先日の「20世紀ヒット曲 音律聴き比べマラソン」では、2000年代以降の曲が手薄だったので、少しづつ埋めて行っています。さすがに2000年代になると、平均律で演奏すべき曲がかなり多い印象で、古典調律の出番はほとんどなさそうに見えます。そんな中、改めて聴いてみると全然平均律じゃない曲を大量生産している人気作曲家が居ました。田中ヤスタカ氏です。

 

Purfume を例に取ると、バリバリのテクノポップですから、おそらく音律に詳しくない人は「そんなの平均律に決まっているだろう」というイメージを持っている人も多いんじゃないかと思うんですよね。でも、私の微妙な間違い探しのような古典調律聴き比べを経験した人が改めて Purfume の曲を聞けば気がつくはずです。

 

 

「ぜんぜん平均律じゃねぇ!!!」

  

 

例:

 

 

かなり音程のクセ強いっすよ。ただしもちろん何かの古典調律にぴったり合うなんてことはなく、音律も田中ヤスタカ氏のオリジナルと見ていいと思います。曲の途中でシンセの音程を微調整していることに気がつく所もあります。

Baby cruising Loveの冒頭、わざとうなりがあったり、微調整して純正に響いたりするのは G# の音です。これは古典調律でも人によって方針がバラバラで扱いが難しい音なので、「ん?田中ヤスタカ氏も古典調律を勉強してるのかな?」と一瞬思いましたが、まだ調べている曲が少ないので、たまたまかもしれません。

 

 

 

ダメ元で、いつものやつを作っておきました。しかしテクノポップをピアノでやること自体、無理がありすぎましたw

いちおう、市販のアレンジ楽譜を使わせてもらっているのですが、原曲とは似ても似つかないことをお断りしておきます。

 

 

 

たぶん原曲は、部分的に純正律をうまく取り入れてるんだと思うんですよね。純正律系だと、透明感と開放感を両立させた響きが可能です。古典調律と合わせてみると、案外 1/5コンマ・ミーントーンも健闘していることに驚きます。ただし、ミーントーン系は5度が狭いせいで響きの開放感が乏しく、そのせいで「コレジャナイ」感が出てしまっているとは思います。そこが純正律とは大きく違う点です。あと、原曲はユニゾンのピッチをズラしてうならせる手法も多用しています。

  

Baby cruising Love の方は、ダメ元でツァルリーノ音律も収録しました。聴き比べでは曲の途中で音程をいじるということをやってませんから、具合の悪い所が多発しますが、たまたま具合良く合う部分については純正律の効果を確認できます。