして先生はこう続けました。「以前、この子よりもっとひどい状態の子どもが来たことがあります。その子のお母さんもステロイドを使いたくないと言って二度と来てくれませんでした。今でもその子がどうしているのか気になっていて・・・」思っていた答えと違ったことに少し混乱しました。来なくなった患者を今でも心配する?そんな先生がいるの?何より、こんなひどいアトピーの子は他にいないだろうと思っていたのにうちの子もよりひどいアトピーの子がいたこと、治療を諦めた母親がいたこと。そこに自分たちの姿が重なりました。そして、目の前の先生が女医さんだったこと。先生の母親としての気持ちが垣間見えたこともあるかもしれません。自分の子どもにもためらわず同じことをすると言ったその言葉には嘘がないことが分かり、頑なだった私の心がほんの少し開いた瞬間でした。すかさず先生が続けました。「ご主人も協力してもらえませんか?お母さんが薬を塗るのが辛ければお父さんに塗ってもらいましょう」まだうまく頭を整理できない私に代わって夫が答えてくれました。「僕がやるよ」これまでの病院通いでも運転手としてしか頼れなかった夫が初めて寄り添ってくれたようにも感じた瞬間でした。