エピローグ(控訴審)…東京高等裁判所
令和8年6月29日判決言渡
事件番号:令和8年(ネ)第10004号 損害賠償請求控訴事件
(原審(一審): 東京地方裁判所令和5年(ワ)第70401号)
原告 ニデック株式会社(代理人:H玉弁護士、T(弁護士)
被告 柳原 直人(代理人:J先生)
株式会社東洋経済新報社(代理人:F弁護士)
主文(判決)
1.原告(ニデック)の本件控訴を棄却する。
2.被告 柳原の控訴に基づき、原判決(一審判決)を次のように変更する。
3.被告 柳原は原告(ニデック)に対し66万円及びこれに対する令和5年8月23日から支払い済みまで、年3%の割合による金員を払え。
4.原告(ニデック)の被告柳原に対するその余の請求並びに被告会社(東洋経済)、被告竹中に対する請求をいずれも棄却する。
5.訴訟費用は、1審(地裁)、2審(高裁)を通じて、原告(ニデック)の負担とする。←原告側に裁判費用を全額負担させるケースは非常に稀。「元を正せば、そっち側に問題あるんやろ!! かかった費用はそっちでもっとけ」という趣旨。
6.この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。
高等裁判所の判断:
1.当裁判所は原告(ニデック)の被告会社(東洋経済)らに対する請求は理由がないと、また、原告の被告柳原に対する請求は66万円及び遅延損害金の支払いを求める限度で理由があると判断する。その理由は、2.以下の通り補充ないし補正する。
2.1)原告(ニデック)は令和7年7月、原告の子会社の内部監査部門から、不適切な会計処理が行われた疑いがあるとの報告がなされたのを契機として調査を実施し、原告の取締役会は、同年9月、この問題について第三者委員会を設置することを決定した。
2)第三者委員会は、2020年度から、2025年度第1四半期までの対象期間として調査を実施し、令和8年2月27日付けの調査報告書を公表した。当該報告書には大要、以下のような記載がある。
①原告グループ内で多数の会計不正が発見され、その2025年第1四半期松の連結財務諸表上の純資産への負の影響額が約1397億円に上ること。
②会計不正が行われた背景には、永守が日常的に業績目標を達成するよう強いプレッシャーをかけていたことがあること。
③「資産健全化プロジェクト」「構造改革」等の名のもと、「負の遺産」と称される「資産性に疑義のある資産」の処理が開始されたものの、業績目標達成が厳しく要求される中で「負の遺産」の処理は想定通りには進まなかったこと。
④原告の内部監査部門は、会計不正が発覚する都度、特別調査を実施し、会計不正が行われた原因が、原告本社からの強すぎる業績プレッシャーにあると考えていたものの、高い業績目標の達成を強く求める永守の経営スタイルに切り込むのは、あえて回避したこと。
⑤特別調査の結果は、監査等委員会ないし監査役会にも報告されたが、会計不正の背景に、原告本社からの業績プレッシャーが存在することは報告されなかったこと。
⑥永守が会計不正を指示、主導した事実は認められないものの、永守は、従業員からの報告を通じて、直ちに是正が必要な会計不正を計画的に処理する例があることを把握したにもかかわらず、これを受け入れていて、一部の会計不正を容認していたとの評価を免れないことや、永守が会計不正が強すぎる業績プレッシャーを原因として引き起こされたことを十分認識しながら、高すぎる業績目標の達成を求め続けていたことを踏まえると会計不正について最も責めを負うべきは永守であることなど。
3.公益通報者保護法7条は、事業者は損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、損害を請求することができない旨を定めるものであり、本件において、被告 柳原が被告 竹中に提供した「対象情報目録」記載の各資料のうちの相当部分は、原告の会計処理の状況や永守の「経営スタイル」に関するものであり、第三者委員会による調査報告書にも、原告において会計不正が行われた背景には、永守の日常的に業績目標を達成するよう強いプレッシャーをかけるという経営スタイルがある旨の指摘がされていることを踏まえると、原告に損害を与える目的で資料を被告 竹中に提供した被告 柳原は「公益通報者」には該当せず、原告の受けた損害につき損害賠償義務は免れないものの、その行為の違法性は比較的低いというべきである。
4.原告(ニデック)は、被告 竹中は、被告 柳原と共謀し、原告に損害を加える目的で本件記事を執筆したのであるから、その行為は、正当な取材、報道活動の範囲を逸脱するものである旨の主張もするが、被告 竹中は真に報道の目的から本件記事を執筆したというべきであって、原告の主張は採用できない。
5.他方において、前記の通り、被告 柳原の行為の違法性の程度は比較的低いことを併せ考慮すると、原告の信用棄損による損害額は50万円とするのが相当である。
6.原告による調査の内容、調査に至る経緯、被告 柳原の行為の違法性の程度を総合考慮すると、本件調査に係る業務委託費のうち10万円をもって、被告 柳原の不正競争行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
7.原告の本件 弁護士費用に係る損害額を6万円と認めるのが相当である。
8.以上によれば、原告の損害額は合計 66万円と認められる。
結論:
以上によれば、原告(ニデック)の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、被告 柳原の本件控訴は一部理由があるから、原判決(地裁判決)を主文 第3項及び第4項の通り変更することとし、訴訟費用の負担については、認容額に照らして1審(地裁)、2審(高裁)を通じて、原告(ニデック)の負担として、主文の通り判決する。
(ニデックが支払った印紙代だけでも80万円>66万円、、しかも被告(私&東洋経済)の訴訟費用も支払わないとって、何やってんだか)
知的財産高等裁判所第二部 令和8年6月29日
私「、、ふーん、ずいぶん印象が変わった判決になったものだよね。私たちは何もしてないのにさ」
セバスチャン「判決が、真実のほうへ一歩だけ踏み出したのでございましょう。ええ、たった一歩だけです。ですが──前よりは、ずっと美しい結末ではございませんか?マイロード」
◆ニデック裁判 時系列
2023年6月28日 ニデックに訴えられる
2023年8月22日 わたし訴状入手
2023年10月26日 第一回期日
2023年12月7日 第二回期日
2024年2月6日 第三回期日
2024年3月15日 第四回期日
2024年5月20日 第五回期日
2024年7月2日 第六回期日
2024年8月7日 第七回期日
2024年9月11日 第八回期日
2024年10月21日 第九回期日
2024年12月4日 第十回期日
2025年5月9日 証人尋問
2025年7月14日 第十一回期日(結審)&和解協議(1回目)
2025年8月19日 和解協議:2回目
2025年9月4日 和解協議:3回目
2025年11月20日 判決言渡日(地裁 一審判決)
2026年6月29日 判決言渡日(高裁 二審判決)
(双方上告せず。期せずしてニデック発表後、ちょうど3年後に確定判決となった)
全文(裁判所HPに掲載)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96746.pdf
要約(裁判所HPに掲載)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-point_pdf-96746.pdf
