careless  ministerとして初ライブの日がいよいよきた。

楽器屋主催の定期ブッキングライブのイベントで、出演するバンドさんは6組程度だったと思う。
僕たちは3番手だった。

学生バンドが多かったが、大学生のバンドさんも多く実力の差は歴然としていた。


誘ったクラスメイトの何人かが見に来てくれた事がものすごく嬉しかった。




 リハから入念に、音作りはよくわからなかったので、スタッフさんに丸投げのような形になってしまったけど、
僕は練習の成果をしっかりと発揮できるように、自分の歌をしっかり届けられるように努めた。



そして、ライブ本番。
イベントが始まる。
1組目が終わり、2組目が始まる。



"もう次だ…"

緊張に見舞われる。
こういう時、過換気症候群の症状が本来現れるはずなのだが
現れなかった事はきっとその要因はここにはないことを示していた。


いよいよ僕たちの番。





"careless  ministerです"

僕はソラニンの最初のコードを鳴らす。

アコースティックギターの弦を揺らす。

4拍子。
2つ目のコードを鳴らす。

テンポを間違えないように、慎重に
3つ目、4つ目。


そして、ドラム
ベースが入る。
その瞬間、少し緊張は解けた

"思い違いは空の彼方 さよならだけの人生か"





"ありがとうございます!"

ソラニンはやりきった。
ミスもなかった。


そして、
アコギを掻き鳴らしながら歌い始めた

"ため息の訳を聞いてみても
自分のじゃないからわからない"


真っ赤な空を見ただろうか




この日まで、この曲を何度も何度も聴いた。
最初はあまり知らない曲だった
でもこの期間でこの曲を大好きになり、この曲を歌うことが僕にとってとても意味のあるものになった。

心の距離感がわからなくなったクラスメイトとなんとなくこの歌を歌うことで繋がれる気がした。











"ありがとうございました!!"


やりきった。
決して上手と言える歌じゃなかった。
演奏じゃなかった。

でも僕たちはやりきった。

ステージから降りると、見にきてくれたクラスメイトから労いの言葉をもらった

"良かったよ"

"上手だった"

"神谷くん歌上手いんだね"





こんな言葉を求めていたことなんて知らなかった

誰かに何かが届くなんて知らなかった

でも僕たちはこの上ない達成感に満ちていた。


careless  ministerであれたこと、
careless  ministerを始めたことにしっかりと価値がついた瞬間だった。