FSのビートルズ・メドレー。一瞬試合ということを忘れ、幸福
感に浸りました。
SPが終わり、3位以下と1位2位との点差は、この時点で金
は諦めろと言われているようなものだったと思います。確か
に彼等は高難度ジャンプを決め、全体的に完成度が高かっ
たので順位には納得です。でもここ迄採点で差を付けずとも…
もう3位争いの方が主な関心の対象に。選手達、戦意喪失…
まあ、しないでしょうが。(高橋選手以外の選手の演技の感
想は、又日を改めて書きたいです)
高橋選手がFSでスタートポジションに立った時、全日本の時
の様な気迫が表面から消えていて、全てを肯定して受け入
れるような、やわらかなオーラに包まれているように見えまし
た。4Tは失敗してしまいましたが、私が望んだ通りクワド1本
に構成を下げてでも、プログラムを大切に、気持ちを込めて
美しく滑ってくれようとしているのが良く解りました。
3Aのコンボ(軌道の関係か、何時もここ跳びにくそうに見え
ます)でミスが出た時…あ、これでメダルはないか、矢張3A
が鬼門だったな…などと、頭の片隅にちらと浮かびましたが
…その時はそんなこともどうでもよく、ただ彼の動きと滑りを
見逃すまいと、目を凝らしていた気がします。
イン・マイ・ライフの部分は今迄で一番良かったです。
私も彼のディープなファンになった頃の事を、走馬灯の様に
思い出していました。この10年近く、あっという間でした。
個人的に色々辛いこともあったけど、彼の応援をしている時は
幸せだったなあ。
彼の演技を観ている内に、とても幸せな気持ちに満たされて
いきました。彼の投げかけた愛と感謝のメッセージを受け取
れたかの様に。それは純粋な幸福感で、主観的にはとても
長く感じる濃密な時間でした。4分30秒で終わらないで、
ずっとこの時が続いて、と願うような。
曲が終わると共に、その至福の時も終わりを告げ、6位という
順位が残りました。上位とは僅差なので、あの3Aコンボが
成功するか、他のジャンプを3連に出来ていれば…などと未
練がましく考えてしまいますが、これが彼の今出来る精一杯
だったのでしょう。本当に心も体もギリギリの状態で、こんな
美しいものを笑顔で滑ってくれて、私達に魅せてくれて、有
難う。
でも、つい堂々巡りの様に考えてしまいます。足の状態が万全
だったらと。この素晴らしい表現力に、ジャンプが戻っていた
ら、と。より多くの人に彼の凄さが理解されるだろうにと。
でも、きっとこれも人生、かも。彼は、これからの人生に、この
経験を無駄にせず、糧にも出来るでしょう。
それにしても、あっけない幕切れ。これが本当に待ち望んだ
ソチなのかと。私は最後まで心のどこかで、彼が報われるよう
な奇跡を期待していたのだと思います。試合が終わって、メダ
リスト達が表彰されるのを見て、深い虚脱感が襲って来ました。
推し対象の選手ではなく、要素点を積み重ねて勝負が決まる
新採点の下では、そんな奇跡は望めないのは判っていました
が。
もっとトータルな作品として、演技全体の完成度を評価して
欲しいと思います。
演技直後の彼の言葉、もう限界だと言う…引退は勿論覚悟
していたはずなのに、凄くショックです。実は、こんな結果の
ままで止めるのは、心残りで悲しいので、身体が許すのなら
(体力はあると言っていた)1年位休んで足を治療して、一旦
引退になっても何時か復帰して試合に出てきて欲しいと願っ
ていました。ファンの我儘と承知しつつ。でも2012年のワー
ルドや全日本も勝たせて貰えなかった事を考えると…あれで
推し選手に合わせて変わる採点基準に真っ正直に対応しよう
として、ブレードやプログラムを替えて、増々膝に負担をかけ
てしまった気がします。その結果、得意で安定していた3Aが
不安定になったのが、命取りになったような…。ああ、2011
-2012シーズンのコンディションのまま、ソチに来られてい
たら。
もうこれ以上、膝や精神を消耗して欲しくない思いも強いです
し、これからは彼の自由にして欲しいです。でも41歳なのに
2個のメダルに輝いた、ジャンプのレジェンド、葛西選手を見て
いると、全く違う種目なのに、希望を感じてしまう自分が居ます。
でもどんな道を選んでも出来る限り応援するし、これからの
貴方の人生に幸あれと言いたいです。