「振り回されちゃ 不器用にしがみつくだけだそう」



この曲が生まれたのは2010年の12月末、キューンレコードのプリプロスタジオでした。今回のアルバムの中で最後の最後に生まれた曲です。「Diver」や「妄想隊員A」「Passenger」など、アルバムの筋となる楽曲が揃い始めていたので、その日はひたすら「(未だアルバムにない要素の)変な曲を作ろう」と決めて4人でアイディア出しを行っていました。しかし後々スタッフに話を聞くとその日は「名曲を作って欲しい日」だったそうで、「なんか今日は変な曲ばっかり出てくるなあ」と困惑していたそうです。(笑)メイキョクはメイキョクでも、僕らは勝手に「迷曲を作る日」にしてしまっていたのですね。

アコギを片手に、普段の手癖では思いつかないような節回し、と、とにかく言葉数を詰め込むこと、をテーマにまずできあがったのがAメロのメロディラインでした。言葉数を詰め込みたかったのは、そのときちょうど聴いていたBUMP OF CHICKENの『COSMONAUT』の影響です。BUMPは今まであまり聴き込んだことがなかったのですがこのアルバムですっかりのめりこんでしまって、藤原さんの唯一無二の素晴らしい世界観というよりは、独特の節回しに感銘を受けました。ただもはやこの曲を誰が聴いても「バンプに影響受けたでしょ?」なんて問われそうにないくらい自己流に解釈してしまいましたが。。。そうやって人と違った風に解釈したがるのは昔からの僕の悪いクセなので、どうか慣れてやってください。(笑)
これだ、と思った僕はすぐさま対馬くんを呼びドラムのパターンを検証しました。大体のバンドアレンジはアタマの中で既にイメージできていたので、できるできない等の細かいところを対馬くんに詰めてもらうといった作業です。最初のリズムパターンのイメージは僕が高校の頃から大好きなTHE MAD CAPSULE MARKETSの「GAGA LIFE」のリズムパターン。リズムシーケンスと生ドラムのビートが気持ちよく絡む感じを目指したかったので当初はツインドラムもアリかな、なんて思っていたのですがそこはさすが器用な対馬くん、僕が提案するツインドラム的リズムパターンをドラム一台でそつなくこなしてくれました。未だに僕は彼がどういうパターンで叩いているのかよくわかっていません。(笑)が、とにかくハイハットの16分音符が不規則に絡まっている具合が気持ちよくて、個人的には「そのTAXI,160km/h」を作っている時の感動を上回るものがありました。アコギのバッキングは、1コードで押し切るメキシコのマリアッチのような雰囲気をイメージしていたので、1コードといえばThe Knack「My Sharona」だろうという安易な発想で、ベースラインはひたすらオクターブで同じリズムです。プリプロスタジオの時点ではまだ僕がベースを弾きながら歌っていたので歌いながら弾けるわりとシンプルなパターンだったんですけど、レコーディング直前に岡野さん(プロデューサー)が破天荒なスラップパターンを知らない間に坂倉に吹き込んでくれていて(笑)、坂倉の渾身のサム(親指)スラップが冴えたアレンジに仕上がりました。リズムフェチの僕としてはここまでのリズム隊アレンジで既にメシ三杯食える(以下、M3)領域ですが、ここでさらにピンと来た僕はアラビア音階のリードギターを古くんに発注。古くんとはインディー時代から「いつかアラビア音階ギターリフの曲を作ろう」という話をしていたので、実はあらかじめ「なんちゃって」でしたけどアラビックスケールは二人で練習してありました。なので「遂にこの時が訪れた勢い」でスムーズにフレーズがハマってゆき、そのフレーズをハモらせたあかつきにはもう「ロバートロドリゲス的世界(岡野さん談)」にまで形を変えていきました。既にイメージを上回るミクスチャー感が押し寄せている中、サビを足し(このサビのリズムパターンは実は70年代のとあるアメリカロックバンドにオマージュを捧げています)、岡野さんがレコーディングスタジオに持ってきたコケロミンという謎のぬいぐるみテルミンと、「サドンデスゲーム」から愛用しているスタイラスペンで操る謎の楽器スタイロフォンによるソロを間奏に足し、原曲完成。レコーディングではさらに、岡野さんによる渾身のかけ声(ヒーハーではありません。ヒーハーは映画音楽効果音のサンプリングなのです。)と渾身の鞭の音が加えられ、岡野さんは最後まで「まだ甘い、まだ甘い!」と延々その音にこだわり続けていました。(笑)

歌詞は前述の通り新たな節回しに挑戦したとあって、普段使わない筋肉使って少々筋肉痛になりそうでしたが(笑)、言葉遊びも多々入れられたし最終的には僕らしい歌詞に仕上がりました。「ロデオ」だけあって内容も、日頃いろんなものに振り回されがちな情けない個人的愚痴がほとんどです。(笑)朝の電車や、本音と建て前や、理想と現実や。。。最後には「神のご加護を」とそんな愚痴全て自ら突っぱねてしまいますけど。

ツアーでは四人編成のシンプルな形でお届けしています。スタイロフォンも間奏で実際に僕が演奏しています。レコーディングでは重厚に音を重ねていますが、LIVEはプリプロ時の形にとても近いです。元々プリプロ時のシンプルなアレンジのヴァージョンもそれはそれで格好良くて好きで時たま聴き直したりしてます。まー、機会があればいつか完全なレコーディングアレンジ再現もLIVEでやってみたりしたいですけどねー。


(敬称略。大好きなアーティストにめいっぱいの愛を込めて。)


PS 大変光栄なことに今月からこの「ロデオ」が大阪デザイナー専門学校のCM曲に決定しました。想像以上に爽やかなCMで、ぶっちゃけ「本気でロデオいいんすか!?」と思いましたけど、昨今のタイアップ事情なかなか日の目を見ないアルバム曲をCMに使っていただけるだけで僕は胸一杯です。しかも大好きな街、大阪ときたら、お断りする理由などどこにもないでしょう。甘んじてお受けさせていただきます。