Amazonでポチった ローランド JUSTY HK-100 が届いたので、お盆休み中にいじって遊んでみました。そこで気が付いたことメモ。

 

ローランド JUSTY HK-100 の取説はこちら:

https://static.roland.com/assets/media/pdf/HK-100_jpn02_W.pdf

 

 

(1)音律変更できる音色について

デフォルトの設定では、「ピアノ他」に分類されている音色は、音程変更ができず、あれれ?と思いましたが、取説を読むと、「ピアノ他」の音律を変えるには設定変更が必要でした。これが分かりにくいのですが、一応可能です。一方、YAMAHA製は限られた音色しか音律変更できません。この点はローランドの勝ち。

 

 

(2)ストレッチについて

「ピアノ他」に分類されている音色は、音色によってストレッチが入っているものと入ってないものがあります。これは知らないと混乱するでしょう。ピアノ系の音色にはストレッチが入っていますが、それ以外の大半の音色にはストレッチは入っていません。音色変更が簡単にできるので、ストレッチのあるピアノとそれ以外の音色を切り替えてみることで、最高音域の音程が明らかに違っていることが確認できます。誰でも気が付くレベルの差です。せめて取説に説明が必要なポイントだと思います。

それから、「ピアノ他」を音律変更ができる状態に設定変更すると、ストレッチが入っていた音色も、ストレッチがごく僅かになります。完全にストレッチが無くなる訳でも無いようで(??)、よくわからない仕様です。

理想的には、ストレッチの量はすべての音色に共通で、ストレッチの量を無しからピアノ並みまで微調整できると良いのですが。

古楽などをやる場合にはストレッチ無しの方が具合が良い場合もあるので、ストレッチ無しのモードも必要です。

 

 

(3)操作性

カタログで見た時は、設定の操作スイッチはメカ的なスイッチなのかと思っていましたが、実際に触ってみると、静電気方式でした。本当に軽く指で触れただけでスイッチを押したと判定されて設定が切り替わります。静電気検知式なので、木の棒、ペンの先、指揮棒の先などで押しても反応しません。手袋をした場合、軍手ぐらいならOKでしたが、厚い手袋だと押しても反応しないかもしれません。これはまぁ一長一短ですが、機械的な接点がないので、接触不良の心配がなく、長持ちするというメリットはありそうです。

 

 

(4)キーボード

いわゆる、ばね式の、安価なキーボードのそれです。「ピアノ他」の音色は、鍵盤を押すときの強弱に反応して音の強弱も変化しますが、生ピアノや電子ピアノとは操作感が全然違うので、ピアニストは嫌がりそうな気がします。主要な音色は、キーボードを押すときの強弱に反応せず、単なる音のON/OFFになってしまいます。軽く押してもちゃんと音が出るというメリットもあるので、ブラスバンドの練習サポート用としてはこちらの方が具合が良いのだろうと思います。

 

 

(5)自動純正律機能

「純正律」ボタンを押すと、キーボードで適当に3和音を弾いたときに、そのコードを自動解析して自動でそれが純正になるように音程を自動調整してくれます。これがキーボードを押してからちょっと遅れて音程が変化します。このため、この機能をONにしていると、ポルタメントがかかったような、音の頭にふにゃっとした感じが付いてまわることになります。それから、この機能で音程が変化するのは3和音(以上)の場合で、2和音の場合は自動で切り替わる場合と切り替わらない場合があります。このため、アルペジオだと必ずしもうまく音程が自動切り換えされないので注意が必要です。

 

この機能が有効になっている時、デフォルトの設定では和音のルートの音(と判断された音)が平均律の0centになります。ですから、たとえばAm(A-C-E)を演奏した後にC(C-E-G)を演奏すると、A-C-EではCは高めになり、C-E-GではCが0centに戻って、代わりにE音が低くなります。回転形のE-A-CとE-G-Cを交互に鳴らしたときも同様で、CとEの音がふにゃふにゃ変化してしまうんです。これは変です。これが、ハーモニーディレクターがクラシック曲の練習に向かないとされる最も重大な欠点です。

