いつもの授業中

僕は左手の袖にウォークマンを潜ませて、音楽を聴きながら
右手でシャープペンを走らせていた。

この頃、体に違和感を感じていた。

音楽を止めて、真面目に授業を受けることが出来なくなっていた。
授業に集中する、もしくは周りを気にすると汗が噴き出して、呼吸が乱れた。
ただ、音楽を聴いていれば殆どそういうことはなかった。

商業科だった為、パソコンの授業があった。キーボードを打つために両手を使うため、強制的に音楽を聞く術のなくなるその授業では特にその症状は酷かった。

とにかく、どうしようもない

そんな感じで、度々先生に
"トイレに行く"
"頭がいたい"等
わかりやすい理由をつけて
授業を抜け出した。
保健室に籠ることも増えた。
 

バンドの練習や、学校での生活以外ではその症状は出なかった為
病院を受診することもなかったが、
かなり長い期間続いていたその症状がやっと気になり始めた頃
病院に行った

"過換気症候群"

そう、診断された。


緊張やストレスから、過呼吸を起こしたり頭痛を起こしたりするというものだ。
精神を落ち着かせることが治療法と言われたが、どうしたらいいかもわからず
結局なんの解決にもならなかった。

この事を、担任の先生には伝えた為、授業を抜けることは少し楽になった。
サボりたいという気持ちが混ざることもあったが、殆どはこの症状が深刻さを増し我慢の限界を超えた時だった。


そんなストレスの全てを音楽に委ねた
ギターを弾く時間、
歌を歌う時間、
そんな時間にいつだって救われた。

careless  ministerの初ライブまであと2週間ほどと迫った頃だった。