Wikipediaが、日々進化しているネタは何度か記事にしました。
先日「精神障害」(1)を覗いたら、編集合戦が活発に行われていました。
特に「ニューヨーク州立大学のトーマス・サズ博士」と「DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長」の発言は興味深いです。
以下 抜粋転載です。
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▼アメリカ精神医学会によれば著しい苦痛や社会的な機能の低下を伴っているものであり、死別など喪失によるありうる反応や、文化的に許容できる反応は精神障害ではない。
▼精神疾患(mental disease)の語が用いられるが、厳密に正しい用語は「精神障害(mental disorder)」である。
従来のイメージである不可逆的なものとは異なるため、診断名に「症」の字を当てはめる動きについては議論がある。
▼症状を呈する原因としては、先に甲状腺機能の異常や栄養欠乏、また脳損傷(英語版)など医学的に生じているとか、医薬品や向精神薬によって薬理学的に生じているといった状態を除外して、それ以外の固有の症状であると仮定される。
▼つまり精神の障害は、髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合もあるし、単にアルコールやカフェイン、また精神科の薬によって薬物の作用で生じている場合もある。それ以外にストレスによって生じたり、脳の機能的な変調によって生じている可能性もある。決定的な原因は判明しておらず、様々な仮説が検討されている状態である。
▼従って、精神障害を診断するための合意された生物学的指標(検査)は存在しない。
▼日本では、精神疾患のために1か月以上休業している国民が約47万人おり、それによる逸失利益だけでも9500億円にのぼるという報告もある。
▼異常が、標準から離れているという意味であり、その基準は、社会的な標準からの逸脱ではなく、多くの社会科学者が考えるように個人や社会集団の幸福への影響が基準である。
▼つまり、はたからみての振る舞いではなくて、当人が苦痛を感じているかどうかによって、不適応行動の障害の異常性があるとみなされる。
▼症状や行動と、苦痛と機能の障害との一式の存在を比喩しており、機能不全(dysfunction)のないものは精神障害(mental disorder)には含めないとしている。つまり逸脱や葛藤だけがあるようなものは、精神障害ではない。
▼ヒトの精神機能には、意識、知能、記憶、感情、思考、行動など幾種類かの側面がある。精神障害ではこれらのうち1つまたは多種類が障害されることで多彩な症状を呈する。以下、いくつかの分類に従って精神症状を記述するが、他にもたくさんの症状があり、また同じ症状でも個人差が大きく、○×式の症状記録では精神障害を正しく判断することはできない。
▼3人の精神科医がそれぞれうつ病と診断し、入院もすすめられたが、内科で血液検査を行うとバセドウ病であったため、精神科の薬が役に立たなかった理由が判明したというようなことも起こりうる。
▼精神障害の診断を正確かつ安全にするためには、診断を急がないことである。治療法がない場合には診断は無益であり、不必要な診断が機会の損失を与えたり、また烙印を押すこともあり、このように診断が利益を与えるかどうかの考慮も必要である。
▼軽症なほど診断は困難であり、自然に軽快することもあり、過小診断したほうが安全で正確である。診察の初回は症状が強い時期であり、診断を行わないようにしてもよく、特に高齢者や子供においてである。
▼薬物依存症や、特に医薬品の多剤併用者や高齢者では、精神疾患に似た副作用が生じやすいため、薬剤の影響を除外する必要がある。
▼薬物は精神疾患の症状を呈する頻度の高い原因であるが、意図的に尋ねるまで判明しないことがあり、特に初期の場合である。
▼国際神経精神薬理学会(CINP)の2013年のサミットでは、以下のように報告されている。
中枢神経系(脳)の領域では、50年以上にわたる、3,000以上の論文にかかわらず、合意された生物学的指標は存在しない。それ以上に、研究および臨床的な理解は、生物学的指標を同定するほど十分に高度でもない。
有効な生物学的指標が必要であり、脳の障害の神経生物学的な研究を進展すること必要とされている。
▼ニューヨーク州立大学のトーマス・サズ(英語版)博士は「言うまでもなく、ほとんどの身体疾患に存在するような、心の病の有無を確かめる血液検査や他の生物学的検査は存在しません。もしそのような検査法が開発されたら、その後、前述したように、症状は心の病とは見なされなくなり、身体疾患の症状として代わりに分類されるでしょう」と述べている。
▼DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は、過剰診断、過剰治療に対し、「『ある診断が広く行われるようになったら、疑うべし』ということです。人間はすぐには変わりませんが、物の名前はすぐに変わります。もし突然多くの患者さんが同じ診断名を付けられるようになったら、それは患者さんが変わったからではなく考え方が変わったからであり、考え方が変わるのは、多くの場合、製薬会社が自社製品を売るためにその病気のマーケティングを動かしているからなのです」と述べている。
▼日本での課題は、診断が適切に鑑別されていないことに加えて、適切な薬物療法がされておらず、薬物以外の対応も行われないことである。
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下記にURLを貼っておきますので、是非 一読されてください。
nico
(1)精神障害 (Wikipedia)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%96%BE%E6%82%A3#.E9.87.8D.E7.97.87.E5.BA.A6