 

ハーモニーディレクターのAUTO純正律は、メジャーコードのあとにマイナーコードが出てきたり、またはその逆の場合に、とたんにガタガタになってギャグみたいな妙な音楽になってしまう。説明なしでもこの問題にすぐ気がつく人は多いと思うが、残念なことにそうじゃないケースもある。

 

ハーモニーディレクターが妙な純正律を垂れ流すせいで、アンチ純正律になってしまう人も多いという弊害はあるのよ。愚直に歴史に学ぶという姿勢が欠けているという点で、これは批判されてもしょうがないと思う。

 

この解決方法を(11)で試してみました。

 

(6)「ピアノ他」の音色

音色の種類はめちゃめちゃ多いです。昔のGS音源よりさらに多くの音色が入っています。笑い声や飛行機が飛ぶ音、観客の拍手の音まで入っています。この値段でこれだけたくさんの音色が入っていて、しかも鍵盤を押すときの強弱にちゃんと反応するというということなら、それだけでお買い得感はありますね。本体に内蔵されているスピーカーも案外しっかりしていて、低音もそれなりにちゃんと出ます。

 

願わくば、これぐらいの勢いで、いろいろな調律法も搭載しておいてほしい・・・

 

 

(7)リバーブ

「ピアノ他」の音色にだけ効きます。よく読めば確かに取説にそう書いてあるのですが、実際操作してみると「なんで?」ってなる。

 

 

(8)PCとの接続

手持ちの USB2.0 Micro-B のケーブルが充電専用のものしかなく、買ってくる必要がありました。充電専用のUSBケーブルの場合、PCにつないでもなにも反応しません。いまどき、Micro-BはUSB3.0対応のものが普通で、それなら持っているのですが、それはコネクタ形状が違うのです。めんどくさいですね。 

(ケーブルを買ってきたので最後に追記しました)

 

 

(9) BlueTooth機能

スマホとBlueToothでペアリングして、スマホでの再生音をHK-100で出すというのをやってみました。たしかにできるんですが、音量調整がHK-100の音量調整ボタンではできないのです。スマホ側で音量調節する必要があるのですが、スマホは通常、音が小さいので、音量設定はMAX近くになっていたりするわけです。すると、うっかりそのままペアリングして再生音を出すと、HK-100からいきなり爆音で再生されることになります。事前にスマホ側で音量を絞っておく必要があるのです。これは、もうちょっと気の利いた仕様に改善してほしいですね。

 

 

(10)JUSTYリモート

 

 

iPhoneでも問題なく使えました。Apple Storeで「JUSTYリモート」で検索すると出てくるので、そこからインストールします。基本はiPad向けらしく、iPhoneだと画面が小さいので操作はやりずらいですが、できなくは無いです。

ただしこの時、(9)のBlueTooth機能で接続完了していても、それだけでは「JUSTYリモート」とは自動でつながらないらしく、再度BlueToothを検出してペアリングの接続を許可するという操作が必要です。これがなかなかすんなり認識されず、ちょっと試行錯誤が必要でした。BlueToothでペアリングされないまま「JUSTYリモート」を起動することもできてしまいますが、それでは何もできません。

 

「JUSTYリモート」でHK-100本体とペアリングされると、本体側の音色変更情報なども即座にiPhone上の「JUSTYリモート」に反映され、逆にiPhone上の「JUSTYリモート」で音色変更すれば本体側に即座に反映されます。「純正律」設定にすると、その時に各音の音程が何セントなのかという情報が「JUSTYリモート」に表示されます。これは良いですね。

 

 

