今回もざっくりした打ち込みデータ演奏による聞き比べです。

 

 

 

言わずと知れた美空ひばりの名曲です。一部例外はありますが基本はペンタトニックの曲なので、調律上の制約はかなりゆるくて何でもイケる感じです。その辺の傾向は「男はつらいよ」主題歌と似ています。

 

その中で、一聴して「やっぱりこれでしょ」ってなるのはピタゴラス音律ですね。ピタゴラス音律は屋外の雰囲気に合いますし、日本の伝統的な琴なども5度は基本純正に合わせるので、そういう日本の伝統を感じさせる響きを持っています。

 

が、では全部ピタゴラス音律で良いかというと、そうともならないのが美空ひばりという歌手なんです。

例えば最初の山場のここなんですが

 

 

「ソーレソレソレおまつりだー」のBbの音なんですが、この音はピタゴラス音律では低めに取ります。ミーントーンでは逆に高めになります。では、美空ひばりはどう歌っているかというと、これが「高め」なんですねー!!!

 

 

 

 

ピタゴラス音律は伝統的で素朴な感じがするのは良いんですが、その反面、地味な印象になりがちです。一方、ミーントーンは祝祭的な気分を盛り上げるのが得意な音律です。和風の旋律にミーントーンを組み合わせると、どこか「チンドン屋さん」を思わせるような印象になりがちで、それがミーントーンが敬遠されるようになった理由の1つかもしれないなとは思うのですが、この曲はお祭りの曲ですから、少々チンドン屋さん風になっても、それはそれでおかしくはないんですよね。

 

歌う時には音律とか意識せず、自然にそういう音程で歌ったのだとは思いますが、美空ひばりが歌っていた時代を考えると、伝統的な民謡もありつつ、同時に、他の楽曲ですでに明らかなようにミーントーンも結構使われていて、「こういう場合はこういう音程の方がいい」っていうヒントになるような曲が色々あったんだろうと思います。

 
上記以外にも、温かみを出したい部分や、ブルースっぽい部分では、ピタゴラス音律ではない音程の取り方を当たり前のようにしていて、とても高度なことをやっていることに気が付きます。それを1つの曲の中で自由自在に使い分けているのはすごいですね。