「薬害オンブズパーソンズ会議」の別府先生らと共に、アシュトンマニュアルの日本語版を作られたダグラスさん(Wayne Douglas)のウェブサイトが、明後日の3月24日に完成するという情報を入手しました。
確認でき次第、「ニコ呟・・・」で、紹介します。
「アシュトンマニュアル」の最後に、翻訳に携われた方4名(翻訳者 田中 涼、ウェイン・ダグラス 監修者 別府 宏圀、田中 勵作)の署名文書として、「翻訳を終えて」という文章が掲載されています。
思い返せば、これが私の「反精神医療ブロガー」の原点でした。
また減薬・断薬治療の辛い時期を乗り切る「心の支え」となり、精神医療サバイバーへ導いてくれたと感じています。
全文を掲載させていただきます。
nico
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翻訳を終えて
このアシュトンマニュアル日本語版は、ベンゾジアゼピン依存や離脱についての情報がなく困っている患者のためだけに翻訳されたのではなく、医師、薬剤師、製薬企業の方、厚労省の方へのメッセージでもあります。
離脱症状(禁断症状)とは、場合によると、医療関係者が想像する以上に過酷なものとなり、その持続期間を限定することは不可能です。医師から、「長期服用して安全な薬」、「一生飲み続けて大丈夫」、「常用量では問題はない」などと言われ、その言葉を信用して飲み続けた結果、深い薬物依存に陥る人たちが今の日本には溢れています。そして、その人たちの多くは、医師に助けを求めても、「離脱症状は4 週間以内に消えます」、「それはあなたの元々の症状です」などと退けられて行き場を失くし、患者同士がインターネット上で必死になって情報交換しているのが現状です。
1990 年代から既に、“日本の”様々な医学書や学術論文の中でも、患者に対して常用量依存や離脱症状についてインフォームド・コンセントが必要なこと、医師は患者の依存形成に注意を払わなければいけないことが明記されています。また、2000 年代に入って間もなく、日本のベンゾジアゼピン処方が諸外国と比べて飛び抜けて多いことが複数の論文で指摘されるようになりました。更に2010 年には、国連の一機関である国際麻薬統制委員会(International NarcoticsControl Board)がまとめた年次報告書でも同様の指摘がなされ、その背景には“不適切な処方”があると示唆されています。
これら国内外からの注意喚起にも拘わらず、日本では未だに安易な長期処方が多くの診療科で広く行われ、医原性薬物依存者が後を絶ちません。これは紛れもなく社会問題です。
医療関係者の皆さんにお伝えしたいことは、患者は依存形成に気付かないということです。つまり、今の日本には無自覚の薬物依存者が大勢いて、その人たちは心身の不調やおかしな言動の真の原因に気付かぬまま日々を過ごしているということです。そして、たとえ自分が薬物依存に陥っていることに気付いたとしても、上に書いたように頼るところも情報もなく、多くの人が途方に暮れています。
アシュトンマニュアル日本語版の公開が多方面への大きなメッセージとなり、これを機に、このような意図せず薬物依存に陥り苦しむ人たちがこれ以上出てこないことを願っています。
最後に、翻訳の許可を与えて頂き、沢山のアドバイスを細やかに提供して下さったアシュトン教授に、深く感謝の気持ちをお伝えします。
翻訳者 田中 涼、ウェイン・ダグラス 監修者 別府 宏圀、田中 勵作
(2012 年8 月19 日)