(11) JUSTY を古典調律に設定して使うには

我らがラモー音律に設定できるかどうか試してみました。iPhone上の「JUSTYリモート」の調律変更画面から、各音をスライダーで大まかに調整してから、+/-ボタンでちまちま設定していきます。ちょっと面倒に感じますが、音を出しながら微調整できるというメリットもあるので、これはこれでもいいかなと思いました。

 

それでひと通り、12音のセント値を設定すればOK・・・かと思いきや、このままだと自動で和音解析されて自動でルート音が平均律の0centになってしまいます。それで、取説を読みながらキーを指定して固定するという設定も必要になります。私は基本、C基準で統一しているので、本体側で設定のROOT KEYを AUTO から C に設定変更します。これでやっとジャスティ HK-100 を古典調律に設定することができました。

( ※スマホが故障して確認不足だったのですが、新しいスマホで再度試してみたところ、調律設定画面のスマホ上のセント値表示は、キー固定してもAUTOのままで、スマホの表示と、本体側で実際になっている音がズレるというバグがあるようです。鳴っている音は、取説の操作をすることでキー固定されていることは確認したので、スマホ側のセント値表示に問題があるように見えます。スマホ側の画面も、メイン画面のセント値表示には問題が無く、調律設定画面特有のバグのようです。)

 

この場合、ジャスティ画面の表示は442Hzになっていても、実音のAが必ずしも442Hzにならない(音律で設定したセント値分だけずれる)ので注意が必要です。ここで、「C音基準ではなくA音基準とするべきなのでは?」という話は当然出てくると思います。この話のめんどくさいのは、吹奏楽の場合、「A=442Hz」と言いつつも、実際には実音のBbで合わせる場合がほとんどなので、Bbでぴったりにチューニングした状態でA音を鳴らすと、管楽器の実音のAは442Hzにならないということです。たいていの場合、管楽器の実音Aは442Hzよりも低く、概ね440Hz前後になっているはずです。多くの木管楽器・金管楽器のA音とBb音の幅は平均律の半音より広く調整されているので、このようなことが起こるのです。ですから、馬鹿正直にここで「A=442Hz」だからといって本当に実音のAを442Hzで鳴らそうとすると、かえっておかしなことになるのです。

 

ブラスバンド向けには、Bb基準でBb=0centになるように計算しなおしてセント値を設定するという方法が考えられます。しかしそうすると、古典調律のBbはたいてい高めなので、そのBbを0centにするということは、逆に言うとBb以外の音が全体的に低くなりすぎるようにも思われます。そういう訳で、やはりC音基準がいいのではないかと私は考えています。

 

さて、キーを指定して固定することで、鍵盤の音程が設定した調律の音程になり、デフォルトの純正律設定だった時のふにゃふにゃした感じが無くなり、それでいて白鍵の和音は平均律よりきれいに響くようになりました。黒鍵はそのしわ寄せで汚い和音になります。

 

音律のキーの固定に関しては、YAMAHA製の HD-300 は純正律のボタンを長押しするだけでできます。これはYAMAHAの勝ち。ジャスティ HK-100 は面倒なボタン操作が必要です。この点はジャスティも改善してほしいです。

  

BbやF、Ebの移調楽器の楽譜で演奏しやすいようにボタンで移調して使う場合は、さらに注意が必要です。このとき、ROOT KEYの画面表示はCのままで変化していませんが、たとえばBbに移調した場合、実際にはROOT KEYも実音のBbに移動しているのです。つまり、ROOT KEYの表示はABC表記であるにもかかわらず移動ドなのです。ここで実音のCを ROOT KEYにするためには、HK-100のROOT KEYの設定はDにしなくてはなりません。ややこしいですね。移動ドをABC表記するのはやめてもらいたい。ABC表記=実音で統一してほしいです。

 

なお、設定した音律は、20種類保存できるという事になっているのですが、名称を自由につけることはできない仕様でした。JUSTYリモート上は「ユーザ設定1」から「ユーザ設定20」までの番号で管理することしかできないので、それぞれの番号が何の調律かは、ユーザーが自分で一覧表のようなものを作ってまとめておく必要があります。(なんでやねん・・・)

 

 

(13)その他

・外観が、写真で見るとクリーム色に見えますが、現物は金色に塗装されていました。金色て・・・wwww まぁたぶんコンクールで金賞が取れるように縁起を担いだとか、そういうことなんでしょうけども、これは好みがわかれますね。

・iPhoneもしくはiPADとの連携を前提にした機能がせっかくあるので、それらの充電用のUSB AポートがJUSTY側にほしいです。

・ACアダプタはまぁ、昔ながらの方式で、この値段ならしょうがないかとも思いますが、実際、ACアダプタがらみのトラブルはとても多いので、もうちょっとなんとかならんか、と思っている人は多いのではないでしょうか。理想は、掃除機みたいにしゅるっとACコードを本体にしまい込めるといいんですが、あの機能、掃除機以外にはついているのを見たことが無いんですよね。なんででしょうね。何かもうちょっと工夫があるといいなと思います。ACアダプタは出力電圧が 5.9V/2A という特殊仕様のものです。

 

 

(追記)パソコンとの連携について

データ転送のできるMicro-B USBケーブルを買ってきてPCにつないだところ、Windows10パソコンに接続しただけで正常に HK-100 が認識されました。デバイスドライバの追加インストールは不要でした。Windows10のデバイスマネージャには 「Roland Digital Piano」というような名前で出てきます。 

 

この状態で、たとえば PianoteqをPC上で起動して、「File」→「Audio/MIDI setup」を開いてMIDI入力を受け付けるようにすると、HK-100の操作でPianoteqを鳴らすことが簡単にできました。ただし、これはおそらくPC側の問題だと思いますが、鍵盤を押して少し遅れて音が鳴るので、通常の演奏に使うには設定をもっとちゃんと見直す必要がありそうです。

 

PC側でMIDIファイルを再生して JUSTY HK-100 で鳴らすには、MIDI Mapper をPCにインストールしてやる必要があります。少し古い情報ですが、下記の記事を参考に Coolsoft MIDI Mapper というのをインストールすると、Wondows10のコントロールパネルに「Coolsoft MIDI Mapper」のアイコンが追加されます。それを開くと、出力先に 「Roland Digital Piano」を選択できるようになります。(デフォルトはOSに付属のソフト音源。)「Roland Digital Piano」を選択すると、MIDIファイルをクリックして Windows 標準の Media Player で再生するだけで HK-100 からMIDIデータの再生音が流れるようになります。ただし、スムーズに再生されるのはシンプルなMIDIデータのみで、凝ったMIDIデータ(オケ物など)だと、正常に再生できませんでした。自在に使いこなすにはもうちょっと本格的なユーティリティソフトが必要なようです。

 

音律に関しては、デフォルト設定では「ピアノ他」の調律変更機能はOFFになっており、平均律での演奏になるので、この音律を変えるには取説を読んで設定変更が必要です。( (1)の操作と同じ )

 

 

(さらに追記)

PCからMIDIデータを再生してHK-100で鳴らす場合、MIDIデータの内容によっては全く音が出なくなる場合があります。PCからの再生音だけでなく、HK-100の鍵盤を押してもボリュームを上げても音が出なくなる場合があります。この場合、電源をいちどOFFして再度ONすれば音は出るようになるのですが、基準周波数がA=442Hzではなく A=440Hz に変わっていました。おそらくMIDIデータの冒頭に入っているリセット命令か何かの影響だと思われますが、そのへんの詳細仕様は HK-100 は公開されてないので、これを解決するのは至難の業です。正常に再生できる場合でも、音色を持続音にしておくと、しばしばノートOFFのイベントを取りこぼして、いろんな音が鳴りっぱなしになるという不具合もありました。恐らくこういうPCと連携した使い方は想定されてないんでしょうね。